首輪
「おい、大丈夫か?」
俺は、倒れたアイツを揺り動かそうとした。
「厨房係。それ以上近付くな。感電するぞ」
えっ? 感電?
首にはまって居る黒いわっかは電気が流れる仕組みに成っているらしい。暴れたり脱走したりすると、看守の持つリモコンのボタンを押すと感電する仕組みだ。
暫くするとアイツが覚醒した。
「お前、大丈夫か?」
「…う‥ん…、僕はどう成ったのかな……」
何が起こったのか、理解できていない様だ。
「えっと、その首輪。電気が流れるんだって」
アイツは、首輪に触れる。
「そうか…、外そうとすると爆発する事と、脱走しても遠隔操作で爆破するとは聞いていたけど…」
「あのさ……」
「ん?」
「……037号‥って?」
「僕の…ここでの呼び名だよ。囚人には名前は無いのさ‥」
「そうなんだ…、俺も似た様なものか。ここでは厨房係としか呼ばれ無いな。名前を呼ばれた事なんて無い」
「同じだね」
「ああ、同じだ」
少しだけ良い雰囲気に成った。多分 気のせいだ。ぜったい気のせいだ!
ちなみに、彼等の名前がこれからも出てくる事は無い。何故なら作者が名前をつけていないからだ。
「厨房係、ほら手紙だぞ」
「有り難うございます」
看守の差し出した白い封筒を受け取ろうとした瞬間、横から素早く奪われた。
「おい看守。この子に話し掛けるな。殺されたいのか」
普段よりも二オクターブ低い声。据わった目。「不機嫌」を顔に張り付けている。
その手には又も火掻き棒。あろう事かそれを看守に向けて投げつけた。
「馬鹿! 何やってんだ! 又、感電させられるだろ!」
ガシャンと鉄格子に当たってカランカランと床に転がる火掻き棒の音を聞きながら、看守に目を向ける。
「ちっ」とアイツは、舌打ちをした。
「037号‥憶えてろよ」
看守は用事があった様で、慌ただしくその場を離れた。俺は、そっと胸を撫で下ろした。
「僕の事、心配してくれたの?」
満面の笑みを浮かべて、アイツが近付いて来る。