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バトルの肉付け3-アングル-

 アングル、というのは視点のことです。

 今回は、バトルの始点である、視点について考えたいと思います。


 これまで、僕は一人称前提でお話してきました。それは、なろう作家の大半(人気のある人たちの大半か?)が一人称を用いているからです。

 また、三人称を用いている方は、その多くが自分自身のスタイルを既に確立していて、わざわざ教えることもないように思われるからです。


 これはべつに、三人称書いてる方が偉い、というわけではありません。たまたま、そうなっているというだけの話です。


 さて、戦闘シーンを書き始める段において、あなたは頭を悩ませます。

 何から書いたらいいのだろう。


 僕も、よく悩みます。この戦い、どうやって始めるべきか。


 そんな時、イメージしてみてください。

 一人称なら、あなたは主人公としてその場に立っています。

 対峙するのは、あなたの対戦相手。

 

 相手はあなたをどんな目で見ていますか?

 相手は、どんな武器を、どんな風に構えていますか?

 相手は、興奮していますか?それとも冷静?

 自分自身についてはどうですか?

 

 まず、これだけで四行は書けます。戦いが開始される前に、読者にちょっとした情報を与える段階です。これに加え、風景描写などを入れてみるのはどうでしょう。


 鋭く吹きすさぶ風が、頬をなぶり髪を、巻き上げる。

 これから始まる死闘を前に、大気までもが、高揚しているようだ。


 唐突に、突風が起こってしまってもいいではないですか。この、やや強引な描写を戦いの前に入れることで、読者の期待感を高めていきます。

 あるいは、汗をかくなどさせてもいいかもしれませんね。

 

 一人称なら、視点はあなたの目、そのものです。

 五感も、あなたのものです。


 一人称の戦闘シーンは、とにかく五感に訴えかけること。 

 あなたのアングル、あなたの感情、それを、読者に叩きつけることです。


 視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚。

 この五つに関する情報を、それぞれ書いてみてください。


 強敵との戦いを前に、あなたの目は、鼻は、耳は、舌は、皮膚は、どんな状態ですか。

 紙一重で攻撃を回避した時、あなたはどうなっていますか。


 五感を、意識する。

 五感を基に、文章を組み立てていく。

 一人称におけるアングルは、自分自身です。

 思いっきり、主人公に同化しましょう。


 と、一人称のアングルは解説終了。

 ここからは三人称のアングルです。

 僕は基本的には三人称でお話を書くタイプなのでこちらのアングルが好きです。


 三人称の戦闘シーンは、俯瞰です。

 サッカーの試合をスタジアムの高い位置から眺めるように、将棋の盤面を真上から覗きこむように。 


 作者は神の視点を持っています。それこそ作品世界のいかなる出来事をも、作者は見通す目を持っているのです。

 ゆえに戦闘シーンでは、一人称の場合と違い、動きを重視することになるでしょう。


 1対1の戦いの場面ならば、両者がどのように動いたか。

 それに対しどのように返したか、どんなダメージを負い、どんな決着を見るか。


 多数対多数ならば、両陣営がどんな陣形を組み、どんな作戦に基づいて進行しているのか。


 非常に高い視点から、場面全体を眺めることが出来ます。

 視点は時に宇宙へと飛び出すこともあるでしょう。

 この自由度の高さが、三人称の売りと言えます。


 その代わり、不便なことがあります。

 キャラクターの内面に潜りこみにくい、という点です。

 三人称では、そのためにどうしても説明的な描写が増えます。

 せっかくの戦闘シーンが、どうにも盛り上がりに欠けた出来になることが、多々あります。


 うまい作者は、キャラクターの動きの中に感情を盛り込んでしまいます。

 また、形容情報によって感情の断片を散りばめたりもします。


 ここでも例文を使って見てみることにしましょう。

 主人公はまたしても火炎魔法を使う彼に登場してもらいます。今回の設定は、ヒロインを傷つけられた主人公が怒りに任せてゴブリンに攻撃を加える場面。

 三人称なので彼の名前を決めてあげなければいけませんね、一応、ジャックとしておきますか。


 ジャックは、鬼気迫る表情で火炎魔法を詠唱する。

 立て続けに発生した爆炎が、醜悪なる魔物目掛けて襲いかかる。

 ゴブリンを焼き焦がす火炎は、ジャックの怒りそのものであった。

 

 この一連の文章の中で、感情に関連した言葉は三つ、“鬼気迫る表情”、“醜悪”、“怒り”。

 これくらい情報を与えておくと、読者はジャックの内面を読み取ってくれるのではないでしょうか。

 

 三人称は神の視点であり、作者はカメラマンです。

 どのアングルから戦闘シーンを切り取るか、自由度がある分、慣れるまで難しいでしょう。

 しかし裏を返せば、作者の腕の見せ所でもあります。

 

 一人称と三人称。

 どちらがより優れるというのはありませんが、現状、なろう小説は一人称が席巻しています。

 初心者も、一人称で書きたい人が多いようです。


 よって今後も僕は、一人称による戦闘シーンを念頭に解説していきます。

 今回のように、両者で明らかな違いがある場合には、三人称も解説を行うこととします。

 この点は、ご了承ください。


 今回は以上、ご清聴ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ガバタ山様にお聞きして、参考に読みました。 勉強になります。 このような素晴らしい作品をありがとうございます。 続きも後でよみますね。
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