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萌える漢になるために  作者: 〆田 鯖男
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なんでこうなった?

 ぼくのラノベ挑戦。お付き合いお願いします。

   「ダメだタイトルすら決まんないわぁ」

 

 もう無理だゎ、5時間くらい机の上のパソコンの前にいるけどなんにも書けない。細い設定の近未来SF、嫁姑の痴話喧嘩、男同士のラブロマンス、なんでも書いて来たけど無理っぽい。


       『ライトノベルだけは』


 三カ月前、担当編集の星川さんから飲みの誘いが来た。もちろん了解した。場所はいつもの居酒屋、楽しい酒になると思ってた。


 「鮎彦先生、新作の進み具合はどうですか」

 

 「今回のは自信あるんスよ、内容は若い僧侶がロックンロールに目覚めて悩めるひと達を『仏教ロック』で救っていくって感じなんですけど、どうッスかねか」

  

 いつもだったら新作の原稿の話をすると喜んでアイデア出してくれたりなんかしてくれるのに、その日は違ったんだ。星川さんは唐突に真剣な顔である提案をして来た。

 

 「先生、ライトノベルに挑戦する気はありませんか」

  

 はぁ、オレがライトノベル、このオレが。頭が真っ白に本当になった。正直ライトノベルなんて読んだこもないオレが。あり得ねぇ。オレは重厚なストーリー、緻密な設定と繊細な人間関係の変化を死ぬ気でこだわって五年間書いて来た。やっとこの前連載を一本持てるようになったんだ。何言ってんだ急に。そんな思いでオレは少しだけ、星川さんに反抗したんだ。

 

 「そんな急に。オレは本格派の小説家として頑張って来てやっと軌道に乗り始めたのに。大体読者は望んでないよオレが書いたラノベなんて。」


 「今、書籍の売り上げの大半は、ライトノベルなんです。読者は望んでいない訳ない。先生は二十四歳でまだ若い。今がチャンスですよ」


 売れるから書くだなんて。何言ってんだ。殺すぞ。不貞腐れてラノベを悪く言った。


 「だってラノベってアレでしょ、ゲームとかアニメとかのオタクみたいなひと達が読むレベルの低いやつ

ですよね、それで可愛い女の子が表紙のアレでしょ。くだらないと思いますわぁ正直。オレはそういう路線じゃないんで。今のままで本当の文学がわかってる人達に向けて小説をかきたいんです。」

 

 「先生、今のラノベ読んだことありますか」


 「ないですけど」

 

 このときまではオレは余裕で星川さん話を聞けてた。オレの作家性を、オレの小説への思いを信じて頑張って売れてやる。そんな感じだった。


 その余裕から半笑いでこの話を終えようと思い、ビールを口にして星川さんに応えた。


 「大丈夫ですよ、今回の新作絶対売れる自信ありますから。まだ星川さんのところで連載貰ってるし。」


 星川さんが目線を下げた。


 「先生、その件なんですが7月でウチの連載の打ち切りが昨日決まりました」


 終わった。オレの初連載がたった四カ月で終わった。


 ショックで顔面蒼白のオレに星川が再度持ちかけて来た。


 「ライトノベルが売れるんです、レベルだって高い。確かに似た設定などは多いかもしれないですけど。先生が思うようなものじゃない。」


 「先生にはものをかく才能がお有りだ、それは私が保証します」


 テンションが少し回復。でもまだ声はでない。


「先生には、今の日本の流行を知って欲しいんです。ですからライトノベルに挑戦してみては貰えないでしょうか。ラノベの原稿が届き次第、上と話をつけて出版させていただきますから」


 全回復。そして調子よく星川さんに言ったんだ。あのとき断わればよかったのに。本が出せるならってそう思って言ったんだ。


 「わかりました、オレ、ラノベ書きます」


 これがラノベとの闘いの始まり。


 ちょっと後悔してるわぁ。


 

 

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