ちいさな もり と おおきな まもの
「この化け物が!」
男が叫んだ。
大きく振りかぶった直剣は彼の体に真っ直ぐと振り下ろされたがその頑丈な甲殻に阻まれてはじけ飛び、弾かれた直剣は男の手元から離れ遠くの方で地面へと突き刺さる
そして武器がなくなるとともに気力が尽き果てた男はガクリと膝をつく。
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計画通りといったところだ
当初の予定通り小人達を救った
大きなミスといえば逃がすはずの人も全て殺してしまったことだが、すぐに次の人が来るだろう。
緑色の肌の小人達はゴブリンと言うらしい。
この森にあるいくつかの洞窟を転々としながら生活している
昔はもっと数が居て、大きな国を持っていたらしい
だがゴブリン達の王と呼ばれる魔物が死んでしまってから内紛が起き、そのまま人族と戦争になりそれで滅んだそうだ。
ずっとずっと前の話との事だ
この体になってから初めての戦いだった
そしてそれは自分の思っていたよりはるかに有意義だった
並大抵の武器で傷付くことはないということが分かったのである。
そういえば、この世界には『マホウ』と呼ばれるものがあるらしい
どんなものか少し気になる
この体ならば耐えられるのだろうか
それとも耐えられないだろうか
きっとだが、昔居たところでは大きな鉄の塊が唸りを上げて動いていた
あれより弱いのならば大丈夫じゃないだろうか。
大きな鉄の塊に連なる形でふと昔のことを思い出す
段々と薄れてきて思い出せなくなってきたことを
ろくな思いをしていないから構わないが。
なによりひとつ近づいた
今知ってることはこの森と近くに町があることだ
ゴブリン達と接触できたことにより、さらに世界は広まる
もっともっと大きい世界が見えるのだ
まだ見ぬ世界に思いを馳せながら、昔セミだった彼はジジジと鳴いた。