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金命の豚  作者: あなぐらグラム
【貯金~増やす編】
31/44

『布教:ヘラクの村』せっかくなので

「さあ、将来のために貯金をしていこうではありませんか!」

「――皆様、神は備えよと申しております!」


 ガッカリ王子が僕たちへの嫌がらせとして滞在日数を増やしたことと、それを知ったニンフィーニアから布教をしないのですかというプレッシャーを与えられたことで僕は友人の故郷で怪しい布教活動を行う教祖になってしまっている。

 どうか、ニンフィーニアの言う神様が僕のことだとは気付かれませんように。


 ただ、不況を始めてすぐに大きな壁にぶつかった。

「貯金? そんなこと言っても、オレたち村の外に出ることはないからなぁ……」

 相手が子どもだからか、こんな風に申し訳なさそうな人は多い。

「金? ほとんど触ったこともねえよ」

 そうでなければ、金の価値すら知らない可能性のある人だっている。


 なんてこった!

 そう思うと同時に、初めてヘラクと会った時のことを思い出す。彼は力がすべてみたいな発言をしていた。正確には最強にこだわっていたところがある。それはこういう事情だったのだ。


「金かぁ、年に数回しか使わねえから基本家にしまいっ放しだなぁ」

 そんな中、光明とも取れる言葉が!

 僕はチャンスを見逃さずに畳み掛ける。


「そんなあなただからこそ、貯金は大事です!」

「えっ……、いや、だから金は使わないんだって」

「違います! お金を使わないからこそ、貯金が必要なんです!!」

「……?」


「いいですか? 普段はお金を使わないと仰ったあなた! 普段は使わないからこそ、しまいこんでいるあなた!」

 道行く人々を指差しながら、彼らの足を止めるために声を張り上げる。


「お金はしまっていても意味がありません!」

「それはどういうことですか、神様!?」

「お金は使ってこそ! だけど、ただ使えばいいという物でもありません!!」

「えぇっ!?」

 よしよし。ニンフィーニアの合いの手でほとんどの人が足を止めたぞ……!


「お金はいざという時に使うからこそ、ここぞという時に使うからこそ有効的な使い道になるのです!」

 無駄遣いという言葉もあり、父さんのようにただ貯めることが好きな人もいる。しかし、貯金は実はそういうものじゃない。

「しかし、使いたい時に使いたいだけのお金がない。普段しまっているからどこにあるのかわからないそんなことはありませんか?」

 問い掛ければ、あるあると頷く人々。


「そんな時こそ、貯金です! 僕たちは皆さんの大切なお金を奪うわけではありません! 使いたい時、使うべき時に使えるように管理するのです!」

「まあっ! まさに、天からの導き! 金色をしている運命の糸が皆様を更なる幸福へと導くでしょう」

「……普段はわからないかもしれません。ですが、いざという時にならわかる。そんな支えに僕たちはなりたい!」

 さあ、反応は如何に!?


「……う~ん、そんな風に言われると」

「だなぁ。子どもたちがここまで将来のことを考えているとは……」

「たしかに、家に放置しているよりは預けて管理してもらっている方が楽なのかも」

「子どもの訴えに耳を傾けないなんて、男じゃねえぜっ!」

「よっし、皆で貯金をしようじゃねえか!!」

「「「おお~!!」」」


「「やったぁ!!」」

 こうして信者となった皆さんから殺到する貯金の申し込み、僕とニンフィーニアは笑みで迎えながら喜びのハイタッチを交した。


◇◆◇◆◇


「お前たちは何をしているんだ……?」

「…………はぃ。反省しています」

「わ、私たちは信仰を広げただけですっ!!」

 興奮を一気に冷やすようにガリレオに見つめられ、正座をする僕とニンフィーニア。

 僕は返す言葉もないと項垂れるが、ニンフィーニアは抗議の声を上げる。いや、ダメだよ。今だけはガッカリ王子じゃないよ、がっつり王子だよ。


「だぁかぁらぁ、制度が整うまで勧誘は控えろと言っておいただろうがっ!!」

 そうなのです。

 そういう話で、村では断っていたのです。

「お前が今預かったとして、彼らが必要な時にお前が金を渡せるのかっ!」

「ご、ごめんよ」

 お金のこととなると、つい。


「それが間違っているのですっ! 神の教えを解くのに、時と場所を選ぶ必要がありますか!?」

「……いや、あるだろう」

「ニンフィーニア、あると思うよ。少なくとも、今は違ったんだよ」

「そんなっ、神様まで!?」

「……あと、やっぱり神様はやめて」


「……はぁ。とりあえず、王都に帰ったら早々に財務派閥に話を通しておく。この村については無理にでも親父に話を通して役人を回してもらえるようにしておこう」

「重ね重ね、申し訳ない」

「まったくだ! 次からはちゃんと話を通してからにしろよ」

 ……ううん、正しいのはわかっているのに釈然としないのはなんでだろう?


「……で? どれぐらい集まったんだ?」

「えっ? そんなに多くはないよ」

「10人程度と、金額で言えば500ルピヨンにもなっていませんね」

「そんなものか……」

 残念そうにしているところ悪いけど、聞いてくれた人数よりもこういうのは世帯数で決まるものだよ。

 ひと家族が貯金するだけでも成果なんだけどなぁ。


「まあ、お前たちのおかげで地方には死蔵されている金銭があることがわかった。これならば、制度をしっかりと作れば説得も簡単だろう」

 その説明をするのがガッカリ王子というところに不安はあるけど、任せるしかないよね。


◇◆◇◆◇


「それじゃな、じっちゃん、皆!!」

「おうっ! 行って来い!!」

「次帰って来る時は土産を頼むぜ!」

「……まったく。まあ、元気にやるのじゃぞ?」

「任せとけって!」


 数日後、ヘラクの村を出発する日がやって来ていた。

 入り口では村長さんをはじめ、多くの人が見送りに集まってくれていた。


「皆さんの大切なお金はちゃんと預かっておきますから!」

「ガッハッハ、そんなに気にせんでもええぞ?」

「そうじゃ。そうじゃ。どうせ普段は使っておらんからな。坊主の好きなようにせい」

「なんだったら、それを返すついでにまた村に遊びに来い!」

 滞在中に、すぐにお金を返せないことを説明したのだが、彼らは気にするなと言ってくれた。

 でも、この好意に甘えるわけにはいかない。

 僕の『ぶたさん貯金箱』としての矜持がそれを許さないからだ!


「絶対、ぜっったいに貯金の制度を国中に広めて見せます! そうなった時にはこの村にも支部が出来て、今よりも生活を豊かにして見せまする……神様はそう仰っておられます。神を信じれば、あなた方は救われます」

「はいはい。迷惑だから早く行きましょう」

 時々、ニンフィーニアが暴走するのももう慣れたもので復活したヘンウェンが腕を取って足早に馬車に押し込んでいく。この村に来てからヘンウェンの肝っ玉が鍛えられたのか、前よりも堂々としている気がする。


「王都に帰ったらやることがたくさんですね」

「……そうだな。まあ、それも王族としての役目よ」

「陛下や重臣の方々、特に財務卿の説得は大丈夫ですか?」

「問題ない。元々、リムニルを学院に招いたコイーンは財務派閥の人間だろう? ならば、財務卿の耳にもリムニルの情報は入っているはずだ」

「それもそうですな」


「ちょっと、ちょっと、もう帰る気満々なところ悪いけど、先にアタシの町に行くんだからねっ!」

「ええ、わかっておりますとも」

「……オレはもう王都でゆったりしたいのだが」

「イヤよっ! 王都に戻ったら、あのいけ好かないロールに会わなくちゃいけないのよ?」

「そんな理由かっ!?」

 騒がしいなぁ。

 なんにせよ、友人の家を訪れるという体験も前世じゃできなかったことだ。大変そうだけど、これからも楽しそう。

 一旦、王都を通り過ぎてカミアの生まれ故郷へ。久しぶりに話題に上がった、ロールお嬢さまの動きや教師たちの休みの様子は? 気になるところでまた次話! ブヒッ!

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