百三十日目
やっぱり塔を下りようと思う。多分私がここでできることはないと思うので。
私はまだ上級初位なので、上級魔術師になるための指導はできないし、たぶん塔主は私にそんなことはさせないだろう。闇子どのは雑用の追われて、ゆっくり話すこともむずかしい。
長老とはもう少し話した。
神威では申し子のことを「神避け子」と呼ぶのだそうだ。
申し子の側には精霊が寄らないかららしい。
確かに力を大量に取り込みがちな申し子の側では、精霊の姿が結びにくいということは、ありえるだろうと思う。私は精霊を扱えるのは、自分の力の扱いをある程度身につけているからだ。
だから、本当ならせめて、なんとか折り合いをつけて害を小さく済ませる方法を、伝えたいと思ったのだけど。
長老によると、塔主姉妹はもともと闇子どのの魔力が強いというので塔に引き取られたらしい。
結局は明子どのの方が頭角をあらわしたわけだけれど、そこで年の近い姉妹の間の力関係にも変化があったそうで、ここで姉妹揃って上級魔術師の資格を得たりすると「ややこしい事になる」んだそうだ。
本当なら塔同士なら情報のやり取りをかなり簡単にできる方法があるんだけれど、上級魔術師でなければ使えないので、ここでは機能していない。
私なら使えるかもしれないけど、長年機能していないものだし、そもそも使わせてはもらえない気がする。
ここで腫れ物になっているのもばかばかしいし、さっさと下りることにしょう。