017 服屋にて
こうして、一通りの会話を済ませたエレナと明は村の服屋に足を運んでいた。エレナは首から小動物の骸骨をぶらさげて、同じく動物の皮で作った山賊の衣装に身を包んでいる。そして明はTシャツ一枚とジーンズを履いていてラフな格好だ。この世界にTシャツもジーンズも存在していないようなので目立つのは目に見えていた。そこで服屋を利用して無難な服に身を包んで、この世界に溶け込もうと考えていた。二人が訪れた服屋にはやたらと耳の長い店主がいた。しかし身長は子供のように小さいので、先程二人が見かけたホビットのような種族なのだろう。この世界の情報をまだ明は知りえていないので、自分が元いた世界に出版されている指輪物語の世界観とあてはめて考えていた。
「いらっしゃい。旅の方達」
すると店主はしわくちゃな口をモゴモゴと動かしながら挨拶をしてきた。しかし明はこの挨拶にムッとした感情を覚えてしまった。明は魔法界に来る前まで、日本というアニメ大国で生活をしていたのだがそのアニメ大国では店員に宗教的接客方式を取り入れている。お客様を神様だと思い込み失礼の無いように全力で奉仕する。なのでお客様に向かって「いらっしゃい」などの言葉は許されないのだ。そんな言葉を日本で使ってしまえばたちまち店長から怒号が飛び出す。「お客様に向かってタメ口を使うとは無い事だ!」と怒り狂うのだ。こんなの他の国では考えられない。たかがバイトにも接客マナーを徹底的に教え込むのだから狂っていると言っても過言では無い。ところが日本に住んでいるとそれを当たり前だと感じるようになるので、目の前の店主の言葉にムッとしてしまう自分がそこに存在していた。あまりにも日本の接客が宗教的過ぎるので、それに慣れてしまった後では店主の言葉は胸に突き刺さってしまうのだ。常に笑顔でお客様に対応して無愛想は許されない。こんな接客方法を取り入れているのは日本だけだ。これは恐らく、他の国よりも宗教要素が少ないからこそ、接客業に宗教要素を取り入れてしまったのだろうと明は何となく考えていた。なぜ接客業なのかは知らないが、そうしないといけない理由はあるのだろうと勝手に予想していた。そこは明の想像に過ぎないので信憑性はまるで無いが、接客業が宗教の片脚を突っ込んでいるのは確実に理由がある筈だ。明は店主の一言だけでここまでの思いを張り巡らせていた。そして店主の言葉を吟味していると、何故自分達が旅をしていると分かったのか疑問に感じた。そこで明はその疑問を解決するために言葉を投げかけていた。
「おいおい、なんで俺達が旅の御一行だと分かったんだ?」
と。




