能力者の使命
俺たちに怒鳴られたアイツは厨房の隅っこにしゃがみ込み、床に人差し指を押し付けぐるぐると輪を書き始めた。いじけてる様だ。そんな奴はほっといて、尚も質問を続ける。
「じゃあ俺たちは、その‥闘う為に集められたのかな?」
「そう言う事だな」
「おい、こらっ! 僕を置いて進めるな!」
どうやら復活した様だ。
「千年から二千年に一度だから、それがいつかまでは判らないんだ。でも用心の為に能力者たちは、集められてるって所だな」
「それなら、投獄しなくても良いのでは?」
俺たちの会話に無理矢理割り込んでくる。
「中には空を飛べる者や壁をすり抜けられる者も居る。逃げ出すだろ?」
看守はニヤリと笑った。
壁をすり抜けられる者は、特殊な檻に入れられているらしい。でも俺の『鉄の胃袋』は闘いに何の役に立つのだろう。それに、アイツの『切れない身体』も…戦いには向かないよな…
アイツは、持って来た本を看守に手渡しながら「この続きを頼む」と言って俺に向き直る。
「午後から一緒に香草を採りに行こう?」
と、満面の笑顔で誘って来た。別に暇だったから行くと応えた。
昼食後の食器を片付けた後、俺たちは二階に上がる。そこから渡り廊下を通って階段を降り、裏口の前に立った。見張りに香草を摘みに行くと告げ外に出た。
「いいか! 姿が見えなく成っても、首輪に電気流すなよ!」
と、俺は念を押しスタスタと歩き出した。アイツは大人しく俺の後ろを付いて来るけど、一言も言葉を発さない。俺は居心地が悪くて、立ち止まって振り向いた。すると、突然抱きすくめられてしまった。ぎゅううっと力一杯抱き締められる。余りに、突然過ぎて何が起きたのか解らずに呆けてしまった。
「ちょっ…なっ、何するんだ!」
俺はアイツの胸に手を当て、思い切り突き飛ばした。アイツは腕に力を込めていなかった様で容易く逃げる事が出来た。




