024 身勝手な犯行動機
常日頃から感覚を研ぎ澄ませていると、悪人の共通点がじょじょに判明していく。明が思う悪人の共通点とはズバリ、常日頃から笑顔の人間だ。元から笑顔が絶えない人間もいるが、中には短気の人間も笑顔を使っている。相手を騙すために巧みなコミュニケーション能力を使い、金や財宝などをかっぱろうとする悪質な種族だ。そんな人間を何度も相手してきたので、悪人の扱いにはなれている。かつて巨大防衛組織のトップに君臨していただけに、派閥や社会の荒波に飲みこまれていた。その中で人間の卑怯な内面を知り、完全なる味方は何処にもいないと気付かされた。信用出来るのはあくまでも自分の直観だけだと。それこそ自分の考え方さえも信用出来ない。むしろ、ひらめきの感覚に頼った方が物後は上手くいく。なので明は目の前の女老害に対しても自分の直観に頼っていた。自分の直観では『この女は可哀想』だと電波を発している。何故か分からないが、悪人に対して同情の念を抱いているのだ。
その一瞬が躊躇として現れたのか、明は右手の握力を緩めてしまった。すると、女老害は好機とばかりに拘束からクグリ抜け、立ち上がっていた。口から唾をペイと吐き地面に叩きつけている。まさに老害の象徴と思しき態度ではあるが、依然として同情は拭いきれない。そもそも。一度再起不能にした相手と短時間を空けて再戦するのが初めてだ。その初めての体感が自分の中に油断の種を植え付けているのかもしれない。そう考えながら、明は右拳を前に出して小刻みに体を揺らしながらファイティングポーズに移行していた。この女老害は何をするのか分からないから用心するに越したことはない。すると、目の前の老婆はしわくちゃな顔を更にしわだらけにして嫌らしい表情を浮かべていた。あそこまで怨念に満ちた顔は最近では彼女が一番だ。
「あんた、なにするのよ。あたしの邪魔ばっかりしていい加減にせい! あたしが普通に生活するのがそんなに気に喰わないの!」
「それは此方の台詞だ。盗み、当たり屋、暴力、人に迷惑をかける行為ばかりではないか。そんな生活を普通だとは言えないだろう。むしろ常識から逸脱している」
明がそう言うと、女老害は更にヒートアップして喋り始めた。顔面に血管を浮かばせて怒り狂った様子で叫び続けているのだ。もしもこの世界に精神病院があれば一瞬で入院させられる程に。
「そんなのあたしの勝手でしょうが! 他人のあんたに指図される覚えは無い。あたしの人生なんだから好き勝手にさせてくれ!」
凄まじい言い分であると、明は溜め息が止まらなかった。




