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百二十三日目
朝、吾作さんご家族にお礼を言って家を出た。
奥さんに櫛を差し上げたけれど、それだけでは到底一宿一飯一浴の恩には足りないと思う。考えて、字の勉強を始めているという男の子たちのために墨を渡した。なんだかとても恐縮されてしまった。
道は険しかった。険しいというか、急で狭い山道だ。
時々木立が途切れると見晴らしはとても良かった。
昨日上陸した顎の港を一望できる。
昼頃、休憩にして奥さんに持たせてもらったおむすびを食べた。塩がきいてておいしかった。
随分歩いたのに、まるで先が見えない。山に入ってすぐ、人のいないところで荷物もほとんど晶屋に突っ込んで、かなり身軽にして結構頑張って歩いたと思うのに。吾作さんに野宿の用意を聞かれたはずだ。
日暮れが近くなったので、今日はもう晶屋で休むことにした。
エドには野宿対策にと渡されたのに、野宿で使うのは初めてだ。
夕食は乾物と干飯の雑炊を作った。ちゃんと煮込めば干飯も結構美味しかった。