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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
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006  救いようのない男


 相手は村を襲った極悪人なので、しょっぱなから明は容赦しなかった。まずは右ストレートを奴の腹の中に放つ。なんとその一撃で奴はノックダウンしていた。あっけない終わりに疑問を思うかもしれないが、そもそも明の攻撃を受けて四肢を保っていられるのは一握りの人間だけだ。なので目の前の男のように腹を抱えて、片膝を着いているのは非常に珍しい。この男はそれなりの実力である証なのだろう。そうじゃなければ人間の形を保っていられる時点で奇跡に近い、明が手加減しない限り、普通の人間は木端微塵に吹き飛んでしまう。それぐらい明のパンチには馬力があるのだ。明は別に手加減した訳では無かった。そもそもエレナの両親を殺した男に手加減をする筈が無いのだから。すると、目の前の男は床に向けて血をぶちまけて再起不能になっていた。辛うじて会話は出来る様だがそれでもアバラの二三本は粉々になっているだろう。何度も言うが、この程度の傷で済んでいる時点で奇跡だった。


「……この俺がパンチ一回でノックアウトとかマジでありえねえよ」

「お前が何者か知らないが、これだけはハッキリと言える。下種野郎が」


 まさしく、目の前の男は下種野郎だった。下種の極みと言っても過言では無い。無抵抗の大人二人を殺してもノウノウと新村長の座に君臨しているのだから人としての価値も無い。この男には死をもって償ってもらおうと明は考えていた。それに悪党退治は慣れているので今更、悪人を殺すのに罪悪感など皆無だ。そんな気分が微塵でもあれば、組織の長に立つのは不可能だ。これまでに明は10年以上トップの座に君臨していた。その原動力はズバリ、悪人をこの世から全員葬り去る目標を立てていたからだ。この目標は明が生きている限りはずっと続くので、自分が死ぬまで鍛練なり努力を続けられる。こうした長期に渡っての目標を立てられれば儲けものだ。明のようにミドルエイジの年齢でもそれなりに戦えるのだから。


「てめえだけは許せねえ。俺のプライドに傷をつけやがって!」


 すると、目の前の男は隠し持っていたナイフを明の喉元を突いてきた。しかし、ナイフが喉に当たった瞬間、ナイフは音を立てて砕け散る。その様子を間近で見ていた目の前の男はとたんにワナワナと震え始めて明に殴り掛かる。もはや半狂乱と化しているのだ。しかし、その拳も明には通らない。どんなに殴られても平然とそこに立ち続けていた。そして明は殴られながら口を開いて言葉を出していた。


「最後に訊かせてもらう。お前の人生哲学は何だ?」

「そんなもの決まってらあ。人殺しだよ、人殺しししししぃぃぃぃぃぃイッヤハハァー!!」


 もはや救いようがない。そう思った明は男の頭に向かって鉄拳を振り下ろした。その1秒後、目の前には首を失くした男の亡骸が無残にも転がっていた。



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