『新生活⑤』ケンカするほど仲が悪い
今月の投稿は最後かもしれません。
「「「上等だっ! 表に出ろ!!」」」
凄まじい怒号がそこかしこで聞こえている。
これが、王立学院。
……王様、身分の対立なんて問題じゃありませんよ。もっと根本的な問題があります。
僕たち新入生は目の前の光景から目を逸らさずにはいられない。
――遡ること十数分前。
入学式を終えたばかりの僕たちはある集団に出迎えられた。
「「「入学、おめでと~!」」」
「うわっ!?」
「なんだぁ!!」
あっという間に囲まれた僕たちには一斉に紙が手渡されていく。
「??」
一番上の紙には『偉大なる王家に忠誠を』そんな文言がでかでかと記されていた。
王家っていうとガリレオも含まれるから、なしだね。
他の紙も似たように誰かを称える文言を中心の内容だった。
「これはおそらく勧誘だな」
「勧誘?」
ガリレオが物知り顔だと腹立つのはなんでだろう?
「ああ。先程、親父……国王陛下が仰っていただろう? 派閥関係の対立だよ」
「……普段から気を付けないと困ることになりますわよ?」
「でもよ、陛下なんて言うよりも親父って言ってる方が周りから誤解されにくいんじゃね?」
「言えてる~! だって、ガリレオ見た目じゃ絶対に王子なんてわからないもんね!」
「……話が逸れてるよ?」
それにしても、派閥の対立か。
王様が入学式で言ってるぐらいだから表立ってしているものじゃないと思ってたけど、違ったのか。
家の関係なんかもあるんだろうし、対立しないのは難しいのかな?
「パッと見、数が多いのは王権派だな」
「……そうですか? 財務派閥も数が多そうな気がしますけど?」
「いやいや、あの強そうな奴らがいるところが一番強いだろ!」
自慢、冷静、感覚で告げられる各派閥。
僕から見るとどれも似たような規模だと思う。
「財務派閥と、あの強そうなのは軍関係? だけど、王権派って何?」
「たしか、王こそが絶対であると訴える集団ですわね」
「何それ? 意味わかんない。王様が一番偉いのなんて当たり前んじゃん!」
「そういうことではありませんわ!」
あぁ、もう。
なんでこの二人はこんなに反目しあうんだろう……。
「なんにせよ、無駄な争いだな! どれもが王国にとっては必要な存在なのだから、対立する意味が分からん!」
う~ん、上から見ている意見な気がする。
ガリレオの意見に賛同するのは少し、危険かも。
◇◆◇◆◇
「さあさあ、王国の民たちよ! 共に偉大なる王国を称え、王国を守る王家を称えようではないか!」
「何を言っている? 国を守っているのは勇敢なる戦士である! 王だって兵士が居なければ身を守ることすら出来ずに終わるということを忘れているのではないか?」
「……あなた方は本当に単一の物の見方しか出来ないのですね。一国だけで成り立つ国など存在しません。他国との協力こそが繁栄の秘訣。そのために必要なのはズバリ財力! 他国の協力を得るための財力こそが最も優れているのですよ?」
「……最初のはまあ、わかる。最後のもわかる。でも、2番目はダメじゃない?」
「ええ。あの言い方では王族を蔑ろにしているように取られかねませんわ。いくら身分が平等な学院とは言え処分されてもおかしくない、反乱を先導する発言でしょう」
「だけど、その通りじゃね? ガッカリレオなんて戦場にいても何もできないだろ?」
結局はどれも危うい訴えをしているってところかな。
一見まともそうな王権派は何も考えてないだけに思えるし、最終的に王家が失態を演じれば真っ先に裏切りそう。
「民あってこその国! 民の生活を豊かにするための発明こそが国にとっては必要だ! 未来の技術者たちよ、国を変えてはみないか!?」
「……新しいものばかりを見ていても、発展はない。歴史から学ぶのだ! 先祖がいて、初めて我らはこの場に立てている。今こそ、古き土地を顧みる時だ!」
「……あれは、技術革新を訴える開発派か。あそこは資金が嵩むが、切り捨てるのは難しいのだよな……。ギフト所持者の研究も行っているから、バレれば面倒なことになる。絡まれないように気を付けておけ」
うわっ、面倒臭そう。
この学院のこともあるからギフトの研究については賛成だけど、関わり合いになるのはごめんだな。
「じゃあ、もう一組は真逆なの? 聞いてると古い物を大切にしようって言ってるように聞こえるけど?」
「いえ。あれは古くより辺境の地を守る古参の貴族たちでしょう」
「ロールの言う通りだ。中央ほど、政治に影響力を持たず辺境に居続ける者たちだな」
「それは貴族としての力が弱いということですか?」
「いや、歴史もあって力はあるんだが中央に呼ばれないのを蔑ろにされているからだと訴えている連中だ。単純にその地域を任せられるほど信頼されているということだから、オレが知る限りは訴えるのは比較的派閥の中でも若い連中だけだな」
その土地のことは長くいる方がわかるからね。
いきなり別の人に宛がっても上手く運営していけないだろうし……。
「……ですが、古参派閥の幹部も行動を起こしてないだけで、様子見でしょう?」
「うむ。結局は改善されるならそれでいいと思ってるからな!」
ダメじゃん。
むしろ手を出してこないで棚ぼた狙ってるんだから性質が悪い!
◇◆◇◆◇
「……やれやれ。これだから品のない連中は」
「仕方ありませんよ。彼らにしてみれば勧誘が出来るのは今日だけという認識が強いでしょうから」
「新入生はこの日を逃せばほとんどが寮に篭もりっきりになりますからね」
まったく。派閥への勧誘は結構なことだが、あれでは怯えてしまって結果的に親と同じ派閥に落ち着くだけではないか。
改革には程遠いな。
「おや? あそこの新入生……見覚えがあるような気がするな」
誰のことを言っておられるのだろう?
明らかに平民に近いような少年たちと貴族らしい少女が二人いる集団か?
「……平民ですね。だとすれば彼らは全員ギフトを持っている者たちですか」
「おおっ! それは素晴らしい。神に選ばれたギフト所持者は我らのように敬虔な信徒になる資格が、いやむしろ義務があると言ってもいいのでは?」
「だが、おかしくないか? あの様子からすると彼らは皆、同じクラスだろう。ギフト所持者をあれだけまとめるのは異例だと思うが……?」
ふむ。言われてみればそうか。
「思い出したぞっ!」
「見覚えがあると仰っていた者ですか?」
少女のどちらかだろうか?
「そうだ。あの少年!」
少年? ああ、言われれば一人だけ貴族のような装いの少年がいるな。
なんというかふてぶてしそうな面構えだ。
「あれは王子だ! たしか、名は……そう、ガリレオ王子だ!」
「なんとっ!?」
あれが? 言っては何だが、国王とは雰囲気が全く違うな。風格や威厳を感じん。
「……ふむ、だとすると彼らを勧誘されるのは困り者だな。多くのギフト所持者だけでなく、王族までいるとは彼らを取り込んだ派閥がこの先成長を遂げることは明白。いずれはこの国を牽引していく立場の我ら教会派にこそ必要な存在だ」
「ですが、我らが表立って誘えば厄介な連中に気付かれかねません」
それこそ、王族がいるのだから王権派はなんとしてでも派閥に取り込みたいだろう。
「ではしばらく静観か?」
「……それがよかろう。勧誘しているのはそもそも下級生だけだ。本格的に派閥のまとめ役が動かない限りは出張る必要はない。彼らもどうやら今日は誘いに乗りそうにないしな」
王族ならばよほどの愚か者でない限り進んで派閥に入るような迂闊な真似はしないだろう。
「それに、おそらくそろそろだ」
「どういうことですか?」
まだまだ新入りな彼にはわからないか。
「ふざけるな!」
おっ、タイミングよく怒鳴り声が聞こえて来たな。
「な、何事ですか!?」
「……案ずる必要はない。おそらく勧誘が被ったことによる派閥間の衝突だ」
「そのようだな。一人でも多く勧誘すればいいと思っている輩はこれだから困る」
「では行きましょう。神の道が我らの下に彼らを導いてくれるでしょう」
……それは私に上手く誘導せよと言ってますね?
まったく。我らの代表にも困ったものだ。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
このまま成長させると時間がかかり過ぎるので、次の話には作中の時間がちょっとだけ空きます。
最近読み返してみると、学院に通う期間を設定していないような気がしてならないのでそれを設定しつつストーリー展開を考え、今回の話までを一つの章とします。
いきなり数ヶ月とか経過してると驚く人もいるかもしれないのでこの場でお知らせしておきました。
細かい設定も入ってきますが、これからの『ぶたさん貯金箱』の成長をご期待ください。 ブヒッ!




