百四十日目
朝、お嬢様の粥を待つ間に自分の朝食をとっていると、煌の衣装の一人から話しかけられた。お嬢様の容態はどうかという。
「かなり落ち着かれましたよ。明らかに船酔いですし、陸に上がれば元気になられるとおもいます。」
そもそも船酔いってそういうものではなかろうか。
でも、ちょっと分かる気もする。
なんというかあまりに儚げだから心配になってくるのだ。お嬢様が苦しんでいると、単なる船酔いだと言えない雰囲気になる。
そんなに長い船旅でもないし、水分さえ摂っていればまず大丈夫なはずなんだけど。
そのまましばらく世間話をした。
煌はやっぱり遊牧の国らしい。国王の後宮も庭園に張られた天幕で作られて居るほどの徹底ぶりなのだそうだ。
もっとも都市部ではだんだん定住のための家が増えていて、お嬢様の輿入れ先もそういう家らしい。
「最近ザヴィータの商人があちこち入り込んできているんでね、こちらも結びつきを深めておきたいのさ。」
こんなところでもザヴィータの名前をきいてしまった。
お嬢様と侍女は今日は普通の粥を食べることができた。
吐き気どめは飲んでいるけど、もうかなり元気だと言っていいと思う。ものを食べると多少具合が悪くなるようではあるけれど。
明日には港につく予定だし、まずもう問題はないと思う。