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金命の豚  作者: あなぐらグラム
【貯金~始める編】
21/44

『国王』裏側の出来事

 予告通り閑話です。

 登場人物の名前が出てこないのは役職だけで十分なのと考えてないからです(笑)

「みな、みなみあなあみなしゃ」

「……う~ん、おっかしいなあ?」

「……いい加減に諦めたらどうだ?」

「いや、そう言われましても……」

 ……やれやれ。これだけ、余の前で敬意を払わぬのは家族を除けば極々一部の人間しかおらんな。

 まあ、だからこそ栄えある王立学院の長を任せられるのだ。頼もしく思おうではないか。


「どう言い繕おうとも、それが寿命なのは間違いあるまい? お主が学院長に就任してから、すでに10年の時が経っておるのだ。それだけよく動いたと思うが?」

「……やれやれ。わかりました。わかりましたよ」

 ようやくこちらに向き直ったか。

 余も忙しいのだから手間を取らせないで貰いたいものだ。これでも一応国王なのだからな。


「ですが、同じ物を作るとなると少し時間がかかりそうですね。その間、他の先生方には迷惑を賭けそうです」

 なんとっ!? こやつ、まだ諦めておらんかったのか!

 直すのが駄目なら作り直すだとっ!?

 これだから、発明狂いは性質が悪い!


「そんなことで学院長としての職務を放り出すつもりか!」

「えっ、そんなことって言われても……。僕にとっては最重要なんですよ?」

「ええいっ、言い訳無用じゃ!!」

 どうせそれも表舞台に立ちたくない、サボりたいというくだらん願いのためであろうにっ!


「あぁっ、神はなぜこのような者に過分なギフトをお与えになられたのだ!」

 普段は為政者としてあやふやな神に縋るわけにはいかんが、今だけは縋りつきたい。

 ……いや、むしろ目の前におったら殴りそうだから、出て来ん方がいいか?


「ギフトを持ってなければ僕なんかがこの伝統ある王立学院の学院長にはなれてませんよ。というか頼まれても断ったでしょうね」

 笑っておる場合かっ!?


◇◆◇◆◇


 王立学院の学院長はギフト所持者が務める。

 これが暗黙の了解とされている。

 民草はもちろん、高位貴族の中でも限られた者と学院内で勤務期間が5年を超えた者でないと知らないことだ。


 元々、王立学院が設立された当初はそんな決まりはなかった。

 初代は設立に貢献をした高位貴族が務め、それ以降もある程度の身分の者で重臣を引退する者たちが就任してきた。


 しかし、あのギフト所持者が現れてから事情が変わった。

 そう、今現在も残る空間を圧縮するギフトの持ち主が現れ、その有用性が証明されてから。

 ただでさえ、ギフトは常人には計り知れない神の御業とされているのに、そやつの行動は派手すぎたのだ。戦争にも発展しかけた存在を放置するわけにもいかず、何よりも第二、第三の奴を作り出さないために同じ境遇の者をトップに置くことが求められたのだ。


 トップがギフト所持者だからか、それ以降大事件は起きていない。

 小さな事件なら毎年数えきれないぐらい起きているが、それは王立学院だけではないからな。

 つまりは問題行動を起こすようなギルド所持者には事情を説明して、抑えさせるというわけだ。

 あくまで最終手段としてだがな!


 忌々しいことに、ここで事情を説明した者にはいずれ学院長に就いてもらうことになっている。

 類は友を呼ぶではないが、問題児だからこそわかる問題児の心情を理解する者が必要なのだ。諸刃の剣だが、それを始めた時の王たちの心労に比べれば余の心労など……!


◇◆◇◆◇


 ――コンコン。


 ん? 誰か来たようだな……とそう言えばあやつを待っていたのだったか。

 当初の目的を忘れるなど、疲れておるのやもしれん。

 ただでさえ、学院長こやつとおると疲れるのに、今回は自分のことで気苦労もあったからなぁ。


「失礼いたします」

 そんなことを考えておる間に、待ち人が入って来たようだ。

「陛下、この度は私めのために手間をかけていただき誠にありがたきことにございます」

「うむ。苦しゅうない」

 そう言って座るように促すが、中々座ろうとしない。


「おい、それを退けんか!」

 どうしたことかと思えば、余の対面の椅子には弄っていた人形が乗せられておるではないか。

「えっ? どうしてです? 陛下のお隣が空いてるんだからそちらに座れば済むじゃないですか」

 こやつ、本当にそう思っておるんじゃろうな。

 普通は国王の隣に座ることなんぞ恐れ多くて出来るわけなかろうに……。


「……はぁ。仕方ない。座るがいい」

「し、失礼いたしますっ!」

 これ以上は埒があかんと席を進めれば緊張しておるわ。小柄ではないので必死で少しでも幅を取らぬように身体を縮こまらせておるではないか。


「し、しかしっ、改めて見ましても違和感がありますなっ!」

 結局、緊張で本題ではない話題を振り始めてしもうた……。


「んっ?」

 そして、振られた方はなんのことかわかっておらんし。

「それじゃよ。普段、学院長として動かしておる人形のことを言うておるのじゃ」

「あぁ、これ!」


 まあ、学院長だと思っていたら、実は人形でしたと言われれば驚くじゃろうな。

 こやつのギフト、『操縦』はある程度の大きさの物体を数パターンの動きを設定しておける便利なもの。


「……いやはや、それを知ってから今日まで本当に怒涛の日々でした」

「そうであろうな」

 余がしたこととはいえ、少し申し訳なく思ってしまうわ。


「だが、おかげで膿を出すこともでき、身分で差を付けないことを印象付けられた。余としてはありがたいタイミングじゃったと思っておるぞ」

「はっ、勿体なきお言葉!」


「……さて、表向きには平等である学院内で身分を優遇したとして処分を受けることになっておる。それでもお主の向かう先が望む物であることを願っておるぞ」

 下手な芝居までしてもらったのじゃ、それぐらいせねばならぬからの。


「ハッハッハ、陛下にとっても他人ごとではありませんか。やはりお子は可愛いですからな」

「……まったくじゃ。出来に関わらず、我が子は心配してしまう」

 問題行動を起こしそうなクラスにあえて配属したら、絡んでいったのが息子とは。

 余としてはより厳罰をしやすいので都合がいいが、ニクジューンの子は不運じゃのう。


「その割には式でおしゃべりをしてたと怒ってらっしゃいませんでしたか?」

「!!」

 余計なことばかり覚えておりおる!


「僕も編成する時にあえて複雑そうな面子にしたクラスですからねぇ、陛下が心配するのも無理はないと思いますよ?」

「……ガリレオのクラスにギフト所持者を集めるのは決定されておったことじゃが、あれはいくらなんでも偏り過ぎではないか?」

 ギフト所持者のうち、平民上りが三人。貴族が一人。しかも、その貴族は貴族としての常識に疎いときておる。これは息子以外でただ一人ギフトを持っておらぬチャチマッキー侯爵の娘が可哀想じゃ。


「彼らのクラス担任、ルリスとは知らない中じゃないのでそれとなく聞いてみましたが王子は皆に慕われているそうですよ。よかったじゃないですか、王子の将来のためにと有望でかつ貴族としてのしがらみを持たないギフト所持者を集めた甲斐があったというものです」

「ふん、物は言いようじゃな」

 褒められて若干嬉しくなったが、あれは慕われてるのではなく舐められておるのだ。

 王族に対してそれだけ馴れ馴れしく接することができる平民も珍しい。良い友になってくれるといいが。


 これ以上は王権乱用の親バカと言われかねんのでやめねば。


「なるようになる。王族として大成することは難しいのだ。せめて自由に生きるための近道くらい示しても罰は当たらんじゃろう」

「……そうですね。僕もこの仕事に就いてからというもの、それまで興味のなかった人の成長が気になって仕方ありませんから」

「であろうな」

 そうでなければ飽き性のこやつが続けられるはずがない。


「さて、陛下。私めはこれにてお暇致します」

「ああ、さらばじゃ」

「さ~て、僕も仕事をしつつ、急ピッチで直しますかね!」

「むっ? そうか?」

 では余も仕事に戻らねばならぬのぅ。面倒じゃ。いっそのこと、こやつに余の人形も作ってもらうか?

 入学式の裏側でした。

 本編からは少し先の話ですね。結局はみんな秘密を抱えているみたいな感じです。 ブヒッ!

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