百二十七日目
今日は書庫を見せて貰った。素晴らしい蔵書だ。ただ、全体に古い。新しい理論や図象の本がない。あと気になるのは意外に神具などの本がないことだ。確かに魔術とは別系統の本だけれど、魔術と突き合わせての研究には意味があるのではないかと思う。そもそもここ以外の塔ではまず不可能な研究なのだし。
この塔で行われている研究というのは、基本的に蔵書の検証なのだ。それはそれで大切なことなのだけど、せっかく神威唯一の塔なのにすごくもったいない気がする。
塔主をつとめている明子という女性は多分四十代くらいで、吾作さんの言っていた通り見るからに厳格な雰囲気だ。中級上位だそうだけれど、多分上級資格を取ることだってできると思う。手堅い術者だ。
長老は敬嗣卿。資格は中級中位。
塔に所属する魔術師は他に十人いて、その内中級者が三人。残りは初級の術者だ。
一番若いのが鷹尾という男性術者で、初級上位。
見ていて思うのは全体に閉鎖的だということだ。資金を得るために薬の調合などをしているようだけれど、それ以外は外部との接点がほとんどない。
他の塔との交流もほとんど無いみたいだ。
私に対する態度も、何か敬して遠ざけているような気配がないでもない。
いったいどうしてなんだろう。