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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
35/40

035  前だけを見る

 たとえ後ろから不死身の老婆が付いてきているとしても、自分達は前に向かって進まなければいけない。そうしないと時間の無駄であるからだ。時間を無駄に費やしては人生が後ろのめりになってしまう。そう言って自分の子供達にも口を酸っぱく言い聞かせてきた。その考え方は今も昔も変わらない。目標に向かって突き進むのは男としてではなく人間としての感情だ。今は莫大に思える夢かもしれないが、こうして一歩ずつ一歩ずつ前に進めばきっと夢は叶う。そう信じて玖雅明は子供の頃から努力を続けてきた。人から「一円の価値にもならん!」と言われて馬鹿にされてきた事を続けている内に、使いきれない財力と世界中の人々から英雄と呼ばれる知名度を手にした。ようは自分の夢を捨てきれずに必死に足掻いてきた結果なのだ。自分の考え方を否定する者には「はいはい」と適当に返事をして、逆に自分のやり方に称賛する相手に「ああそうですか」と思っていればいい。どっちの意見も真に受けてはいけないのだ。批判されようが褒められようがモチベーションには揺るぎの無い状態を作り上げる。そうしないと無視されて誰からも相手にされない時が一番辛い。自分の頑張りだけをモチベーションにすると、どんな物事にも対応可能な屈強な精神力を習得出来る。明はそう信じて今まで努力を続けてきた。これからもきっとそうだろう。間違いはない。だからこそ明は、エレナに向かって言い聞かせていた。後ろの老婆は無視しろと。


「奴は俺達にとって何の障害もならない。確かに老害らしく意地悪をしてくるだろうが、その意地悪に腹を立てても自分のためにはならない。奴と相対する瞬間は心を無の境地にしてしまえばいい。そうすれば無駄なストレスを感じずにいられるからな」


 そう言って明とエレナは歩き続けていた。次なる町に向かって。明には箱舟を修復して元いた世界に戻る夢があった。その夢を叶えるためには箱舟を修復するための機材、それに加えてとある原子が必要だ。その原子がこの世界にあるかどうかは不明だが、とにかく探すしかない。元いた世界では今頃混乱が起きているだろうから。何としてでも箱舟を完璧な状態にして元いた世界に帰還する。その崇気なる目標があれば、障害など無い。目の前に壁があれば全て乗り越えてきたのだ。今の状況を逆境と呼ぶのは戦いで亡くなっていった仲間たちに申し訳がない。生きているだけで幸せだと思っていれば、どんなストレスや不安にも対処可能なのだ。


「そうですね。それじゃ、私も気にしないようにします」


 エレナも前に向かって歩き始めた。そう、形はどうあれ、あの老婆が後ろを振り向いてはならないのを教えてくれたのだ。そういう意味では感謝しなければいけない。



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