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金命の豚  作者: あなぐらグラム
【貯金~始める編】
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『両替屋』ビジネスチャンスを掴み取る(祭3)

 遅れて申し訳ありません。久々の投稿です。

 ちなみに、今回でお祭り編は一応の集結を迎えます。


 余談ですが、一度タイトルを『金命のぶたさん貯金箱』へ変更してみましたが、どうにもしっくりこないので戻しました。

「おいっ!! さっさと釣銭を寄越せよっ!」

「あわわっ! す、すいませんっ! 今、両替に行ってるので…」

 祭も堪能し、そろそろ帰るという段階になったころ、僕の耳に男女の争う声が届いた。

 どうやら釣銭が不足しているらしい。


「祭なんだぞ! 釣銭ぐらい多めに用意しとけやっ!」

(……ふむ。言いたいことはわかる。わかるが……)


「おねーさん、僕が両替すゆよ?」

 見ていられなくなった僕は屋台のお姉さんに近付き、手を差し伸べた。

「……えっ?」

 お姉さんは困惑気味だ。

 まあ、当然か。いきなりこんな子どもが両替するなんて言っても信じてはもらえないだろう。

 幸い、両親も近くにいることだし説明は任せても大丈夫かな?


「おい、坊主。大人の話に――」

「――まあまあ、落ち着きなさいな」

 助けに入ってくれたのはおじさんだった。

 その後ろには両親の姿も見える。


「こらっ! 勝手に行っちゃダメだろ?」

 コツンと軽い痛みと共に振り下ろされた拳に、涙が浮かぶが僕は必死で訴えた。

「でもっ! おねーさんこまってたもっ!!」

 舌っ足らずだが、必死で訴える姿に基本甘いアドニルはすぐさま陥落した。

「話は終わったかの?」

 丁度のタイミングを見計らったかのようにおじさんが話しかけてくる。


「うわ~! 凄い…」

 ふふん! どうやらお姉さんは僕の妙技に感動しているようだね!

 なぜか後ろでリスティも偉そうにしているのが気になるが、弟が褒められて嬉しいだけだろう。


「…あぁ~、その、さっきは悪かったな……」

 おつりを受け取った男性客はバツが悪そうだ。

 先程の態度はやはり自分が悪かったと反省しているのだろう。

「いえっ! おつりが不足したのは私どもの責任ですので…」

 対してお姉さんは先程までの慌てようは影を潜め、お手本となるような接客していた。

「…まあ、祭の雰囲気にのまれて気分が高揚することはよくあることじゃ。これから、気を付ければいいじゃろう」


◇◆◇◆◇


 おじさんのまとめでちゃんちゃん……とはいかないのが現実だ。

 あの騒動を見ていた何人かが僕がギフトを授かっているということに気付き、さらには近くで見ていた数名は内容まで知ってしまった。

 そうなると忙しない中で両替をすぐに行えるというのは絶対に必要な力でもある。


「ぼっちゃん! お肉を上げるからうちの両替をっ!」

「いやいや、こっちはアメに加えて、お小遣いも付けるよ!」

「何を~! なら、ウチは20ルピヨンだ!」

 結果として僕を巡った店同士の競り合いが始まってしまった。

 …フッ、モテるっていうのは大変だよ。


「リムニル。とりあえず、橋から順番にこなしていくよ」

 結局のところ、アドニルとおじさんが先頭に立って騒動を鎮める形にはなったが、僕たちが帰るのは当分先になりそうだ。

 これはさぞかしルディたちは退屈しているだろうと思ったが、どうやらそうでもないらしい。


「お姉さん、お姉さん。僕の弟であるリムニルのギフトは凄いでしょう? よければいかにリムニルが凄いかということを自慢させてはもらえない?」

 ルディは両替に来た年上の女性たちに片っ端から声をかけては、羊のドリーに服をかまれて連行されていく。

「ぁっ、ちょっと待ってぇ~!」

 ……んむ! あの羊は意外と役に立つようだな。


「は~い! お客さんたちはこっちですよ~!!」

「いらっしゃ――じゃなかった。……皆さん、きちんと並んでくださいね!」

「……疲れた」

 エルやリスティ、キュリアといった女性陣は列の整備をしている。

 ただ、女性陣――主に母に引かれるように両替以外の客も増えているので逆効果かもしれない。

 キュリアだけはひどく退屈そうなので少し悪いことをしたかもしれない。

 ちなみに、レイとルメスはリスティが疲れたタイミグを見計らってはお礼として貰った食料や飲み物を運んでいる。

 ただ、実の姉を放置してもいいのかな?


「ちょっと! 私にも寄越しなさいよ~!!」


 そんなことを考えていたら、どうやらキュリアの堪忍袋が先に切れたようだ。

(……まあ、なんだかんだと楽しんでいるのならいいか)


「ほっほ、盛況じゃな!」

「…えぇ、リムニルには困ったものです」

「その割には、アドニル殿も儲かっているようではありませんか?」

「ハッハッハ! ゼウス殿には負けますよ」

 話に出てこなかった大人二人。つまりはアドニルとおじさんだが、彼らは初めの列を作った後にそそくさと抜け出し、帰って来たかと思えば商売道具を揃えて来ていた。

 儲かるのはいいことだが、アドニルはそれをへそくりにしようとしたらエルに殺されるよ?

 言っておくが、僕も忙しい中だから隠してあげないからね?


◇◆◇◆◇


「いやぁ~、坊主のおかげでなんとか助かったぜ!」

「……つかれた」

 さすがにあれだけ働きづめだと疲れが隠せない。というか、3歳児にはきつい仕事だよ。

「ガッハッハ! だったら、オレのところのアメでも食べな? 疲れてる時に食べると疲れが取れるんだぜ?」

 不思議だろ?と豪快に笑い飛ばすが、おそらく体が疲れた分を取り戻そうとしているだけだろう。

 面倒臭いおじさんだよ…。


「さぁ、帰るのが遅くなったしそろそろ帰るか!」

 アドニルの号令でようやく帰路につく。

 そんなアドニルはほくほく顔だが、右頬を大きく腫れ上がらせている。

 結局、エルにバレて叱られてしまったのだ。

 では、どうしてほくほく顔なのか? それは僕のおかげで大きなビジネスチャンスを手に入れたからだ。


『――失礼ですが、おぼっちゃんは普段どこに住んでいるのですか?』

 列を一通り捌いたころ、それまでの屋台のおじさんやお姉さんたちとは雰囲気の異なる人物が僕のもとを訪れていた。

 この祭ではゼウスおじさんと並ぶほどの裕福な出で立ち。とても、屋台の人たちと同類には見えなかった。

『申し遅れました。わたくし、此度の祭で両替を担当していたものです』


 両替は通貨を製造する国の管轄になっていることが多い。

 国が管理しなければ偽物が出回るからとかではなく、そうでもしないと大量のお金など用意できないし、持ち運べないからだ。

 だから、こういう小さなお祭りでも国の認可を受けた業者などが出張ってくることがある……困惑している僕におじさんがそっと教えてくれた。


 これはマズかったかな?

 そう思ったが、どうやら彼が言いたいのは別のことだったらしい。

『――まさか、このような辺境の祭でギフトを持つ者に出会うことがあろうとは…。よろしければ、おぼっちゃんに依頼をしておきたいのですが?』

『!? そ、それは…!』

 そう言って出してきた小さなバッジにおじさんが驚愕の声を上げる。

『まさか…、王都の?』

『はい。わたくしは、王都で財務卿に仕えさせていただいている者でございます。名をコイーン。しがない下っ端ですが、一応任命権はございますので』


 話が見えてこないが、どうやらコイーンという人物は王都の財務。つまりは国の財政に携わる人物の配下であり、僕にこの辺りの両替を一任したいとのことらしい。

 ハッキリ言うと、面倒臭いが条件付きで引き受けた。

 王都との繋がりなんて滅多に手に入らないしね!


 条件というのは、両替の依頼をする際にはウチかおじさんの店で品物を買ったりするという、まあ現在アドニル商店で取っている条件と同一のものだ。

 初めは渋るかと思ったが、彼はその程度ならと快く承諾してくれた。

 これで店は儲かるし、僕は僕でいろんな人と交流を持てる。

 アドニルは大したことをしていないのに、儲けることができるということでほくほくというわけだ。


 それからアドニル商店にはおじさんが連れて来た両替目的のお客さんが増え、ウチはそれなりに儲けを出した。

 やっぱり、お金はいいね!

 次回は視線を変えてリムニルの母エルの視点でお送りしようかと今のところ考えています。今のところですし、変更するかもしれませんがお楽しみに!ブヒッ!

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