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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
20/40

020  強盗


 今思えば、仕事漬けの日々が影響して四十肩を引き起こしたのではないかと明は自分自身を考察していた。見た目は筋肉質で病気とは無縁のように思えるかもしれないが、実際は怪我や病気を抱えながら数々の死闘を繰り広げてきた。明の仕事を簡潔に言えば悪人を退治する仕事であり、世直しを意味している。そのためには敵を倒す腕力が必要なので毎日の筋力トレーニングを欠かさない。それでいて、プロテインの摂取量も常人の域を遥かに超えていた。そのプロテイン愛は恒例行事にもおよび、毎年のクリスマスには、サンタクロースの格好をした明が貧しい子供達にプロテインを配る習慣が確率していた。しかしそれも異世界に来てしまっては意味が無い。この世界にはイエスの代わりがいるのか知れないが、確実にクリスマスはやってないだろう。ダンディーな顔をしながら以外にも行事ごとが大好きな明は、この世界でも何等かの行事に参加したいと思っていた。せっかく異世界に転移したのだがら少しぐらい遊んでもいいではないかと、子供のような遊び心を持っていた。男は外見は老けるが、中身はまったく老けない。心はいつまでも思春期のままなのだ。


 そして明とエレナは服を購入していた。この世界では金貨で品物を買えるようなので、明は村から頂いた献上品を使って服を買っていた。人助けをすると思いがけない好機に恵まれるのだ。この場合は異世界の通貨を貰った事である。金が無いと生活が出来ないのはどの世界も同じようなので、金に余裕があるのは幸いだった。たくさん金を持っているのもアレだが、かといってお金が全くないのも考え物である。ようは平均収入さえあれば問題は無い。そして購入した服に着替えた明とエレナは店内から出ようとした。


「じいさん。達者でな」


 服屋の主人に別れを告げ出口を開けた瞬間、その声を遮るかのように女性の金切声が響いていた。急に大声を出されて吃驚したのか、エレナはその場をジャンプして僅かに飛びあがっていた。その反面、明は冷静に外を見回しているのだが内心は心臓がバクバクしている。50歳手前のミドルエイジに急な物音は危険信号なのだ。しかし、大の大人が取り乱す訳にもいかないので明は乱れる動悸を押さえながら声の持ち主を捜した。すると前方に指を差しながら慌てふためく女性の姿があったではないか。その指先には広場を駆け抜けている人影があった。


「助けて、強盗よ!」


 目の前の女性はそうだと言うのだった。



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