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金命の豚  作者: あなぐらグラム
【貯金~始める編】
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『3歳児』一流両替商へ ※通貨単位

 サブタイトルにあるようにこの世界の通貨単位を載せてます。

「ありあとごじゃいまちた!」

 やぁ、舌っ足らずな発音で失礼。

 元『ぶたさん貯金箱』こと、僕。リムニルだよ。

 今は3歳になって赤ん坊は卒業さ!


「おとーさん! できたよっ!」

 僕は年頃の子どもらしく、アドニルに成果を報告する。

「お~! さすがはリムニルだな! これでお客さんも大喜び間違いなしだ!」

「えへへっ!」

 どうにも身体に精神が引っ張られているのか、褒められると嬉しくなってしまうのが最近の悩みさ。


 さて、僕がギフトを授かっていることが発覚してからというもの、初めのうちは力を使いこなすことができなかった。

 それというのも赤ん坊の身体では体力や精神力的にきつかったからだ。

 そのことに気付くまでは使っては気絶するように寝入ることを繰り返していたが、もうそんな心配無用さっ!

 今となっては僕はこのスキル『貯金』を立派に使いこなしている。


 ――チリン。

「いらっしゃいませ!」

 おっ、そんなことを言っているうちにまたお客さんが来たようだ。

「いらったいまてっ!!」

 アドニルに負けじと大きな声でお客さんを迎えると、ニコニコと恰幅の良いおじさんがカウンターに重そうな巾着袋を置いた。


「やあ、リムニル。今回も頼めるかな?」

「あいっ!」

 このお客さんは僕の上客だ。

 僕は置かれた巾着袋の中身を落とさないように慎重に運び、口紐を緩めた。

(ごたいめ~ん!)

 巾着の中にはこれでもかと様々な硬貨が入っていた。

 なんだかんだでこの時間は至福だよ。


◇◆◇◆◇


 さて、ここでこの世界の通貨の説明をしておこう。

 この世界の通貨単位はルピヨン。

 1ルピヨン=石貨1枚、50ルピヨン=鉄貨1枚、100ルピヨン=銅貨1枚、1000ルピヨン=銀貨1枚、1万ルピヨン=金貨1枚。そして、100万ルピヨンで白金貨1枚となっている。

 基本的に原材料の高い硬貨はそれに見合った価値となっている。

 ちなみに赤ん坊の時、アドニルが僕に渡した巾着には1000ルピヨン分の石貨や鉄貨が入っていた。


《スキル『貯金』を発動します。新規お預かり金額は1万324ルピヨンです。現在の貯金額は1万1741ルピヨンです》


(…ふむ。1万324ルピヨンだな)

 僕は預かった金額を正確に記憶し、空っぽになった巾着の上に手を翳す。

(それじゃあ、1万324ルピヨンを引き出すよ!)


《かしこまりました。1万324ルピヨン引き出します》


 とまあ、ここまでは初めて使った時と同じ。

 だが、あれから3年。僕は新たなステージに立っている!


《――1万324ルピヨンを両替しますか?》


 そう! 何を隠そう両替機能が追加されたのだ!

 どういう原理かは不明だが、一度『貯金』したお金は入れたままか両替して取り出すことが可能になった。


「あいっ! できまちた」

 先程は重かった巾着も今は金貨1枚と銅貨3枚、それに石貨が24枚だけ。

 これぐらいならば今の僕でも十分持てるというものだよ!


「おぉっ! いつもすまないね~」

 このおじさんは行商人で、旅先で稼いだお金を両替するためにたびたび寄ってくれる。

 一応、無料でというわけではなく、アドニルの店で何か買ったり、僕にお駄賃をくれるのだ。


 そう。僕は今、両替商として3歳ながら稼いでいる!


「――それじゃあ、今回の御代10ルピヨンね」

「ありあとごじゃいまちたっ!」

 僕は受け取ったお金を大事に握り緊め、すぐさまスキルで収納する。

(ふぅ~。これで取られる心配はないぜっ!)


◇◆◇◆◇


「あっ! おじさん、いらっしゃい!」

 両替も終わり、アドニルと話しているおじさんのもとにとてとてと小さな女の子が姿を現した。

「いらっしゃいませ」

 その後ろには母、エルの姿もある。


「これはこれは、エルさんとリスティちゃん。ご無沙汰しております」

 リスティというのはもうすぐ5歳になる僕の姉だ。

「リム~。疲れたよ~」

 リスティはおじさんを無視して、僕に抱き着いてくる。

 おじさんは気にしていないようだが、エルは「あらあら」と言いつつも含みのある笑みを浮かべている。

(これはあとでお説教コースだな。……合掌)

 背筋にゾッと寒気が走ったので、リスティのために祈っておこう。


「それにしても、お二人とも変わった衣装ですな。…それも、ルディくんが?」

「ええ。あの子の発案です」

 話を振られたアドニルは自慢げに返す。

「ほほぅ…。あの子のセンスには脱帽モノですな~」

 おじさんは締まりのない顔をして、二人――主にエルへ視線を送る。

「……ですけど、ちょっと派手すぎやしませんかね?」

 エルは見られるのが恥ずかしいのか大きく開いた胸元を隠すようにするが、布が少ないのでそうすることで今度は太ももが強調されている。


 ルディというのは僕の7歳になる兄。

 実は、僕が両替商を始めたことでリスティとルディも店を手伝うようになったのだ。

 リスティは母と一緒に看板娘として店先に立ち、ルディはそういうことが苦手な分、別のことで貢献している。

 それが、衣装だったり内装だったりだ。


 今までそこら辺を歩いている人たちと変わらないような恰好で接客をしていたが、ルディはそれでは駄目だと興奮した様子で新たなデザインを考案した。

 その結果、エルは胸元を強調した露出度の高いワンピースタイプのドレス。リスティは年相応のひらひらフリルの着いたデザインのものを着て接客している。


 ある意味、時代を先取りしたような形にはなっているが、とても7歳が考えたとは思えないほどおっさん臭い。

 どうもルディは少し変なところがあるようなのだ。

 まあ、このおかげで旅人の集客率が上がり、儲けが増えているのだから文句は言うまい。

 今のところ、僕に実害もないようだしね。


◇◆◇◆◇


 我が家は父アドニル、母がエル。長男がルディで長女がリスティ。そして最後にこの僕、リムニルの5人家族。


 リスティは兄弟の仲で一番エルに似ている。

 なんというかあざといのだ。

 彼女はあの年ですでに自分の武器が何なのかを理解しているらしく、よくおねだりをしたり大人に取り入っている。

 4歳にして女の武器を使いこなす幼女。

 傍から見ているとかなり異様な存在だ。

 きっと彼女も将来的には母親と同じように、ほほえみだけで男を震え上がらせる存在になるだろう。

 今のうちに、ごまをすっておかねば!


 一方、ルディは両親のどちらにも似ていない。

 アドニルのように奔放なわけでもなく、エルのようにのほほんとしているわけでもない。

 常に何かを考えているようだが、何も考えていない様にも見える。

 ……まあ、簡単に言えばよくわからない存在だ。

 ただ、女性には並々ならぬ興味があるらしく、エルにとっては頭痛の種らしい。


『やっぱり、女性が高い所の物を取ろうとするときの、脇から胸までのラインは最高だよ!』

『…ルディ、お前……!』

 以前、夜中に目を覚ました時にアドニルに対して興奮気味に女性の魅力を説いていた場面は息子の秘めたる性癖さいのうに慄く父の姿と共に記憶に新しい。

 ……できるだけ、早く消し去りたい記憶だ。


 最後に僕。

 まあ、僕は元々精神は成熟しているから似るなんてことはないんだろうけど、しいて言うならあくまでしいて言うならだけど……アドニルに似ているらしい。


「リムニルは本当にお金が好きなのね~」

 店のお釣りを両替していた時、エルがそんなことを言ったことがあった。

 たしかに僕はお金が好きだ。見ていても触っていても一向に飽きない。

「だなっ! さすがは僕の息子だ! このお金への情熱は僕譲りに違いないっ!」

 いえ、前世の影響です……なんてことは言えない。

「将来はお父さんのような立派な人間になるんだぞっ!」

「……あぃ」


 この時、何と答えるべきだったのかは今でもわからない。

 ただ、これほどまでに言われて嬉しくない言葉があるのかと思い、同時に少しお金への接し方を考えるようにした。

(まさか僕のお金への想いを変えさせるとは…!)

 アドニルは意外とおそろしい男のようだ。

 基本的に登場人物の名前は神話などから取っています。と言っても、特に意味があるわけでもありませんし、そのまま使っているわけでもないので元ネタはわからないと思いますが…。

 一応言っておきますが、ルディくんは転生者ではありません。ただちょっとだけおませな子どもというだけです!

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