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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
28/40

028  余計な詮索


 しかし、彼女は正攻法だと明には勝てないと言ってその場を後にしていた。その逃げ足はまるで日本の忍者そのものだった。アメリカ人が好きそうな純粋な忍者である。決して某ラーメンに出てくるような具材では無い。派手さではないが、本物の暗殺者のような感じを抱いていた。そして、彼女は何処からの刺客だと明は終始考え込んでいた。明の名前を知っているのはこの世界で二人しかいない。隣で怯えているエレナと、もう一人は一緒に異世界転移をしたラファエル=ランドクイストという男だ。これまでの異世界転移は彼が元凶と言っても過言では無いので、奴が送り込んだ暗殺者と考えるのが妥当か。しかし彼は暗殺者を雇うような性格では無い。暗殺者を雇うぐらいなら自分が出向くような正直な心も持っている。それに彼には明を殺そうとする動機が無い。となると、一体誰が仕込んだのかも分からなくなる。明はしばらく途方に暮れていたが、ひとまず店内から出る事にした。


「一体誰が何ために送り込んだ」


 店内から出ても疑問はつきなかった。なんせ明の名前を知っているのは、この世界では数少ない。元いた世界では有名な戦士だったが、異世界となると知名度はリセットさせる。だから一発逆転のために異世界転移をする人間も少なくはない。しかしほとんどの人間が元いた世界に帰りたいと言い出すのだ。結局、人間はホームシックには耐えられない。どんなに苦しい生活だとしても元の世界が恋しくなるのだ。なので最近の異世界転移物の創作物にはリアリティを感じないと明は否定的な意見を持っていた。しかし、今はそんな事はどうでもいい。肝心なのは暗殺者の正体を探る事である。


「もしかして……奴等の仕業?」


 エレナは心配そうな顔を浮かべていたので、明は優しく宥めていた。奴等の仕業ではないと。明は自分の名前を敵対組織に名乗る程の馬鹿ではない。そんなへまはしていないので、その線は消えた。考えれば考えるほど、迷宮に入り込む。明はそう思ったので一旦考えを中断していた。そして近くのベンチに腰かけると大きく両手を広げて深呼吸したのだ。


「まあいい。いくら考えてもラチが明かないし考えるだけ無駄だ。これ以上老け込みたくないからな。無駄な詮索は止める事にしよう」


 明はそう言いながら、両肩をほぐしていた。ずっと緊張状態を維持していたので体中が悲鳴を上げている。さすがに48歳を超えると体も自由がきかなくなってくる。風呂に入った時は特に危険だ。腰と肩に最新の注意をせざる終えない。風呂場はリラックス効果があると言われているが、それは若干の運動と湯船に浸かっているからだ。



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