二人の料理人
厨房作業を命じられた時は、すぐに担当殺して逃げようと思っていたけど…。好きだな~、この人。超好み。まっ、今は協力しておくか。
「僕、一応プロなの。料理の…ね。だから、ここの手伝いを頼まれて…」
「へぇ~。…あの、どこで働いて居たんですか?」
恐る恐る訊ねる。
「う~んとね。グランドホテルの総支配。」
「えっ…。すっげー。世界中のコックが憧れるグランドホテルの総支配? その歳で? その若さでぇー?」
「フフッ。こう見えても30はとうに越えてるよ」
「ええぇぇーっ。うっそおぉーっ」
二度びっくり!
「だって…。どう見ても未成年にしか見えないし、ついでに言うと美青年だし!」
「そう? 有り難う。…なんか恥ずかしな」
頭を掻きながら、顔を赤らめている。
なんか、この人とは上手くやって行けそう…。と思ってしまった。
「ここの料理、不味すぎるでしょう? 看守達も食べるし。だから、ここの手伝いしろって言われちゃって。…ほら、どうせ暇だしね」
「えっ…。じゃあ俺、クビって事? …そんなぁ… やっと雇って貰えたのに…」
ガックリと肩を落とす。
「でも…、君よくこんな場所で働こうと思ったね。どう見ても偏狭の地だし、僕ならご免だな、こんな所」
「俺…凄く気が短かくて、そのせいで何処の店で働いても半日でクビで。確かにヘリで連れて来られた時には、一目散に逃げ帰りたかったけど…。…やっと見つけた仕事だったのに…」
声が段々と小さく成る。
「ふ~ん。それなりに苦労してるんだ…。大丈夫だよ、クビになんかならないさ。君がコック長なんだから」
「そっ…そうなんだ。へへへっ」
でも、何で囚人を調理場に? ここって武器だらけなのに…。
「さっき、60人‥殺人されたって事でしたけど…。どんな風に? …そのー‥色々あるでしょ? えっと…毒殺とか、爆破とかで…。大量に?」
「直接手を下したりとか…は、無いよね?」