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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
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015  目標に向かって前進


 女老害との戦いは以外にも明の体力とスタミナを奪っていた。なんせ明は今年で48歳を迎えるTHEミドルエイジだ。四十肩も相まってか想像以上のスタミナ低下が浮き彫りになっていた。こうしてベンチに座っているのは景色を楽しむ訳では無く、むしろ休憩の意味合いに近かった。やはり若い頃のように動くのは不可能である。若い頃はサラサラとした黒の長髪に、すらっとした身長と細い体、色白で張りのある肌を持っていたので周りからは絶世の美青年扱いをされていた。それが今では髪の毛も一本しかなくて、身体は筋肉に覆われて、日焼けした肉体に様変わりしている。これには明確は理由があるのだがその理由を除外しても昔の自分とは遥かに違うという自覚はあった。昔は俊敏に動いていたのだが、今ではもう俊敏に動いているフリしか出来ない。それでも周りの人間よりかは素早い動きをしていられるのだが、やはり昔の自分に比べると衰えを指摘されても言い返せない。昔は強力な魔法をバンバン使って、敵を圧倒するマジシャンとして期待のホープ扱いされていた。ところが今では魔法を忌み嫌い、己の拳だけを信じて戦う格闘家に様変わりだ。そこには明確な理由が存在しているのだが、思い返すだけでも悲しくなるので回想する余裕も無かった。それに過去ばかりを振り返っていても前には進めない。それを知っているので明は前を見ようとしていた。


「こうして座っているだけでも俺は幸せを感じている。今までがあまりにも苦痛の連続だったから平和な日常生活を見ていると心が癒されていくようだ」


 今迄、明は激動の人生を過ごしてきた。師匠と呼んでいた者もいなくなり部下も多く失ってしまった。全ては自分に責任があると自覚していても、周りの人間は明を英雄と呼んで慕っていた。そこに重圧を感じて何度も逃げ出そうとする弱い自分も確かに存在していたのだ。ずっとそういう激動の世界で暮らしていただけあって、この異世界で感じるのほほんとした空気に癒されざる終えない。それだけは確実に言えた。


「どうしたんですか? 感極まっちゃって」


 明の顔を覗きこむようにして、エレナは大きな瞳で此方を見ていた。こうして彼女の顔を見ていると何故だか涙腺が刺激され、明は目を腕で擦りながら立ち上がっていた。


「そうだな。俺達は目的に向かって進まないといけない。さあ服を買いに行こう!」


 こうして、明とエレナは服を買うために村の周りを見回っていた。まだこの村の名前すらわからない状態なので、当然の如く服屋の場所など分からなかった。



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