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金命の豚  作者: あなぐらグラム
【貯金~使う編】
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『豚の頭取④』 荒ぶる豚は駆逐する

なんだか思ったよりも短くなりました。

「なんてことをしてくれるんだっ!!」

 僕は大激怒していた。

 ひどいひどいひどいひどいひどいひどいあまりにも酷過ぎるっ!!


「まったくだ。オレの顔を焼き払うとは何を考えているのやら……」

「そんなくだらないことはどうでもいいでしょうよ!!」

「いや、結構重要な問題だからな?」

 ガリレオの顔が焼かれたからって何が問題なんだ!

 黒こげになったのが問題なら現実も黒こげにしたらそっくりになるだけだよ!


「そんなことより問題は彼らが()を焼き払ったということだよ!」

 彼らは自分たちの生活を支えるお金をなんだと思っているんだ!


「ここまでやられたら黙ってなんていられない!!」

「おっ、おい!? 待て、待て待て待て! 人的被害が出たわけでもないのだぞ!? たしかに民たちは紙幣を回収されはしたが、全員でもない。それに、まだ普及したばかりですべての金が紙幣になったわけでもないのだ!」

「加えて言えば、彼らとて民が苦しめば立場が危うくなることは理解しています。なので、両替えという形で行われており、痛むのはむしろ彼らの懐だけです」

 二人が何やら必死に声を上げているようだけど、そんなこと知ったこっちゃないね!


「ふっふっふ、お金を笑う者はお金に笑われ、お金を穢すモノはお金によって裁かれる……」

「だから待てーい! そんなことをしても誰も報われんから……!」

「さあ、ショータイムだ!」


「……行ってしまった。大丈夫だろうか?」

「こればっかりはなんとも。リムニル君のお金にかける情熱は尋常じゃありませんから……」

「最悪の場合はヘンウェンや奴の家族に出向いてもらって落ち着かせる他はあるまい」

「……それまで彼らが持つといいのですが」

「……はぁ。まったく。面倒なことをしてくれたものだ」



◇◆◇◆◇



「……何だと?」

「はっ! どうやら銀行の頭取が先日行われた紙幣の焼き打ちについて苦情を述べているらしいのです」

「たかが、一組織の人間風情が我らに喧嘩を売って来たということか」

「正確には喧嘩を買ったと考えるべきやもしれませんが……」

「同じことだ! まったく、ガリレオ殿下の友人ということで偉くなったつもりか! いくらギフトがあろうともそれだけでは勝てない勝負があるのだと教えてやる必要がありそうだ」


「では?」

「かと言って、我らが行ったことは結果として残っている。ここで表立って喧嘩に応えるような真似をすれば一部の愚かな民たちに奴らの味方をするきっかけを与えてしまう」

「……かしこまりました。では、しばらくは静観ということで」

「まあ、どんな手で来るか楽しみにしてやろうではないか」

 この時は余裕の表情を浮かべてのんきに構えていたが、実際にことが起こるととてもじゃないがそんな状況ではなくなってしまった。



「……それで?」

 数日前とは打って変わって憔悴した様子で部下からの報告に耳を傾ける。

「……はっ、状況は芳しくありません」

 そんな上司につられてから、はたまた現実の深刻さに押し潰されそうになっているためか部下の口も重い。


「ガリレオ殿下が立案し、財務卿が後押しした政策はすでに我々では手の出せないレベルまで膨れ上がっております。もはや、我々の所有する金はただの金属の塊に過ぎません」

「国外に持って出れば多少価値は下がってでも買い取ってはもらえよう。だが、今の状況で国を空けるということは王位継承戦争いに関われなくなるのは道理。かと言って、人をやるための資金を出すのにも金を動かせなくなっている」

「……ハッキリ言いますと、我々の予想よりも動きが迅速に過ぎました。まさか、王都だけでなく国内の主要都市すべてに新通貨を流通させるとは……」


 リムニルの怒り。その行動力は凄まじく、普段温厚な分怒らせるとこれほどまでに怖いのかと思わせる鬼気迫る様子で指示を次々に出し、そのうえ休みも取らない決死行で紙幣をほぼ国内全域に広げてしまった。

 その際、古い通貨は回収されており、銀行に集められている。

 市民はまだ古い通貨を持っているだろうが、それもガリレオと財務派閥の鶴の一声によって普段の買い物では使用が不可能になってしまった。

 つまり、何かと金を使う際に一度は銀行に行かなければどうにもならなくなってしまったのだ。


 これには覇権争いのために味方以外と連携をしてこなかった派閥は慌てた。

 何故ならば、そうなるとガリレオを推していない派閥であろうとも銀行に行かねばならない。そして、リムニルとガリレオの関係はあまりにも有名だった。

 そうなると困るのが、新紙幣を見せしめのためにすべて焼き払った派閥の人間だ。

 彼らの手元には古い金しか残っていない。

 つまり、行動を起こすための資金が大いに不足しているのだ。


 初めは楽観視していたが日に日に広がる銀行の勢力拡大にとうとう頭を抱えてしまう。


「……もはや、これまでか」

 そう呟くと男は部下にガリレオとリムニルに対する文書を託した。

 つまるところ謝罪文を届けさせ、見逃してくれと伝える敗北宣言だった。


 そうしてこの国の経済事情を大きく左右する勝負は僅かな時間で銀行側の勝利となった。



「いや~。彼らもようやくお金の大切さがわかってくれたようだね!」

「「「(こいつ、こわっ!!)」」」

 すっきりしたほくほく顔で喜ぶリムニルに対し、改めて金への執着の強さを実感する仲間達だった。

今一つ怒りが伝えきれなかったような気がしますが、お金を生む者を怒らせるとこんな風に手も足も出ない状態にされますよという教訓と共に、次回からも見てください。 ブヒッ!

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