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囚人と厨房係  作者: いとか おる
8/21

王子

 アイツは一歩俺に近付く。


「そっ、それ以上近付くなよ!」


 俺は身構える。更に近付く。後退さりながら、俺は思わず台の上にあった包丁を掴んでいた。そしてそれをアイツの目の前に突き出した。アイツは口を尖らし詰まらなそうな顔をして、それ以上近付く事はしなかった。


 王子の様な顔をして、拗ねた顔とか……何かムカつく!







*****



 ここには、特別な能力を持った者達が収監されているらしいと最近気付いた。その考えに至ったのはコイツの存在が関係する。


 サラサラの金髪に透き通る様な白い肌。通った鼻筋。長い睫毛と抜ける様な秋空の色の瞳。スラッと高い背丈。無駄な脂肪は無く、適度に筋肉も付いている身体。三十代だと言うが十代にしか見えない顔。まるで王子様の様だ。男の俺でも惚れ惚れする。


 そんな奴が、ただ六十人殺しただけで、ここに収監される事は無いだろう。死刑にすれば済む事だし…死刑に出来ない訳でも有るのか…。悶々と悩んでいると


「どうしたの? 調理法が解らないの? 教えて上げようか、…手取り足取り…」


 そう言いながら近付いて来る。


「ちっ、違うよ。考え事してたんだ。近付くなよそれ以上!!」


「冷たいなぁ、何もしないって言ったでしょう? 抱き締めたのは君からだし……」


 ポッと頬を染める。


「抱き締めた訳じゃ無いからっ! こっち来んな!」


 もう、俺の操と命とどっちが先に無くなるかの問題か? …怖えぇぇ…



「君もさ、囚人と同じ物食べてたんでしょ? よくお腹壊さなかったねぇ」


「俺、胃袋丈夫なの!」



「ふぅ~ん……。鉄の胃袋の持ち主か……」


「えっ? 何それ」


「…僕はね、斬られ無い素材なの」


 は? 何言ってんのコイツ!


「何言ってんだよ! 訳解ん無いし!」


「だから、こうして…」


 アイツは刃物を自分の腕に押し当てて今にも引こうとしている。


「ちょっと待て! 何やってんだ!!」


 アイツは、大根でも切るかの様に、スパッと刃物を引いたのだった。










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