差し入れ
プロローグ載せました。
囚人では無いので、俺にはちゃんとした部屋がある。アイツにも特別に個室が与えられた。
厨房の中央に階段があり、そこから二階に上がると、個室が六つある。その一室を俺が使い、空室を一つ挟んだ向こうがアイツの部屋に成っている。
同じ部屋? とんでもない! 恐ろし過ぎる…
入り口から入ってすぐ右側にトイレとシャワールームが在る。壁に沿って小さなシングルベッドが一つ。窓際に机と椅子。狭いけどベランダもある。荷物何かは殆ど置いてい無い。実に殺風景な部屋だ。
ベランダ越しにアイツが入って来ない様に、間に空室を挟んだ。南向きの部屋だから陽当たりも良い。でもアイツが忍び込もうとしたら、その時は、反対側の北向の陽の当たらない部屋に移動してもらおうと思っている。その事はアイツも承知している。今の所、俺は無事に過ごせている。
この島は無人島なので店などは無い。だから必要な物は看守に頼んで、本土からヘリで運んで貰うのだ。でも特に要る物は無いので、頼む事は無い。アメニティや下着は支給される。しいて言うならレターセットと筆記具ぐらいかな…。
俺がここで働き出して二週間が過ぎた頃、料理の本が大量に差し入れられた事があったな…。見なかったけど…それだけ不味かったと言う事か……
「何か差し入れが必要な物は無いか?」
看守のその問いに、俺は無いと答えた。アイツは本を差し入れてくれと頼んでいる。
「どのような本だ?」
「えっと、確か新刊が出る頃なんだけど。…題名、何だったかな…。ちょっと確認して来るから待ってて!」
と階段に足を掛ける。そして振り向いて
「絶対にコイツと話しちゃダメだよ。君は僕だけのモノなんだから」
そう言い残しアイツは階段を上がって行った。それを見送り看守が話し掛けてくる。
「それにしても厨房係…」
「何ですか?」
「よく無事だったな…」
「どう言う意味ですか…?」
俺は怪訝な顔をした。




