039 暑い日には体を動かせ
ロン毛の魅力には勝てない。こうしてビーチでキャッキャしている筋肉系女子を見ていると、どうしても彼氏と思しきチャラ男にも目がいってしまうからだ。背骨まで伸びきった髪の毛を見ていると、自分と比べてしまうのだ。今でこそ、明の髪は森林破壊の限りを尽くしているが、昔はそうじゃなかった。木々が生い茂って小鳥が歌っていたのだ。誰にだってフサフサ時代はある。だが、それを継続するのがどれだけ難しいのか現代人は知っているのだろうか。若い時から髪をいじって茶髪や金髪に染めている人間を見ていると、ふと疑問に思ってしまう。明は職業柄、様々なタイプの人間と切羽琢磨して仕事をしていた。中には紫色の髪や銀髪アフロの青年淑女がいたのだから恐ろしい。いつだって明の毛根量は下から数える方が早かったのだ。昔は流れるような黒い髪をなびかせて、女の子を夢中にさせたものだ。それなのに、ミドルエイジに突入してからは髪の毛という概念が消え去った。こうしてチャラ男を見ると、どうしても自分の髪の毛と比べてしまうのだ。そんな自分に歯がゆさを覚えながらも、明は前を見据えていた。
「せっかくスポーツが盛んな村に来たんだ。俺達も運動しなければなるまい」
「そうっすね。あたしも何だか身体を動かしたくなりました!」
それもその筈である。炎天下に連れられてテンションが下がる人間など珍しい。クーラーの下にいるよりも真夏の日差しを全身に浴びながら、身体を動かす方が気持ちいに決まっている。人工の風に当たってのんびりするなど明の辞書には無いのだ。常に何時だって自分を鍛えるための努力は惜しまない。明はそういう人間だ。人間だからこそ精神力が弱ってしまい、努力を放棄する瞬間だってある。しかし、そうなってしまった場合も「また一からやるか」と自分に言い聞かせて努力を再開する。人間、何が褒められる要因になるかと言えば努力している時だ。時間を費やして自分を鍛えている人間には誰も貶そうとはしない。それぐらい、努力とは人々に讃えられるための手っ取りバやい方法なのだ。だから、社会に出たばかりの若者は真面目に生きればいい。年寄りは「たまにははっちゃけてもええんやで」と謎の微笑みをしてくるが、不真面目に生きるなどあってはならない。仕事と日常生活を両立するためには仕事を真面目にこなして、順風満帆の人生にするのがベストである。と、明は感じていた。
「それでこそ若者だ。若い内は身体を動かして、とことん疲れてしまえばいい」
明はそう言いながら、近くの売店に向かっていた。こういう現地では海を泳ぐための道具一式が売っていると相場が決まっているのだ。どう見ても、この村は旅行客から金を摂取して金儲けをしている感じだ。




