死をどう扱うか
登場人物の死。
これは激しい戦闘シーン、リアルな戦闘シーンを志向する書き手にとって避けては通れない問題です。
といっても、重たい話にするつもりはありません。
今回は、あくまで戦闘シーンにおける死がどのような効果を持つか、考えてみようというお話。
では早速。
物語中における死の効果は、いくつか考えられます。
大まかに分けるならば以下の二つになるでしょうか。
一つは、物語を動かすため。
キャラクターの死によって、ある勢力内に大きな流れが生じたり、ある個人間または集団間に因縁が生じたりします。
これが、物語を深めることになり、ひいては書き手をも導く指標になったりするわけです。
あと一つは、やはり読者の感動を誘うため、でしょうか。
しかしこれは僕に言わせれば癪な手段ですね。
重要なキャラを死なせて感動を喚起させようというのは安易な考えで、もはや手垢のついた方法です。
用いるならば作中の重要な場面で一度、あるいは二度まででしょうね。
僕がこの二つから特に重視するのは最初の項目、物語を動かすため、です。
これについて詳しく見てみたいと思います。
とあるキャラが、作中で死亡します。
すると、当然のようにまず周辺のキャラが悲しむでしょう。
悲しみだけではなく、死んだキャラが役職を持っているなら、その後釜を狙おうとする者も現れるかもしれません。
傷心の旅に出る者や、塞ぎ込んでしまうものも出てくるでしょうか。
殺した相手に敵意を剥き出しにする者たちのドラマもありそうですね。
とにかく、大なり小なり人間関係にさざ波が発生することが予想されます。
これが、死が物語を動かす、第一の効果だと思います。
続いて、死亡したキャラが戦闘要員であった場合、誰に、どのようにやられたかも重要になってきます。
それにより、作中におけるキャラの強さの格付けを行うわけです。
これが、死が物語を動かす、第二の効果。
そして最後に、死という極めて残酷な状態を提示することで、物語を一気に引き締める効果も期待できそうです。
これが、死が物語を動かす、第三の効果。
さて、以上を踏まえた上で僕は、キャラクターの死は物語の起爆剤に出来る、という意見を出したいと思います。
いよいよ、物語が手詰まりでどうにもこうにも先を書けなくなった時、思い切って誰か殺してみるのはどうでしょう?
酷い言い方ですが、これによって案外すんなりと、物語は動きだしてしまうのではないでしょうか。
あるキャラを死なせることによって、その周辺のキャラ、イベントにフォーカスを当てる。
これにより書き手にとっては何を書けばいいか明確になりますし、読者としても物語が大きく動く楽しみがあると思います。
キャラを間引くのは、プロット作りが甘いことから生じる作業なので無いに越したことはありません。
しかし、書き手にとって最悪なことは、中途半端な状態で投げ出してしまうことです。
これを避けるために、無理やり、書きやすい状況に持っていくわけです。力技をもってして。
僕は、昔からバトル過多な物語ばかりを書いてきました。
そんな中で、最初に比べて、物語中で死ぬキャラが減ってきたと実感しています。
多分、作中に余分なものを盛り込まなくなったのでしょう。
経験が、プロット作りの技量を底上げしてくれたのだと思います。
今回は、手詰まりを解消するためにキャラを殺そうなんていう物騒なお話でした。
いかがだったでしょうか?
【後記】
今回は、これまでで最も書き直しが多かった回でした。結果的にいつもに比べて少量の内容になりましたが、これで十分伝えたいことは伝わるかと思います。
僕はどうも、死を扱う話をする時熱くなる癖があるようです。ついつい余計なことを書きたくなっちゃう!