『初体験①』みんなで移動
だーっと一気に書き上げてみました。
「…………」
「あ、あの、リムニル君? どうしたの?」
「ハッ! ああ、いやっ、なんでもないよ?」
どうやらボーっとしていたらしい。
心配したヘンウェンの顔が近くにあってちょっとドギマギ……はしないけど驚いちゃった。
あっ、でも嬉しいからそんなに離れなくてもいいよ?
「おいおいリムニル! 学院を出発してからな~にボーっとしてんだよ!」
「そうだよ。ここはもっとはしゃいでもいいところだと思うよ?」
「……うん。そうだね。だけど、屋根に上がるのは危ないから降りて来たら?」
「ハハハッ! 平気平気!」
「そうだよ! アタシたちそんなにマヌケじゃないから!」
「…………そう?」
だったらいいのかな?
とりあえず、屋根に上ろうとして転がり落ちたガッカリ王子は無視しておくね?
「無視するなぁああ!!」
大丈夫。
君にはドルーマンさんっていう優秀な人が付いて……あれ? 助けに行かないんですか?
あっ、自業自得。
「すいません。御者さん止まってくださ~い」
◇◆◇◆◇
「まったく! 酷い目に遭ったぞ!」
「自業自得です。これからは軽率な行動は控えてください」
「ドルーマンきっさまぁ!」
「……はいはい。あんまり騒ぐと馬が驚くから静かにね」
僕は今、前世から合わせても初めての経験をしている。
「せっかくの休みなのに怪我で終わりたくはないでしょ?」
そう、それはお休み!
この世界では平民にとって休みっていうのはあってないようなもの。
ウチは商売をしているから店が休みの間は休みだと思われがちだけど、完全な店休なんてなかったし、閉店してからや休みを取った日にも仕入れなどはあったからね。
そもそも休むという文化がないんだよ。
前世はまあ家に居続けることが仕事というか。
そんな感じで与えられた休みっていうのは初めてかもしれない。
それが王立学院では存在する。
大体、新年を迎える前と迎えてからで約2か月。
移動時間も含まれてるから実際に休めるのはもう少し短いけど、休みは休みだ。
そして、僕たちは休みの間それぞれの家に行くことが決まった。
メンバーは僕、ヘラク、カミア、ヘンウェン、ガッカリ王子ことガリレオ。それにガリレオの従者であるドルーマンさんが同行している。
ルリスさんは仕事と言っていたが、おそらく暇を見つけてコイーンさんと会うんだろう。ちょっと嬉しそうだったから間違いないと思う。そこを邪魔するほど野暮じゃあない。
カミアたちが戻ったら根掘り葉掘り聞く計画を立てているけど……。
そして、メンバーから唯一外れているのがロール。
ロールが外れている関係で必然的にメイドさんも外れているけどそれは置いとくとして。
まあ、彼女が外れているのは単純に身分的な理由。
ギフトを授かっているとはいえ、まだ平民よりな僕たちがおいそれと侯爵家に行くわけにはいかない。それでもロールは招待しようとしてくれたが、そこは僕が代表して断っておいた。
そのため、ロールだけは一人で休みを実家で過ごし、休み明け前には合流する予定。
ヘンウェンも侯爵家の令嬢だけど、家に居場所がない彼女を休みだからと実家に居させるのは嫌なので同行してもらっているが、実家であるギャバーグ侯爵家には行かない。
そこんところの根回しはロールに頼んである。
同等の侯爵家と知り合いになっていると言われれば、帰ってこないことぐらい簡単に目を瞑るだろうという目論見だ。
駄目だったら、殿下の宝刀とやらを使ってもらう。うん、そう。『伝家』じゃなくて『殿下』。ガッカリ王子、正確には王家の威光だね。
ちなみにその王子だけど、本来だったら実家に帰らなきゃいけない&その家に行けない筆頭なんだけど、まあ王家からは見聞を広めて来いと言われているらしい。
直訳すると卒業するまで帰って来るなと言われているとか……。
これは王家のしきたりみたいなもので、ガッカリ王子が特別待遇というわけではないそうだけど、変に勘繰っちゃうよね?
実際、しばらくの間みんなが憐みの視線を送って優しく接していたからね。
まあ、そんなわけでこのメンバーで行くんだけど、寄る順番は僕、ヘラク、カミアの順番になってる。
学院から一番遠い僕の家に寄ってからそこから近いヘラクの家、そして学院を通り越してその先にあるカミアの家に寄る。
う~ん、帰るのが久しぶりだから緊張する。
「そう言えば、お前たち実家に帰ることは伝えてあるのか?」
「「「あっ……」」」
すっかり忘れてた。
◇◆◇◆◇
「……懐かしい」
見慣れた景色が広がっている。
ほんの少し前までここにいたのに、もう懐かしいと思えるなんて……!
「のどかでいい場所だな」
「そうだね~。アタシのところも似たような感じだけど、ここはここでいいものね!」
「だな。オレ様の所はちょっと窮屈だから、開放感があるのは嬉しいぜ!」
「……ここがリムニル君の生まれた場所なんだね。うん、良い所だと思う」
「ありがとう」
そんな風に話している間に、家が見えてきた。
うん、だけどこんなにゴテゴテしてたっけ? なんか出る前より派手になっているような?
「……なんだか周りの建物と違う気がするけど、本当にここで合ってる?」
「……うん。そのはず」
だよね?
合ってるよね?
「メェ~」
「あっ、ドリー!」
お祭りで手に入れた僕の羊、ドリーが出てきた。
うん。間違いないみたいだ。
「ドリー! 勝手に出て行っちゃダメよ……ってリムニル!?」
「ただいま。母さん」
「あなたー! リムニルが帰って来たわよ!!」
母さんの呼びかけにぞろぞろと家族が姿を現す。
「リムッ!!」
もちろん、最初に出て来たのはリスティ姉さん。
「リムニルだって!?」
「やあ、おかえり~」
続いて父さんそして少し遅れて兄さんがやって来た。
「どうしたの!?」
急な帰省にみんな困惑。
うん、だけどその前に言いたいことがあるんだけどいいかな?
「……この派手な雰囲気はやっぱり兄さんの仕業だったんだね?」
実は母さんが出てきた段階で気付いてたんだ。
「良く分かったな! 素晴らしいだろう?」
うん。胸を張るのはわかるけど、なんか違う。
もうね、母さんとリスティ姉さんが前世のテレビに出て来るコスプレみたいな無駄に露出の多い衣装なのが意味わからないし、その服を店頭に並べているのもわからない。
「今じゃ、雑貨よりも服の方が良く売れるんだ! お土産にどう?」
違うよね?
雑貨が置くに追いやられてるだけだよね?
「……変わりないみたいでよかったよ」
兄さんは少し自重を覚えて欲しいけど、それでもよかった。
「とりあえず、ただいま」
「「「「おかえりリムニル(リム)」」」」
こうして僕は初めての休みと里帰りを経験した。
さてここからはお休み編に入ります。
時期としては12月~1月の半ばあたり、いろんな初体験をしつつ次に繋げていければなと思っています。 ブヒッ!




