いい戦闘シーンを書くための具体的な方策
前回、いい戦闘シーンとは何か?というお話をしました。
改めて、僕が考えるいい戦闘シーンの定義を書き出しておきましょう。
良い戦闘シーンの条件とは、意外性と必然性の交互作用が繰り返し存在していること。
この定義を基に、もっと掘り下げて語っていきたいと思います。
必然性については前回お話しした通り、主人公サイドの勝利のことです。あるいは主人公サイドに有利な展開、としてもいいかもしれませんね。
意外性については、無数の要素が考えられます。主人公サイドにとって不利な展開は全て意外性と言っても過言ではありません。
強敵との戦闘シーン、ここは作者としては大いに盛り上げたうえで読者にも納得の展開で書き上げたいところです。
その為には必要な布石を打っておく必要があるでしょう。布石、要するに前フリや伏線のことです。
主人公のピンチという“意外性”に対して、予め張っておいた伏線の回収による決着は“必然性”を含んでいます。
一例をあげておくと、
火炎魔法の効かない相手との戦闘、主人公の得意技は火炎魔法。よって戦闘中攻撃が一切効かず不利になる。そこへ水の魔法使いが助っ人参戦、あるいは主人公が密かに水の魔法を習得していた。
このようなパターン等です。
伏線は事前に提示していないと単なる後出しになって面白みに欠けます。
上記の例で言えば、水の魔法使いが戦闘地のすぐ近くにいるという描写を事前に挟んでおくとか、主人公が水の魔法を習得しそうな描写をこっそり入れておくとかする必要があるでしょう。
伏線は明記しておかなくてはなりませんが、あくまで静かに、密かに、バレにくいように張っておきたいものです。その方が後々の衝撃が大きくなってより読者に感動を与えられるでしょう。
先の戦闘まで見据えて伏線を張っておくのは至難の業です。物語全体のプロットを作り込んでおくのは当たり前として、戦闘個々の流れまでも決めておかなくてはなりません。
これは一朝一夕に出来ることではないですし、近道も無さそうなので練習をするしかありません。
ですので、ちょっとした卑怯な手をお教えしておきます。
予め、後から伏線として使えそうなネタを先に張っておくのです。使用予定は無かったとしても、一応、念のために伏線になり得る要素を先に書いておくことで、後々の戦闘シーンに転用できるかもしれません。
具体的には、主人公の成長可能性を示唆しておくとか、武器に複数の特性を用意しておくとか。
これについては作品それぞれにカラーがあるでしょうし、一概には言えませんね。
序盤でたくさん張っておいた伏線の中から使えそうなものを使い、さも初めから伏線張ってましたよ?みたいな顔をしちゃうのは大いにアリでしょう。そして後で、使え無さそうな伏線に関しては編集して消してしまえばいいのです(暴論)!
話題を変えて、戦闘中のセリフに関してここで取り上げておきます。
セリフについては以前に詳細を語りましたが、戦闘シーンを盛り上げる“良い”セリフというのも存在します。良いセリフももちろん、“意外性”と“必然性”から考えることができます。
まず必然性のあるセリフについて。
典型的なものは主人公の決め台詞ですね。毎回戦闘終了後や勝利後、技を放つ際や当てた後など、決まった状況下で同じセリフをあてるとこれが決め台詞となってくるわけです。
決め台詞は戦いの中で“必然性”によって現れてくるものなので読者もそういうつもりで読んでいると思います。
印象深い戦闘シーンにはたいてい印象深いセリフがあるものです。セリフに印象深い、というイメージを与えるには今回の大テーマである“意外性”と“必然性”の交互作用を用いると良いと思います。
意外性のあるセリフとは、例えば危機に陥った際に、
「~~なると思ったか!実は~~」
のように伏線とその解決を披露して敵と読者を驚かせたり、他キャラクターのセリフを借りたりするパターンでしょう。
総じて、セリフにおける“意外性”と“必然性”の交互作用とは、そのキャラがそのセリフを喋るのは一度きりか数回程度でありながら、物語進行上大きな影響を及ぼすか、または危機的状況から一気に逆転へと切り替わるカタルシスを感じさせるためのもの、と定義できると思います。
戦闘中の肝心な転換点では意外性のあるセリフを出し、最後には必然性のあるセリフで締める、というのがベストな形になるでしょう。
というように、いい戦闘シーンについて2回に渡り語ってきました。このテーマならまだまだ書けそうな気はしているのですが、冗長になりそうなのでここで切り上げようと思います。
戦闘シーンの良し悪しは個人の嗜好次第なところがありますので、今回述べた内容が正解ということはありません。
ただ、より良い戦闘シーンを目指す書き手にとって、理解を深める一助になれば幸いです。
さて、恐らく今回の内容で語るべきテーマは語り尽くしたかと思います。
次回でエッセイ全体の総まとめを行い、本作を完結させるつもりです。
皆様、是非とも最後までこのままお付き合いください!