バトルの肉付け5-セリフ-
前回までは、バトル描写における地の文の肉付けの話を行ってきました。
今回は、セリフについて考えてみたいと思います。
セリフ、それは独白か会話文かの違いはあるにせよ、「」の中で完結する文章のまとまりであり、ある時は作中設定を、またある時はキャラクターの感情を、それこそ“感情的に”書きだす、重要な文節です。
ライトノベルでは地の文より会話文の方が多いなんてことはザラにありますね。
セリフには、三種類あります。
まずこれらを解説してみます。
対話……複数の登場人物間の会話。
独白……主人公、あるいはその場面での主役の独り言。
傍白 ……キャラクターが、読者に対して本心などを述べる、メタ的セリフ。
一人称であれば、地の文で感情について触れる場合のほとんどが傍白に含まれるでしょう。
独白は、例えば戦闘中に発する「チッ」などという独り言に該当します。
そして当然、他のキャラクターとの会話文が対話ということになるでしょう。
僕のエッセイは、とにかく戦闘シーンのみに特化した内容にしたいと考えています。
ゆえにセリフに関しても、戦闘シーンのみを念頭に解説していくつもりです。
さて、では戦闘シーンにおけるセリフの役割とは何でしょう。
いや、この場ではこういう問い方は不適切かもしれませんね。
あなたは、戦闘シーンでの会話をどのように構成したいですか。
こう、問うことにします。
戦闘シーンとは、言わずもがな何かしらの対象と戦う場面ですが、その戦いに至るまでの事情というのは千差万別であるはずです。
単なるモンスターと余裕を持って対峙する場面。
強力なライバルとの、手に汗握る一騎打ち。
両者では、天と地ほどの差がありますね。
戦いにおける口数について、僕には持論があります。
それは先ほど問うた内容に関わってくるのですが、戦闘シーンをどの程度リアルにするかによって、口数は変動するだろうということです。
これだけでは分かりにくいと思いますので詳しく説明します。
戦闘シーンのリアルさというのは、ここではどの程度現実に即しているか、であると理解してください。
現実世界で、生身の人間同士が、特別な能力を介さずに戦う。
これを、最もリアルな戦闘シーンと位置付けます。
その対極として、異世界やゲーム世界において、超能力や魔法などの理外の方法によって戦うものを、リアルさが低い戦闘シーンと位置付けます。
語弊があるといけないので申し上げますが、ここで言うリアルさの高低は、便宜上のものであり、優劣についての記述ではありません。
ファンタジー世界にはファンタジー世界のリアルがあるでしょうから、あくまで、僕の定義付けはこの場限りの、解説用の詭弁だと思って笑い飛ばしてください。
さて、口数の話です。
僕は、戦闘シーンを盛り上げるためにセリフは必要だろうと思います。
だらだらと動作や内面のみの説明では、やはり読者は疲れるでしょう。
「」が、文章中にあると、なんだか安心しませんか?
そこがちょうどよいブレイクタイムになること、これがセリフの理想形かと思います。
では、どれくらいセリフを書きましょうか。
ここで、口数というものについて考えます。
イメージをしてみてください。
現実世界で、ハードな運動をした直後のことを。
格闘技経験がある方なら、スパーリングが終わった後のことを。
息も絶え絶えで、言葉なんか億劫で発することもできませんね。
体力を振り絞ると、口数は減るのが当たり前です。
では、ゲームならどうですか。
ゲームに熱中している時、口数、増えませんか?
思わず、何か叫んだりしませんか?
この、リアル世界とゲーム世界の口数。
これをこのまま、参照するというわけです。
リアルな戦闘シーンは、口数を減らす。
セリフはごく少なく、息遣いやうめき声などの記述に留めておく。
ファンタジーでの戦闘シーンは、口数を増やす。
技の説明(そして、技名を叫ぶ!)や、仲間との軽妙な掛け合いをするのもいいかと思います。
そのうえで、
重要な戦闘シーンでは、たっぷりと会話させる。
これ、最重要だと思います。
重要な戦闘シーンに、長すぎるということは無いのです。
あと、キザなセリフについてですが、これはもう思い切りたくさん書くといいと思います。
ここのところ、特にライトノベル界隈ではキザなセリフは大盛況です。
主人公はとにかくカッコつけ、くらいのキャラクターにしてもいいんじゃないでしょうか。
そして技名は叫ぶ!!(大事なことなので二度言いました)