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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
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026  食事の誘い


 老婆を討伐した明は、村に戻っていた。右手には財布が握られていて、先程の女性にそれを返していた。すると女性は美人の顔を赤く染めて、笑顔でお礼を言ってきた。長年、女性との交流は無縁だっただけに明は思春期男子のように照れ笑いをしていた。美人に褒められて鼻筋を伸ばしている明だったが、その隣ではエレナがムッとした表情をしているではないか。彼女も女性らしく自分の男が取られるかもしれないと、ジェラシーを感じているのかもしれない。だが、明に言わせてみればエレナはまだ15歳の少女だ。自分の息子と同じ年齢の子供に、好意を抱くなどありえない。それは人間として感じてはいけない感情だ。それならば、むしろ目の前の美しい女性に好意を抱く方が自然である。既に、妻を亡くしている身なので再婚相手は欲しいとは思っていた。いつまでも未練を感じるのは妻にも悪い。それに亡くなる間際、妻から「子供のためにも再婚して」と呟かれた。人間として素直な気持ちがあれば分かるが、ボソリと呟いた言葉には伝えたい真実が詰まっている。それに明はその言葉を胸の中にしまい込んで、ずっと生きていた。それなりに葛藤をした上での決断なので、罪悪感を感じる必要も無い。分かっているが、精神は思い通りにいかない。どうしても妻の顔が思い浮かんで、女性と交流するのを否定的になってしまう。それが彼女の意志だと言うのに、認められない自分にも歯がゆくなる。そうして自問自答を続けていると、不意に女性の方から話し掛けてきた。


「どうですか。お礼にお食事だけでも御馳走させて下さい」


 笑顔を見せながら、彼女は誘ってきた。相変わらずの美しい顔立ちに明は引き込まれそうになる。元いた世界にも美少女は存在していたが、皆それなりの戦闘力を持っていたので恋愛対象とは思えなかった。むしろ仕事仲間としての気持ちが強かったので、女性としては見られなかった。しかし、目の前で笑っている彼女は戦闘力も無ければ、仕事仲間でも無い。完全に赤の他人。人間には親しい間柄の人間には性的魅力を感じないと言われている。親や子供に欲情しないのもそれが理由だ。人間は縁のゆかりも無い赤の他人に、好意を抱く。相手の汚い部分を知らないから純粋な恋が出来るのだ。故に明は、既に目の色が変わっていて好色を感じていた。


「ありがとうございます。では、喜んで」


 そうだと言うのだった。ご飯を御馳走になりたいと。男ならば分かると思うが、美人の誘いを断るという選択肢は無い。



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