『再会②』 ドリル天を向く
お久しぶりです。年始の新作投稿など色々あって間が空いてしまいました。その都合があったからというわけではないのですが、本編でも久々にリムニルと愉快な仲間たち全員集合です。
「「「おかえり~!」」」
「……なんですの? 皆さんお揃いで」
ロールを入り口付近で待っていたら、何やら呆れたようなちょっとホッとしたような。
「皆様、お久しぶりでございます。お嬢さまは休みに皆様と行動を共に出来ないことを大層残念がっておりまして……」
「ちょっ!?」
「な~に? 可愛いとこあんじゃない?」
「ち、違いますわよ! そんなことあるわけないじゃないですか!! 少なくともあなたに会いたかったなんてことはありませんでしたわ!」
「え、ええっと、あちらの方がチャチマッキー侯爵家の御令嬢ですか?」
「そうだよ。名前はロール。……悪い子ではないんだけど、カミアが絡むとあんな感じなっちゃうんだ」
自己紹介は自分でするのがマナー的にもロール本人にしてもいいんだろうけど、ああなると長いから。
「あっ、ちなみに後ろにいるのはロール付きのメイドさんだよ」
「あら? そちらの方は……?」
あっ、ようやくこっちに気付いたみたい。
「彼女はニンフィーニアだよ」
「ニンフィーニアと申します。シスターですが、今は神様の教えを広めるために同行させていただいております」
「……神様?」
「はい。神様です」
「ああ、神様というのはリムニルのことだぞ」
訝しげな視線を向けるロールにガリレオが説明。ただ、その説明だと意味が良く伝わらないんじゃないかなー。
「実は……」
かくかくしかじか。とりあえず経緯を簡単に説明すると、徐々に顔色が変わってくる。
「ぷぷぷっ、な、なんですのそれ! リムニルさん面白すぎですわ~!」
「……そんなに?」
「いやいや、知り合いがいきなり神様扱いされてんだぞ? これが普通だって」
普通!?
まさかそれをヘラクに言われるなんて!
「どう思います!?」
「……残念ですが、普通かと」
「……申し訳ありません私もそう思います」
「そんな……!」
一般人代表のドルーマンさんとメイドさんまで……。
「おい、失礼なことを考えてないか?」
うるさい。
おかしなヤツ代表は黙ってて。
「……ああ、そうそうロールよ」
「はははっ……は、はぁな、なんですの?」
「実は神様と呼ばれることになった経緯にも関係するんだが……」
「だからなんですか? 勿体ぶってないで早く仰ってくださいませ!」
「……言いにくいんだが、リムニルめもうすでに貯金を普及し始めてたからな?」
「はぁ!?」
「ちょ、ちょ~っとどういうことですの!?」
素っ頓狂な声を上げたと思ったら、詰め寄られてしまったよ。
「リムニルさん! どういうことですか!!」
「い、いや、どういうって言われても……」
どういうがどういうこと?
「わ、わたくしがどれだけ大変な思いをしたと思ってますのよーー!!」
◇◆◇◆◇
「まったく! 勘弁してほしいですわ……」
ロールが叫んだことで注目を集めてしまったために足早に寮へと移動する間もぐちぐちと文句を言われ続ける。
本当に何がどうなっているのか。
「ロールよ。落ち着け。さすがに道端で説教をするべきではない」
「……そうですわね。こんなに早く帰りたいと思ったのは二度目ですわ」
「僕は逆に帰りたくなくなって来たよ……」
説教されることが決定しているなんて。お先真っ暗ってところだね。
「帰りたいとまで思った苦労が水の泡になるかもしれないんですのよ? 小言ぐらいは我慢しなさい!」
そんなことを言われても……。
「小言で終わらせてね?」
とりあえずこれぐらいの牽制は許してもらえるよね?
「「終わると思っているのか(ますの)?」」
……あっ、ダメっぽい。
◇◆◇◆◇
「とりあえず、この休みのわたくしの行動について軽く説明しておきますわ」
寮に帰った途端、僕は座らされ求めてもいない説明を受けることになった。
ちなみに、正座だ。この世界には正座という概念はない――這いつくばる形になれば似たようになるから例外とするが、基本は椅子や胡坐をかくように座るのが一般的だ。
これは僕の反省と真面目さを示すための行動にすぎない。
「……それ、無駄に疲れねえか?」
正座は異様に見えるらしく、ヘラクなんかは引き攣っている。
それも狙いの一つ。
「全然問題ないよ。これは僕の誠意の表れだと思って無視して」
異常な行動をしているように見せれば、相手の同情を誘いやすくなるからね。……だから、ニンフィーニア僕の真似をして正座するのは止めない?
「うぐぐっ、こ、これが神のなさる修業……! き、キツいですが乗り越えた先にはきっと素晴らしい教えが!」
そんなものは待ってないから。
「ニンフィーニア、座る時は楽な姿勢が一番だよ」
巻き添えで苦しませるのは本意ではないので、早々に正座を切り上げる。周囲からホッとした空気が漂うが、ニンフィーニアは短い間に足が痺れたようで別の意味で苦しそうだ。
「……そろそろよろしいかしら?」
一人だけ弛緩した空気の中でも張り詰めた緊張感を放っている人物がいた。
「殿下とわたくしは休みに入る前から行動を開始していましたの」
語られる計画に僕はハッキリ言ってとても驚いた。何よりもドン引きした。
貯金の有用性を理解し、僕の構想する銀行制度を導入するために動き出したというところは仮にも王族と貴族に連なる者として許容できる。
だけど、そういう場合はもっと上の人。簡単に言えば大人に任せるものだと思う。
なんで二人が先導してんの?
忘れてるかもしれないけど、僕たちはまだ10歳にもなってないんだよ?
「――結果としてわたくしはこの計画が上手くいかなければ財務卿の曾孫さんと結婚する羽目になりそうですのよっ!」
だからなんとしても失敗するわけにはいかないと叫ぶロールの姿に、僕はなんだかんだと前世の世界のことを引き摺っていたんだなと後悔するのだった。
だって成人してもいない子どもと曾孫の結婚まで想定するなんて……貴族怖いよ。
地球の貴族制度も知らないリムニルにとってファンタジー世界の貴族制度はまさにガクブルものです。まあ、もしかしたら相手を気に入って両想い・・・なんてこともあるかもしれないということにはそのうち気付くので長々とは気にしないと思いますが。それではまた次回の後書きで! ブヒッ!




