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金命の豚  作者: あなぐらグラム
【貯金~始める編】
7/44

『4歳児』旧敵を知る

 今回はほぼ独白になってしまいました。

 次回からはまたリムニルと誰かを絡ませたいと思います。

「うむむ……」

 どうも、お久しぶりです。

 元『ぶたさん貯金箱』こと、リムニルです。つい、先日4歳になりました。

 さて、そんな僕ですが、今はあることについて頭を悩ませています。というよりも、ちょっとばかし悔しく思っているのかな?


 それは、いつものように預かっているお金の金額を確認していた時のこと。

『ええっと、リスティ姉さんが――』

 この身体になってもう4歳なので、最近はなんとなく名前を呼び捨てにしないようにし始めた。

 心の中で言ってるとうっかり言いそうになるので、普段から呼び方を変えたのだ。

 アドニルは父さん、エルは母さん、リスティはリスティ姉さんでルディは兄さんという風に。なんでリスティだけ特別かというと、姉さんだけだと不満そうにしていたからだ。

 ちょっと他人よりも特別でありたい……そんなお年頃なのだろう。


『リスティ姉さんが111ルピヨンで、兄さんが32ルピヨン』

 あのお祭り以来、なぜか僕がお小遣いの管理をすることになった。

 こんな田舎の村では店もほとんどない上に、実家が商店なので滅多にお金を使うことなどない。普段からしまっておくのが面倒だというのが本音だろうと思う。

 僕にとってはお金を貯めることは幸せだから、誰も損をしていないし問題はないだろう。

 ちなみに、兄さんの方が圧倒的に少ないのはちょいちょい余計なことに使っているからで、そのことは基本的に僕しか知らないことになっている。実際は、母さんが完璧に気付いているようでたまに釘を刺される。


《おめでとうございます。ルディ様の貯金に利息が付きました。加算後の金額は35ルピヨンです》


 そんな風に思っていると、突如スキルの声が聞こえてきた。

 スキルを使っていない時に聞こえるのは久し振りだ。

 なんとなく「元気だった?」と聞いてみたくなる。


『……利息?』

 ただ、それよりも気になる言葉を聞いた気がする。

 自分でも確認してみると、たしかに兄さんの貯金額が3ルピヨン増えていた。


 とまあ、これが今の僕の悩みの原因というわけです。

 突如増えたお金。

 それに、新たな力――利息。

 これを有効的に使うためにどうするべきか…。


◇◆◇◆◇


 さて、前回の口座の時と比べると驚きは少ない。

 利息と呼ばれる力の効力は未定だが、ようするにお金が増えるということなのだから問題はないだろう。正確には働いてもいないのに、お金が増えるっていうのは訳がわからないけど…。

 気にしても無駄ということで!

 問題は増えた分をどうするかっていうことだよね。


「…どうも、この雰囲気だとお金が増えたのは兄さんのお金を預かっていたからだと思うんだよね~」

 だけど、兄さんだけにお金を渡して、他の人に渡さないというのは…。

「……バレたら、絶対に起こられるよ」

 主にリスティ姉さんと母さんに怒られるわけだけど…。

(あっ、想像したら震えてきた。ガクブル)


「やっぱり黙ってようかな?」

 それこそ、リスティ姉さんにも利息が付くまで黙っているというのが一つの手ではある。

 となると、問題が一つ。

 その余ったお金をどうするかってことだ。


「一応、僕だけは預かったお金を自由にできるんだけど…」

 預かったお金に手を付けてしまうと、信用問題が…。

 お金という大切なモノをやり取りしているわけだから、それは譲っちゃいけないことだと思うんだよね。

「とりあえず、別の口座に移しておくか!」

 問題の先送りにはなるけど、一旦除けておけば後からいいアイデアが思い浮かぶかもしれないし。そうしよう!


◇◆◇◆◇


「……それにしても、これが彼らの手口だったのか~」

 問題が片付いて――棚上げしたことで僕は地球でのことを思い出して、少し感心してしまったよ。

 ここで言うところの『彼ら』というのはかつての敵……実際には僕がそう思い込んでいるだけの相手で相手はこっちのことなんて歯牙にもかけていないんだけど…。まあ、そんな相手である『銀行』という金融機関のことだ。


 銀行という制度ができてからというもの、家で貯金をするという行為は減っていった。

 減ったというよりは縮小されたという方が正しいかもしれないが、自宅にお金を置いておく家も、自宅に置くお金の金額も少なくなったのは事実だ。

 結局のところ、僕たちのような貯金箱はお金を預かることはできても、増やすことはできない。

 その上、銀行などと違って現金を預かっているので万が一にも紛失してしまった場合は、戻すこともできないのだ。


 ――その点、銀行は違う。


 彼らは銀行という組織でお金を預かっているので、例え建物が壊れても大元のお金は無事。

 極端な話、火事に遭ってもダメージを負わないのが銀行で直接的なダメージを負うのが僕たち貯金箱という存在になる。


 その安全性に加えて、なんでも鍵がどうのこうのという話も聞いたことがあるし…。

 何よりも利息!

 これが問題だよ!


 僕たちはお金を預かるだけ。

 だというのに、彼らはどういう理屈かはわからないけど、お金を増やすことができるっ!

 こうなったら、僕たちの出る幕がなくなってしまうじゃないか!


「……以前は、手も足も出なかったし、動けなかったから行動も置かせなかったけど…」

 実際にその力を使ってみると少し恐ろしいね……。

 僕自身は何もしていないのに、お金が増える。

 まさに夢のような話だ!


「この力は、正しい使い方を思いつくまでは極秘にする必要がある……」

 ――ごくり。

 自分が唾を飲み込む音がこれほどまでにハッキリと聞こえるとは…。


「リム~! ゼウスおじさんが来たわよ~」

「うひゃあっ!!」

「……? どうしたの? 変な声上げて」

「…リ、リスティ姉さん」

 ビックリした~。

 秘密を抱えた途端に来るんだもん。もしや、リスティ姉さんも母さん同様にお金に対する異常な嗅覚が芽生えたのかな?


「――こほん」

 とりあえず、落ち着こう。

「…リスティ姉さん、ノックくらいしてよ」

「え~! 面倒臭いじゃない?」

 ……なんて言い分だ。

 僕は呆れを通り越して軽く情けないよ。


「……母さんに怒られるよ?」

「アハハッ、大丈夫よ! バレなければっ! ね?」

 釘を刺してみたが、軽く流されてしまった。

 それに最後の念押し。アレはつまり、言ったらどうなるかわかってるわよね?ということだろう。

 恐ろしい。

 たった2歳しか違わないはずなのに、ここまでの差が出るとは…。

 これが男女の差――いや、姉と弟の差なのか?


「ほら! 行くわよ」

 リスティ姉さんはそう言って、僕を強引に部屋から連れ出していった。

 まるで悩んでいる僕を解放するかのように。

 タイミング的にそう思っただけかもしれないけど、僕は頬が緩むのを自覚した。


(…転生して本当によかった)

 以前の貯金箱ぼくも悪くはなかったけれど、こうして触れ合う温かみを感じられるのはこの身体の特権だよね。

 サブタイトルを仇敵ではなく、旧敵としたのは実際に敵対意識があったわけではなくあくまでも対抗心のようなものがほんの少しあったからです。ブヒッ!

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