百三十一日目
朝食の席で塔主に、もてなしに感謝していること、しかし旅の途中でもあるのでそろそろおいとましようと考えていることを伝えた。
「探求の途上にある方を、いつまでもお引き留めはできません。また折あらばおいでください。」
塔主は型通りの言葉で答えた。
さすがに今日明日というのもどうかと思ったので、明後日の出立の意思を伝えて朝食の席を経った。
塔が普段の課業に入るのを待って、裏庭の納屋を見に行く。闇子どのが草鞋を編んでいるの見つけて、草鞋の編み方を教えてくれと切り出した。
実はこれを狙っていたのだ。草鞋の編み方は本当に習いたかったし、これなら闇子どのとまとまった時間話せる。
「草鞋は滑りにくいし中々便利なんですけど、リカドにはないから自分で作れるようになりたくて。」
そう言うと、闇子どのは丁寧に編み方を指導してくれた。
お礼に、自分で作った小さな本を渡す。転移の魔法陣の描きかた、使い方をまとめたものだ。
「余分な魔力をこれを使って流すんです。例えば一つの火ではなく少し離して、二つとか、三つとかまとめてつけてみるとか。慣れると結構使えます。」
塔の中にいくつか仕込んでおけば、雑用の効率化も図れる。
闇子はとても喜んでくれた。
これでちょっとは暴走が落ち着くといいんだけど。