『新生活③』忘れていたけど新入生です
大変長らくお待たせしました。
別作品の息抜きですがお読みください。学生ものの定番、入学式です!
「それでは行きますよ~? 忘れ物はないですか?」
「ないです」
「ねえな!」
「ないわね」
「ありませんわ!!」
「あっ、あぅ、ありません……」
「ハッハッハ! オレが忘れ物をするわけが……」
「ガリレオ様、靴を履き忘れておりますよ?」
「「「…………」」」
「う、うるさいわいっ!」
皆から憐みの視線を向けられ、ガッカリレオはやっぱりガッカリレオだった。
「そ、それじゃあ! 行きますね!」
「「いってらっしゃいませ」」
教師ルリスの引率の下、二人の従者に見送られ僕らは寮を後にする。
さすがについては今から行くところにはついてくるのは許されないらしい。
えっ? どこに行くのかって?
それは――。
「それにしても、入学式なんて面倒臭いことをやるんだな~」
「ほんっと。どうせほとんど寮で生活するんだからそんなことする必要があるとは思えないもんね~」
とまあ、不満たらたらの二人が言うように入学式です。
今は、会場である王立学院の本校舎――設立時の本来の学び舎に向かっているところ。
先頭を歩くルリスさん……寮以外では先生って呼んだ方がいいのかな? なんとなくガッカリレオと同じ『教師ルリス』って呼び方はしたくないんだけど。
その時に成ったら考えよう!
ということでルリスさんはまるで旅行のガイドのように僕たちを案内していく。
その後ろ姿は少し浮かれているようだ。
もしかしたら僕やヘンウェン以外が問題児ばかりで心労が溜まっているのかもしれない。
ただ、ルリスさんには悪いけど僕も面倒です。
そんなことをしている暇があるなら少しでも授業を進めたり、スキルの限界を上げたいよ。
それに、なんだか面倒なことに巻き込まれそうな気がするんだよね……。
◇◆◇◆◇
「「「おぉ~おっきい……!」」」
思っていた以上に立派な校舎に平民出身者の三人がビックリする。
ちなみに、ヘンウェンもこういうのを見るのは慣れていないのか驚いているが、驚きすぎて声が出ないようだ。
「ガッハッハ! 凄かろう凄かろう! お前たちにもやっと凄さが伝わったか!!」
「……恥ずかしいですわ」
何故か自分のことのように威張り散らすガリレオ。
そんな僕たちが恥ずかしいのか一人だけ少し離れているロール。若干、僕たちよりなのは同じ高位な人間であるはずのガリレオの方が恥ずかしいからかな?
……この話題でからかうと面倒臭そうだからやめておこう。
「ほら、見惚れててもしょうがないから早く入ろうよ」
苦笑しているルリスさんに代わって常識人代表の僕がしっかりしなければ!
自分のことは棚上げしてさっさと向かって行く。
「待て、お前たち!!」
……と、思ったらなんだよ?
見るとそこには明らかに偉そうに踏ん反り返っている子どもたちがいた。
いや、まあ僕らも子どもだからおそらく同い年ぐらい。つまりは同級生ということになる人たちだろうと推測しておく。
「入るのは我々のような高位貴族だけでなるクラスからと決まっている! 平民混じりは後から入って来い!」
その中でも一際丸く、ボールのような体形の男子が宣言すると先頭にいた僕を押し退ける。
「何しやがだんだっ!!」
あっ、これ僕じゃないよ?
僕はこんな乱暴な口調じゃないから。
「き、貴様らこそ何をするっ!? この御方をニクジューン侯爵家の方と知っての狼藉かっ!!」
そう言って腹を押さえている肉汁もとい肉団子じゃなくてニクジューン侯爵とやらの息子へ駆け寄る集団はキッと僕を睨みつけていた。
そう、僕だけを。
「いきなり難癖を付けて来たくせに何を言ってるのさ? 邪魔だからさっさと退いたら?」
「「「……」」」
僕が言い返すと何故か後ろからお前が言うな的な視線を感じるんだけど?
おかしいな後ろには味方しかいないはずなのに……。
あと、ルリスさんあちゃ~って額押さえてるの見えてますからね?
「き、貴様っ……! 平民の分際で高位貴族に手を上げて許されると思うなよっ!」
はて? ナンノコトヤラ?
僕はでぷっとしたお腹を押さえつけているボタンが外れそうだからきっちりと留めてあげただけじゃないか。まあ、そのせいでお腹に食い込んでいるかもしれないけど、好意に敵意で返される筋合いはないよ。
あっ、もしかしてこの人たちからは僕が何をしたか見えてなかったのかも。
だとしたら早くこの肉団子が説明をしてくれないと困るなぁ……。
それにしても、この人たちの担任はどこにいるんだろう?
◇◆◇◆◇
「も、申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!」
うっわ……、ガッカリ王子相手にスライディング土下座とか。引くわ~。
どうやら彼らの担任らしき痩せた男の人が悠々と歩いて来て、蹲る生徒と対立する僕たちを見つけた時は気味の悪い笑みを浮かべていたのに、こちらの面子にガリレオを見つけると顔色が青褪めて何も言う前に土下座をし始めたのだ。
それには彼の生徒たちもギョッとしている。
「せ、先生っ!?」
「何を……! おやめくださいっ!」
「そのような者たちに頭を下げるなど――」
あんなのでもある程度信頼関係は築けているらしい。
口々に止めようとする中、『そのような者たち』発言をした瞬間その生徒頭をスパァアンと叩くと怒鳴り散らした。
「チミたちぃ!! 何を言っているだ!! こちらにおわす御方は、王子であるガリレオ・ガウマンディ様であるぞ!! 頭が高いんじゃあああああ!!」
もうね、怒鳴られた生徒たちもぽかーんですよ。
あんぐりと口を開けては、まるで金魚が――話は変わるけど金魚って名前は素敵だよね?
金魚がエサを求めるようにパクパクさせている。
「「「申し訳ありませんでした!!」」」
そして、痛みに悶える肉団子を押し退けて我先にと教師を上回るほどに綺麗な土下座を披露して見せた。
彼らはより高度なジャンピング土下座だった。
そのくせ、埃も立てない見事さは賞賛に値すると思う。
内心で10.0の札を上げておこう。
◇◆◇◆◇
「「「……はぁ」」」
誰からともなく漏れ出たため息。一番大きかったのはルリスさんなのは言うまでもない。
「まったく。入学式に出るだけでどれだけ騒動を起こせば気が済むのですか……」
「本当だよ。仮にも王族の一員ならしっかりしてほしいよ!」
「何を言うっ! 最初に騒動を起こしたのは貴様だろうが!!」
なんて失礼なっ!
どう見てもあの騒動はガッカリ王子がいなければ起きなかったはずだ。
あの後、どれだけ言っても土下座を止めようとしなかったので最終的には王権を振りかざすフリをしたガリレオが脅すことでようやく解決した。
その際、間を開けてから入ってくるように伝えてあるのであの分では最後に入ってくることになるだろう。
終始放置されていた肉団子を忘れて来ないといいけど。
「とりあえず二人ともこれ以上の騒動は起こさないでくださいね?」
「「こいつが起こさなければ問題ない(ですよ)」」
互いに指差すとまた険悪になりかける。
「い・い・で・す・ねっ!!」
ただそれよりも早くルリスさんの愛のムチが襲いかかり、僕らは声を揃えて「はぃ」と従うしかなかった。
その背後では巻き込まれまいとしていた四人が心底疲れた表情でやり取りを見つめているのだった。
……できれば助けてほしい。
絡まれたら大人しくしていないグループのリムニルたち。
リムニルは今回のように言い逃れができる程度に武力を伴った反撃(田舎ではこれぐらい当たり前)
ヘラクは力任せ(本人的にはかなり加減)、カミアはリムニル寄りでロールは高圧的に言い負かそうとして負けることが多い。
ガッカリレオは予想通りがっかりな展開に。
ヘンウェンの場合はおどおどして泣いて相手を悪者にするタイプです。
こう考えると一番タチが悪いのはヘンウェンかもしれませんね。
それじゃあ、次はいよいよ入学式本番です! できたら次の木曜日に更新したいのでそれまでお待ちをっ! ブヒッ!




