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金命の豚  作者: あなぐらグラム
【貯金~増やす編】
37/44

『会議②』 金はどこ?

 書いている途中でよくわからないことに。わかりにくかったらすみません。

「皆様の仰る通り、ただお金を貯めるられるだけのギフト……だったら私たちも熱心に彼の力を普及しようなどとは思いませんでした」

「……では、それだけではないと?」

 ホコランシー先生からの問いかけにロールはもちろんですわと自信満々に答える。


 ――そこからは僕の番だ。


「ロール……さんの言う通りです」

 うっかりいつも通りに呼び捨てにしようとしてこの場の面子を思い出す。幸いにも誰も気に留めていないようだけど、やっぱりもう少しやりやすい方法はなかったのだろうか?

「僕のギフト、その最大の特徴にして利点は――利息というシステムです」


「……りそく? なんだねそれは?」

「そうですね、わかりやすく言い換えると『利子』という言葉ならば伝わるのではないでしょうか?」

「利子だと? それでは君は、我々に借金をしろと言っているのかね?」

 一人の貴族の険の篭もった発言に他の貴族たちからも疑いの眼差しが向けられる。


「――結論だけを言うとそうなります」

 だけど、僕の目的のためにはそんな視線でいちいち怯んでなんていられない。僕は発言した貴族ではなく、あえて王様を見つめながらきっぱりと肯定した。


「ふざけるのもいい加減にしたまえ!」

「そうだ! 何が王国の財政管理を円滑に行うだ! 聞いて呆れる!!」

「我々貴族を借金まみれにして、支配しようなどとは平民の分際で図に乗るな!!」

 真っ先に怒りの声を上げたのは財務卿が連れて来ていた貴族。つまりは現在の財政を担当する貴族たちだった。

 だが、声を出していないだけで反感を持っている人たちがいるのはひしひしと伝わってくる。


「――お静かにっ!!」

 その怒号を遮ったのは、ロールだった。

 まだ幼いながらもいずれは侯爵家の一員として国を背負って立つ少女の一喝に会場は水を打ったように静まり返る。


「陛下ならびに第一王子殿下、お見苦しい場面をお見せして申し訳ございません」

 まさに令嬢の鏡のように王様たちに謝罪をする。ただし、一喝した貴族たちに向き直った時には戦場に立っているかのような覚悟の篭もった強い瞳をしていた。


「……皆様のお怒りももっともです。ですが、皆様がお怒りになっている相手はまだ子どもですよ? せめて最後まで話を聞いてから怒るのでも遅くはないのではないでしょうか?」

 子どもに子どもを叱るなと言われれば、反論のしようがない。

 ここで怒りを見せればそれは自分よりも低い位置にいる存在と同レベルだと自ら暴露するようなものだからだ。


「さあ、リムニル説明を」

「ありがとう」

 僕はロールの援護に心からの感謝を送った。


◇◆◇◆◇


「まず、僕のギフトには特性として利息というものが存在します。とても大雑把に説明すると、預けられたお金に応じてお金が増えていきます」

「……なんだと?」

「ええ、わかりにくいと思います」

 実際に僕だってどう説明したものかロールたちと何度も討論を交わしたものだ。


「――先程は利子のようなものと説明しましたが、僕の考えとは異なります」

 僕は会場の全員に見えるようにゆっくりと指を折っていく。


「まず一つ、借金をするのは皆様ではなく、国の方です。むしろ皆様は貸し出す側だと考えていただけるとわかりやすいと思います」

「なんとっ!? 私たちが国に!」

 これには貴族も驚いたようだ。

 そりゃあそうだ。貴族にとって国とは仕えるものであり、尽くすものというのが一般的だ。善良な貴族は国を裏切ったりしようなんて考えないだろうし、弱味を握ってどうこうなんて以ての外だ。


 ただ、驚きの中に喜びも見て取れる。

 やはり自分の懐が痛まないということに加えて明確な上下関係が若干弱まるというのが魅力的なんだろう。ここは僕にはよくわからない感覚だ。前世でも現世でもそういうこととはまだ関わりを持っていないから。


「というのも、利息というは国の事業に使うためのお金を預かっているお金から使用し、そこで得た利益の一部を貰うというものです」

「それでは預けた金は捨てられるということにならないかね?」

「そうだ! 結局、国に金を貸すのではなく差し出しているということになるではないか!!」


「はい。皆さまのお怒りももっともです。実際、利息部分を受け取れるようになるまでは時間がかかるでしょう……そこでふたつ目です」

 僕は再び、指を折る。

「――この国にはまだ死蔵されているお金が多く眠っています。ひとまずはそれをかき集めて使用することを提案します。つまり、融資を募るのです!」


「一体、どこにそんな大量の金があるというのだね?」

「地方です。この休み、僕は今まで行ったことのない土地へ行きました。そして、感じたのはまだまだお金の普及が進んでいないということです」


「……どういうことかね?」

「貴族の皆様にはわかりにくいかもしれませんが、田舎では物々交換の方が主流なところはあります」

 ヘラクの故郷がいい例だ。あそこの村では住民はお金をあってもなくても困らないとすら考えていそうだ。それはそもそもお金を使う場所がないから。


「一方で、お金がなくて困っている人もいます。そういう人たちにお金を回し、そしてお金を増やしていくのです!」

 金は天下の回し者という言葉があるように、お金は世界を回ってこそだ!


「金を与えるだと? 金がない者にか?」

 訳が分からない。そう言われるのは織り込み済みだ。


「お金がないというのは何もできないこと。お金がないからこそ、その人たちはお金を生み出さない。それは逆を言えばお金を与えさせすればお金を生み出す可能性があるということです」

 働くのだって、支払う給金がなかったりすれば人を雇えない。

 仕事がなければ人は働けない。仕事を作るためにもお金は必要なんだ。


「なんにせよお金を回すことが目的です。そして、これは多くの時間を要します」

 納得させるための問題は結局時間と金だった。

 こればっかりは納得させられるだけの材料を用意できなかった。僕は悔しいけれども銀行の便利さを知っている。でも、それは僕が別の世界の知識を持っているからだ。それに僕のいた時代はすでに銀行が当たり前になっていた。

 ゼロから広めるとなるとその苦労は計り知れない。もしかすると、この世界では上手くいかない可能性だってあるんだ。


「……その時間の目安はあるのかね?」

「財務卿……!」

「閣下……」


「皆、落ち着きなさい。これは未来を見据えたものぢゃ。我々だって同じように長い時間をかけて基礎を作ってきたのぢゃ。……時間はかかる。急ぐでない」

「「「はっ!!」」」

 これには驚いたよ。

 財務卿というのはただの派閥のトップというわけではないということが証明された結果だったよ。


「……やれやれですわね」

「ロール?」

「結局、初めから閣下はわたくしたちを試しておられたのですわ。……まったく、曾孫と結婚などと要求をしておきながら」

「あれ? もしかしてちょっと残念?」


「ふん! そんなことはありませんわ! わたくし、いくら立場があろうともよく知りもしない殿方と家庭を築くつもりなんてありませんのよ?」

 ロールだったらそうだろうなぁ。なんだかんだで気が強いし……。


「ほっほ、では曾孫とはおいおい会えばよかろうて」

「……閣下」

「財務卿」

 いつの間にか財務卿がすぐ傍に。


「それにまだすべてが成功したわけでもないぞ? 私を説き伏せることもまだぢゃし、財務派閥の後には政治の中枢、果てには陛下を納得させるだけのものが必要ぢゃ」

「あら、でもそちらはお力添えをいただけるのでしょう?」

「かっか、気の強いお嬢さんぢゃ。ますます曾孫の嫁に欲しくなるわい!」

「……閣下、そのことについては娘とじっくり話し合いをしてからということで」

「むぅ……、息子しかおらなんだからわからんがやはり娘というのは大事なものか」

「それはもう……!」

「お、お父様……恥ずかしいですわ」

 うんうん。いい話だ。


「王の説得については財務卿だけでなくオレにも任せるがいい」

「……ガリレオ」

 何しに来たの? というか来てよかったの?


「諸々見越してこの段階で父上を呼んだのであろう?」

「はて? 何のことですかな?」

「……まったく、お前の後任はもう少し優しい者を選んでおけよ。兄上が苦労するからな」

「それは約束できかねますな。財政を守る者はそれなりに肝の据わった者でなければ務まりませぬゆえ」

「そうだよ。それに今後はもっと忙しくなるんだよ?」

「……お前はどちらの味方だ」

 そんなの決まってる僕はお金の味方さ!


「まあ、話を聞いた限り銀行とやらは初めの利用者は富裕層であろうな」

「……これは陛下」

「父上!」

「よい。皆、楽にせよ」


「……して、リムニルとやらお主の将来的な目標はおそらく民間にまで利用者を増やすことであろう? 眠っている金をそういった者たちから借りるだけでは意味がないからな」

「はい。休みを利用して友人の故郷に行きましたが、未だ辺境ではお金の価値が低いままです」

「で、あろうな。税ですら一部の地域では特産品で代用しておる」


「――しかし、いつまでもそういうわけにもいかないと考えています」

 地球がそうであったように開発が進めば辺境であってもお金を使う生活が広がってくる。そもそも僕の故郷だって田舎の分類だけど今ではほとんどが金銭でやり取りをしているぐらいなのだから。その時が来るのはそう遠い未来ではないと思う。


「そのためにはやらねばならんことが山積みだな」

「忙しくなりそうですね」

「……兄上」

「もちろん、お前にも手伝ってもらうぞ?」

「わかっております。すべては民が豊かに暮らせるために」

「そうだ。すべては我が国の未来のためだ」


「なかなか頼もしく育ちおって」

「ほほ、陛下も嬉しそうではありませんか?」

「……この成長を喜ばん親はおるまい?」


「なんにせよ、これから忙しくなりそうですぢゃ」

「そうだな。――この場に集まった者には先に言っておく。此度の会議の結果として余は銀行なる制度を広めたいと考えている。特に財務派閥の者たちは忙しくなるが、期待しておるぞ!」

 王の期待に応えようとする声で、室内が揺れたような気がした。


 そして、この日は僕にとっても王国の財政にとっても記念すべき日になったのだった。

 次話でこの章は終わりにする予定です。その次からは最終章を始めようと思ってますのでお楽しみに! ブヒッ!

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