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金命の豚  作者: あなぐらグラム
【貯金~増やす編】
36/44

『会談①』 面子が凄い

「うわぁ……」

 扉が開き、室内の様子が目に飛び込んできて最初に僕の口から漏れたのは感嘆のため息だった。

 あまりにも凄すぎて圧倒されてしまったと言い換えてもいい。


「どうした? 早く入らんか」

「わ、わかってる!」

 後ろからガリレオが急かすが、なかなか一歩を踏み出せない。

 僕がこんなに緊張しているのに、ガッカリレオが落ち着いているなんて何かの間違いに思えるがそうじゃない。これが生まれながらの身分の差なのだろう。

 生まれを悔いたことも、誰かを羨んだこともないが今だけは正直羨ましい。


「……大丈夫ですわよ。落ち着いていけばいいのです」

 そう言って僕の手を握ってくれたのはロール・チャチマッキー。チャチマッキー侯爵家の令嬢であり、この会談を成立させた立役者の一人。

 ……そんな彼女の手も震えていた。

 ガッカリレオと違い、常に敬われる立場にはいない彼女だからこそおそらく僕以上のことの重大さを認識している。だからこそ感じる恐怖というモノがあるのだ。


「――行こう」

 それが勇気をくれた。

 そうだ。何を迷う必要がある。僕に待ち受けるのは恐怖ではない。未来を切り拓くことへの期待だけだ!


「天より授かる力は『貯金』、王立学院所属リムニル――入ります!」


 後に王国の財政を一変させる流れはここから始まったと歴史書には記されている。


◇◆◇◆◇


「――これより会議を始めさせていただきます。議題は『王国の財政管理を円滑に行う方法』について、司会進行は僭越ではございますが、王立学院教諭ホコランシー・シュネが務めさせていただきます」

 王立学院で商業の歴史などについて教えている教諭の言葉で会議は静かに開幕した。


「会議に移ります前に、必要ないかと思いますが参列者の方々のご紹介をさせていただきます」


「ノストラム・ガウマンディ―国王陛下ならびにレオナルド・ガウマンディ―第一王子殿下、ガリレオ・ガウマンディ―殿下」

 紹介がされると一斉に国王陛下に向かって敬礼の構えを取る。僕よりも後に室内に入ったガリレオも王様の後ろで敬礼を取っている。


「――うむ。皆、楽にするがよい。本来であれば学院に在籍している間は身分は平等ということになっているが、場所は学院でも議題は国政に関わること。よって、不肖の息子が関わっている案件に私と将来的に位を引き継ぐ可能性の高いレオナルドを連れて来ておる」

「あくまでも陛下と私は見学者という立場だ。会議について一切口を挟まないので気軽に進めてくれたまえ」

 無茶を言う……! こういうところはさすがにガリレオのお兄さんだよ。王族が見ている前で下手なことを言えるわけないじゃないか!


「……(にやり)」

(ムカつく~!!)

 チラッと横目で窺えばガリレオが勝ち誇ったような顔をしていた。

 おそらく、初めから王様が参加することを知っていたんだ! それを黙っていたんだ! 自分がこの状況を楽しむためだけに!!


「つ、続きまして財務卿フィリップ・アントワネット様、リーゼンツ・チャチマッキー侯爵」

 ……あれが、僕が説き伏せるべき相手か。老獪って感じがする。どうも一筋縄ではいきそうにないなぁ。あと、ロールのお父さんはリーゼントタイプの巻きロールなんだね……。

 憂鬱な気分に浸りながらもそんなどうでもいいことが気になってしまう。


 ちなみに、ロールのお父さんは仲介した関係でこの場にいるだけなので随伴者は使用人だけだが、財務卿は数名の部下らしき人たちを連れて来ていた。その中にはあのコイーンさんの姿もあるじゃないか。

 ……ルリスさんもいるけど、ちゃんと仕事するのかな?


「……最後に、今回の発案者ロール・チャチマッキー侯爵令嬢ならびにリムニル」

 僕らの番だ。

「ご紹介に預かりました今回の議題の提案をさせていただきましたロール・チャチマッキーでございます」

「お、同じく発案者リムニルです……」

 き、緊張する~。この中で平民なのって僕一人じゃないか!

 いや、正確には見学者として学院長や教師数人、それにニンフィーニアとそのお祖父さんがいるから一人かどうかはわからないんだけど……。


「そもそもの発端はここにいるリムニル、彼のギフトです」

 そんなことを考えている間にもロールはさっさと話を進めてしまってる!?

「彼のギフトは『貯金』。その名の通り、お金を貯めるという力です」


「……え~、これだけを聞くとそれが今回の議題とどう結びつくのかという話になりますが?」

「もちろんそうでしょう。どのような言い方をしても、お金を貯められるだけなのですから。ですが、彼のギフトはそんな概念を覆します」


「……え~、僕のギフトは複数の人間から預かったお金を管理することが出来ます。現在はガ……ガリレオ殿下のご厚意で一人につき最高5000万ルピヨン可能になっております」

 この日のために血のにじむ思いで苦労した。ほんっとうに大変だった。入りきらない野ざらしのお金を見続けるのは……!


「5000万!? そ、それは凄いことですね」

「ほうぢゃな。たしかに、凄いことぢゃ」

 会議が始まってから一言も発していなかった財務卿が早くも反応を示してきた。

「……しかし、それはあくまで個人の所有できる金額ではと言わざるを得んな」

 僕とロールは視線を交わす。うん、わかってる。ここから正念場だ!


「そこのリムニルという少年がどれだけの人数の財産を管理できるかね? そもそも国家的に見ればそんなものは微々たるもの。言い方は悪いかもしれんがあってもなくても変わらん程度ぢゃよ」

「そ、それでは彼のギフトは役に立たないと?」

「――わかりやすく言えばの」

 これには司会もたじたじだ。

 財務卿という国の財政を預かる立場の人間が公的に神からの恩恵であるギフトを否定したのだから。


「ちょっと失礼じゃ――」

「――ニンフィーニア、止めなさい」

「御祖父様っ!?」

 堪らず異議を唱えようとしたニンフィーニアが祖父に窘められている。うん、今の彼女の立場的にここで突っ込まれると後々面倒だ。僕は軽く会釈をして向き直る。

 面倒ではあるけど、その想いはありがたい。ちょっとだけ、勇気が湧いてきた!


「……たしかに僕個人の力には限界があります。だからこそ、国の、そして財務卿あなたの御力を貸していただきたいのです!」


「……順番が前後してしまいましたわね。まだギフトの説明も終わってはおりません。肝心なのはこれからですわよ?」

 ロールはどこか楽しむように軽やかに告げるのだった。

 今回は結構多くのキャラが出てきました。あと、大筋ではありますが今作のラストまでの構想が自分の中で整いました。最後まで読まれたら、少しがっかりするかもしれませんが出来るだけそうならないように頑張ります。 ブヒッ!

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