『新生活②』天井知らず
「……他の皆の限界ってどうなってるの?」
不貞腐れたような声が出たのは自分でもわかってる。
でも、このまま一人敗けはなにか釈然としない! こうなったら皆巻き込んでやる!
「この中でギフトを持っているのはお前を除けば3人か……。聞いておいた方がいいかもしれんな」
ガッカリ王子のくせに何か考えるような素振りを見せるのは一応王子だからか?
「えぇ~面倒くせえよ!」
「アタシも~。そんなこといちいち言ってらんないし」
案の定ヘラクとカミアが抗議の声を上げる。
「あっれぇ~? そんなこと言って、本当は知らないから教えられないだけなんじゃないの~?」
だけど、その程度を予想していない僕じゃない!
多少、いやそこそこに悪い笑みを浮かべながら挑発するようにしてやればこの二人ならすぐに乗って来るだろう。
「「そんなことない!! こいつと一緒にするな!!」」
ほらね? 思った通りだ。
ただ、何故か二人はお互いに指を差しあっている。
昨日の今日なのにもうそんなに把握してるの?
「ああん? お前、何言ってやがんだ!! オレ様がお前に負けるってのか!?」
「あんたこそ何言ってんの! アタシはあんたよりも賢いけど、あんたは絶対にアタシよりも頭が悪いそんなあんたと一緒にされたくないって言ってんの!!」
違った。
どうやら性格的な問題で認めたくなかったようだ……。
「――あの、私は本当にわからないんですけど?」
そんな中、ヘンウェンが静かに声を上げるがヒートアップをしている二人の所為でその声は届かない。
……それにしてもヘンウェンって女子たちの中で唯一まともだよね。
カミアはちょっと大雑把だし、ロールはプライド高くて疲れそうだし。……女子なのでルリス先生とメイドさんは除いておこう。
「あ、あのどうかしましたか?」
いかんじっと見ていたら警戒させてしまった!
「いやぁ……ヘンウェンを見てると癒されるって思ってただけだよ?」
関係を悪化させると癒しがなくなるので無難に真実を告げて終わりにしよう。
……あれ? 少し顔赤くない?
◇◆◇◆◇
「……失礼ですが、おそらくヘンウェンさんには限界が無いと思いますよ」
僕たちのもとにドルーマンさんがやって来た。
「限界がないってそんなことあるんですか?」
つい先程、限界を知ったばかりなのですけど?
「珍しいですが、ないこともないのです。……いえ、ないという言い方は不適切かもしれませんが……」
この人にしては歯切れが悪い言い方だ。
「……? どうしたんですか?」
ここは子どもっぽさを装いながら正直に話してもらおう。
「…………リムニル君、その話し方はやめた方がいい。ある程度のもんだ――知恵の回る人物と接している人には通じないと思いますから」
う~ん……、なぜか子どもっぽさを装うのは不評だなあ。
「わかりました。では、教えてください」
「ギフトには大きく分けて2種類存在します。一つは任意で発動するタイプ」
僕はこっちだな。
「……もう一つは?」
「無意識に発動するタイプです」
「そ、それっ! 私かも、です……」
「そうですね。私もそう思います」
「それでその二つのタイプは何が違うですか?」
「簡単な話ですよ? つまりは、自分の意志で力を使えるかどうかです」
「……?」
言っていることは簡単なのだが、つまりはどういうことだろうか?
「実は先程限界がないと申したのも説明が難しいからなのですが、実は限界がないタイプのギフトはギフトとしての定義が難しいのです」
「ギフトの定義っていうとどんなのでしたっけ?」
「神に愛された証や、英雄になるための道標ですね」
そこから外れる……わかりにくいな。
「ようするに証であるのに、それを自分の意志で使えないのはどういうことなのだろう? という疑問が広がっているんですよ。……なので、不思議な力で分類も出来ないからギフトとしてカテゴリー分けをしているというわけです」
「なるほど。それならわかりやすいですね」
実にわかりやすい。
地球では理解できないことなどを神の御業や奇跡と表現していた。実際、前世の僕だって付喪神という証明できない存在だったわけだし。
「ある程度研究が進んだ今でもギフト分類できないモノとして扱われるわけですが、そうなると限界はあるのか? そもそも普通のギフトと同じように判断してもよいのか? という疑問に行き着きます」
「その結果が、限界はないってことですか?」
「正確には限界はわからない、です」
「存在しないことと不明なことには明確に差があります。つまりは探しようがないか、探そうと思えば探せるかですね」
「……ヘンウェンのギフトは『災厄』。奇跡の代価としてそれに応じた試練を与える……つまりは奇跡の規模や対象とされる人数が不明というところですか」
「そうなります」
「そこで質問です」
「はいっ!?」
「……落ち着いてください。簡単なモノですし、答えられなくても何もありませんから」
やはり冷遇されていた時代の恐怖が身体に染み込んでいるのかヘンウェンは過剰な反応を示すときがある。それも大人に対しての方が顕著な気がする。
「今までにあなたのギフトの影響を受けたと思える人はどれぐらいいましたか?」
「……わかりません。おそらく母、それに父でしょうか」
小さく首を振ったヘンウェンはそれでも必死に思い出すようにして候補者を絞った。
「……お母様はわかりますけど、父君のですか?」
これはちょっと意外だった。
つまり、ヘンウェンの父親も何がしかの奇跡を得たということだ。
それなのに、それを引き起こした娘を監禁していたのか。知らなかったとはいえ、やはり罪深い。
「この間、リムニル君の話を聞いて思ったんです。もしも、私の力が本当に奇跡を与えるなら……」
「……そう言えば、数年前ですが、侯爵の管轄する土地で大きな災害があったものの奇跡的に死傷者がいなかったことがありましたね」
「そうです。その日は、父が珍しく私の様子を見に来ていた日だったんです」
辛い中でも父親が会いに来てくれたのがよほど嬉しかったんでしょうね。そんなことを覚えているなんて。
「それからしばらく作物の育ちが悪くて食糧難になったことが対価だったんじゃないかと思います。……私も半月ほど食事が極端に貧しくなったので覚えてるんです」
違った。
ただ自分の辛い経験から記憶していただけのようだ。
こうなってくると父親というのにはいつかガツンと言ってやらないといけませんね。
「その人数、しかも結構な期間が開いているので断言は出来ませんが、おそらく間違いないでしょう。……ちなみにその手のギフトは数えるほどしか前例がありませんが、国の転換期に現れることが多かったそうです。そのことからも試練を与える者と呼ばれることもあったとか」
「まあなんにせよ、すぐに確かめられないのなら徐々に確かめていけばいいんですよ」
うん知らないことは恥じゃない。
「これから一緒に頑張っていきましょう!」
「……はい! よろしくお願いします!」
ここにギフト限界を知らない同盟の発足を宣言します!
「……あいつ、ここぞとばかりに同類を手に入れたようだな」
「ここは同志の方がいいのでは? それに追い込んだのはガリレオ様ですよ?」
強かな一面に巻き込まれるのを嫌っていたガリレオもこちらの様子を窺っていたようだ。
まったく。そんな暇があるのならまだ争ってる二人を止められばいいのに。
ついでに少し殴られろ!
人の厚意を見抜けないようでは立派な王族とは言えないよ?
「――いい加減にしなさいな!!」
結局、ヘラクとカミアの争いはロールが爆発するまで続いていたのはおまけである。




