─Someday Surely─失って気づいたもの
短編小説です。
是非最後まで読んでください。
感想、評価待ってます。
『お前なんかどっかいけ。』
いじめ─それは、それは集団で暴行や暴言など1人に向かって行う行為。この一言でいじめは成立する。人が人をいじめる。それはもう人の形をした化け物。だが、日に日にいじめは増加している。
とある公園で子供が怒鳴る。その公園では今、社会問題ともなっているいじめが起きていた。5、6人で1人を囲んで暴力を振るっているというとても悍ましい光景だった。いじめられている子供は砂まみれになり所々擦り傷ができている。今にも力つきそうな声で子供が言う。
「ただ…一緒に遊…びたいだけ…なのに…」
『なにいってんだこいつ?もうこんな奴放っておいて行こうぜ。』
その言葉とともに子供達はサッカーボールを持って去っていく。置き去りにされた子供は一人泣いていた。向こうでは子供達が楽しそうにサッカーをやっていた。だが、残された子供の心には悲しみの渦しかなかった。空を見ると天気は快晴だった。まるで子供を慰めるかのように。しかし、正面に太陽を遮るように影ができる。子供は泣きながら顔を上げるとそこに1人の男子高校生がたっていた。
「お兄ちゃん誰?」
『ん、俺?俺は哀川 龍斗。大丈夫?その怪我見せてご覧。』
そういい子供の怪我の部分に絆創膏を貼った。子供は無邪気な笑顔で龍斗に言った。
「お兄ちゃんありがとう!」
高校生が微笑むと子供を持ち上げた。
『家どこ?送ってくよ。』
「向こうに見えるコンビニの斜め向かい。」
子供は嬉しそうに言った。龍斗は歩き出していった。
『いじめ、怖かったろう。でももう大丈夫。』
龍斗は子供を慰めた。
『俺はいつかいじめが無くなると信じてる。そしていつかきっと誰も争いもなく笑顔で暮らせるような日々が来ると。だから、えっと…』
「松来 鷹広!」
『だから鷹広、絶対に諦めるな、いつかきっと友達ができるさ。』
「でも…」
『大丈夫、お兄ちゃんも最近までずっと一人だったから。でも今では沢山の友達に囲まれている。』
「…うん!僕頑張る。」
『頑張れ。あっそうだこれあげる。』
龍斗はそういい【絆】と書かれたキーホルダーを鷹広にあげた。鷹広が目を輝かせて手に取った。
『ほら、家着いたよ。』
龍斗は鷹広を下ろし手を振りながら去って行く。鷹広も大きく振っていった。
「龍斗お兄ちゃんありがとう!」
龍斗は少し顔を赤くして帰っていった。鷹広は見えなくなるまで手を降り続けた。見えなくなると笑顔で家に入ったお母さんが鷹広の姿を見てびっくりしていた。
『その傷、またいじめられたの?』
「うん…でもっお兄ちゃんが助けてくれた。」
『それは良かったねお礼言ったの?』
「うん!」
これまでの暗かった生活にまた生きる光を取り戻した。人は変われるどんな小さい一言でも。
──また、会えるといいな。
それから鷹広は頑張った龍斗の言葉を信じて。最初は無視されたがやがていじめは減っていった。
しかし、鷹広が中学校になってからの事だった。テレビを見ていた鷹広に良くない知らせが届いた。
『ニュースです。〇〇私立〇〇高等学校の男子高校生 哀川 龍斗くんが行方不明です。捜索は行っていますがすでにもう2週間経っていますが、未だ見つかっていません。警察側によりますと生存は絶望的と言うことです。』
【生存は絶望的】その言葉に鷹広は一気に奈落のそこへと突き落とされた。鷹広はガラスが粉々に割れその破片が心に突き刺さったように崩れ膝をつき嘆いた。
「なんで、なんでよりによって龍斗お兄ちゃんなんだよ…もっとひどい奴沢山いるだろいるだろ。返せよ、返せよぉおおおおお」
【もう一度会いたい】という思いもはかなく散った。鷹広は恨んだ。龍斗を奪ったこの世界、龍斗が目指した世界を否定する者たちを。そして、龍斗の優しささえも、我を忘れて。そこに異変に気づいた母さんが来た。
『どうかしたの?』
「…五月蝿い、五月蝿い」
様子のおかしい鷹広の視線のテレビを見た母親は現場を理解したらしくどっか行ってしまった。
再び鷹広の心は闇に閉ざされ復讐を誓った。しかし、その思いとは裏腹に鷹広へのいじめは日に日に増えて行った。
龍斗が消えてから1年たったある日。
『おい、お前掃除1人でやっとけよ。』
そう言ったクラスメート達は鷹広にほうきや黒板消しを投げつけ去って行った。
鷹広はそれから1人で掃除をこなしていた。担任は何も言わない。なぜなら、今時の親はモンスターペアレントが増え学校に対して気に食わないと直ぐに文句を言う。例えばクラス替えで「この子とは一緒でこの子とは話しせ」親がそういうと、担任はそれに従うしかない。従わなければ訴えられ下手をすれば金を払わされるのだ。それに逆らえない担任は言う事を聞くしか無くなるためだった。クラスメート達もそうだ。「助けたい」と思っても、助ければ自分はクラスの輪から外される。と言う恐怖心から動き出せないのだ。そう、これが今の学校の現状…この世界は結局、金がものを言う腐り切った世界。もうこの世には善は愚か偽善さえもなくなりつつある世界。
──だけど、龍斗お兄ちゃんだけは違った。いじめられていた、僕に暖かい手を差し伸べてくれた唯一の存在。
しかし、この世界は汚れた人間よりも優しい龍斗を奪った。とても後ろ汚い世界。だから、誓った復讐しようと決めた。だけど、鷹広はその優しさをくれた龍斗さえ恨んだ「こんな優しさを僕に与えなければこんな事には」と。
鷹広が掃除を終わらせた頃にはもう外は血のように真っ赤な夕日だった。家に着くともう暗かった。その夜中、鷹広は天井に丸く巻いたコードを吊るし首をかけた。鷹広は自殺を決意したのだ。そして手を話そうとした時。
…鷹広、諦めるな…
と龍斗の言葉が聞こえて来た。慌てて辺りをみまわすが何もない。龍斗に貰ったキーホルダーを見ると優しい光をまとっていた。鷹広は手にとって触れた刹那、閃光が部屋を照らし昔の記憶が蘇る。鷹広は思わず口を開けた。それは鷹広の心を変えた原点の記憶。僕がいじめられ泣いているところに龍斗が現れた。龍斗は何も言わずに絆創膏を貼ってくれた。おまけに家まで送ってくれた。あの背中は暖かかった。
チュンチュンと雀の鳴き声が鷹広の耳に届く。目を少し開けると眩い光が目に射し込んでくる。また、嫌な一日の始まりのはずなのに心は軽かった。龍斗の思いが鷹広の少しの希望を取り戻した。
そうして、暮らす事3年の歳月がたった。龍斗は行方不明のまま、しかし死体も見つかっていない。捜査本部は解散した。鷹広は高校生になっていた。この8年間、龍斗を信じて来て学校生活を送って来たがなに一つ変わらなかった。
──僕の何が足りないんだ。
心の中で叫んだ。鷹広に足りないものそれは他人に優しくする事。すなわち鷹広は今まで、自分が仲良く接せられる事を待っているだけ。それでは、誰も変わらない。しかし、鷹広はその事に気づかなかった。本当は自分が変えなければならないのに。鷹広は道を踏み違ってしまった。自分の悪と周りの人達の悪、この二つの悪によって。
昼休み。
『おい、松雷、飲みもんと飯買って来い。勿論お前のおごりな』1人がそういうと続いて何人かも同じ事を言った。鷹広は財布を見ると1800円しかない。これに使うと自分の分が無くなっしまう。仕方がなかったので鷹広は買いに行った。コンビニに向かう途中ある家から男女三人組が出てきた。
「龍斗兄?」
そこには龍斗であろう後ろ姿が鷹広の瞳に映し出された。鷹広は幻ではないのかと頬つねるが夢では無かった。鷹広は期待に胸を膨らませて三人の方向へ夢中で走った。
後にもう少し…手を前に出した瞬間、消えた。辺りを見回したが三人は見当たらなかった。肩を落として鷹広は去ろうとした時
見慣れない建物が見に入った。一見ただの家のようだが、何か怪しげな雰囲気が漂っていた。中に恐る恐る入って見ると部屋は無く先には地下に向かって伸びる螺旋階段があった。螺旋階段から下を見下ろすと地面が見えなかった。
──なんなんだ?なぜ、こんなところにこんな家が…
鷹広が階段を一段一段降りて行く。
『がたっ』
真後ろで物音がした。鷹広は恐怖に硬直した。ゆっくり後ろを振り向くとそこには
何も無かった。鷹広は胸をなでおろして再び階段を降りて行く。降りるに連れて光は届かなくなり暗闇の中へと入って行った。ここはとても冷たく聞こえるのは自分の足音だけ。まるで自分以外の人間がこの世からいなくなったような感覚に襲われるのと同時に何処か地球ではないところにいる気もした。
ようやくしたまで着くと、一つの扉の前に辿り着いた。鷹広は唾を呑み込み扉を押す。ギギギギィーと金属音が響く渡る。中にはいるとそこには中央に何か光り輝く物があった。その光は優しい光、鷹広は輝きに目を奪われ恐怖さえ忘れていた。
『気に入って貰えました?』
後ろから声が聞こえる。振り向くと黒のオーブに身を包んだ男が立っていた。
『貴方はこの様な優しさを望んでいるでしょう。貴方はこの世界が憎い。違いますか?そんな貴方にこの力を授けましょう。』
男はそう言うと、鷹広の胸に手をあてた。
すると、鷹広は刹那の激痛に襲われた。
『その力は人を触れずに願えば殺せる力です。では検討を祈ります。』
鷹広はその言葉を聞いたと同時に視界がぼやけやがて地面に倒れた。
薄く目を開け瞬きしてからはっきり目を開けると鷹広は地面に倒れていた事に気づき起き上がり記憶を辿った。
──確か、コンビニに行く途中龍斗兄を見かけて追いかけてて、見失うとこの家を見つけてここに辿り着いたんだっけ?そして後ろを振り向くと黒のオーブの男が立ってて胸を手をあてられると激痛が走ったんだよな。それから、はっ!?『人を願えば殺せる力』
鷹広は記憶を明確にし全て思い出した。一旦外に出ると、さほど時間は立っておらずとりあえず学校に戻った。
『遅っせーんだよ。てかお前何も買って来てねーじゃねぇえか。』
鷹広に頼んだ1人が言った。そしてそいつは拳に力を入れ鷹広に振りかぶった。
──死ね。
鷹広は願った。すると、拳が鷹広に当たる前に後ろへと倒れピクリとも動かなくなった。周りの奴らも怖くなったのか逃げて行った。そのあと、救急車で運ばれたがもう時、既に遅く死亡が確認された。死因はわからないままだった。鷹広は警察に質問され何もしていないと答えるとなんも怪しまれず通った。これは全国的にもニュースになったが、鷹広が捕まる事はなかった。鷹広は人を殺した事に罪悪感は全く見えず、反対に殺す事が快感になっていた。今の鷹広は人間ではない。人間の形をした化け物と化していた。
翌日、学校で昨日死んだ奴の仲間と思われる奴らに呼び出された。
『昨日、お前あいつに何した。』
「何って何もしてないけど?」
『とぼけるな!わからず屋は殴られないとわからないみたいだな。』
その言葉を言い終えると共に襲いかかってきた。
「消えろクズが。」
鷹広がそう言うと、周りの奴らはもがきやがて地面に倒れ死んだ。奴らもまた、原因不明のしを遂げた。警察は二つの事件でその場にいた鷹広を怪しいと見た。
『君、ちょと署まで来てもらうよ。』
そう言われてを掴まれると鷹広は警察を睨んでこう言い、去って行った。
「邪魔だ消えろ。」
──全員ぶっ殺す。
鷹広は教室に入ると。
『おい、人殺しくんな。』『きもい、近寄らないで』と俺に吐かれる数々の罵詈雑言。
──くそっ俺は結局いじめられるのかよ。
「死ね。死ね死ね死んでしまえ!」
次々に倒れて行くクラスメート達。鷹広はあざ笑った。
「俺に逆らうからこうなるんだ。」
この事は直ぐに警察にも伝わり鷹広は指名手配犯になった。
道を歩くだけで噂され、鷹広の不満はいっそ募って行った。そんなある日に自衛隊が銃を構え鷹広を囲んだ。
『お前は包囲されている。手を上げおとなしくこちらに来い。抵抗する場合は発砲もままならない。』
自衛隊の1人が言うと鷹広は。無視し歩き出した。自衛隊は一斉に銃を構えた。
「失せろ。」
地面に銃が次々に落ちて行き全員が倒れた。
──結局、こうしても何も変わらない。俺はこの世には受け入れられない様だな。
「この腐りきった世界を終わらせる。」
そう言うと、天に向かって叫んだ。
「この世の生きるもの全て消えて消えろ。」
一瞬でこの世に静けさが舞降りた。そう、人々は鷹広の一言に滅んだのだ。
鷹広は高いオフィスがいくつも並ぶ大都市にいた。車のエンジン音、人の会話、機械が動く音。そのどれもが聞こえて来ない世界。これが鷹広が望んだ世界なのか。鷹広が歩いて行くと海辺に着いた。波の音だけは聞こえて来た。しかし、鳥一匹すら飛んでいない殺風景。
鷹広は1人座っていた。
──これで良かったんだ。俺がどれだけ努力しても変わらない腐った世界も龍斗兄の優しさも無くなって。
本心で言ってるはずなのに静かに頬に一筋の涙か伝う。そして雫となり。海に落ちた。
──海か。海はこの世界の沢山の人々が傷つき涙した事が積み重なってできたのかもな。
海は人類の生まれの起源であり悲しみの受け皿。
──わかったよ龍斗兄。
──やり直したい。出来るならもう一度、初めから。
鷹広は気がついた。悪いのは自分。自分が変えようとせずにして他人に認めてもらう事など誰もできない。お互いが手を延ばし合い認めることで始めて【友達】【恋人】と言う関係が出来る。
『気がついた様ですね。』
後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。
黒いローブの男だった。男はローブを脱いだ。
「あんたは…」
鷹広は言葉を失った。そこにいたのは。
龍斗だった。
『よっ鷹広。大っきくなったな』
鷹広の目から沢山の雫がこぼれ落ちる。そして笑顔で
「龍斗兄!」
『これでわかったろう友達の大切さが。お前が願えば元に戻る。そうしたら、友達作れよ。俺はやる事があるからまたしばらくいなくなるがお前はもうあの時の弱い人間じゃない。お前ならきっといい友を。』
そう言い残し龍斗は何処かに行ってしまった。
──皆、元に戻ってくれ。
鷹広は静かに祈りを捧げた。気がつくと。
空には鳥。道には車。歩道には人が。戻ったのだ。変えられる。海を悲しみの涙の受け皿から喜びの涙の受け皿へ。
鷹広は学校に戻ると皆いた。そして
「皆、ごめん今までの俺は自分がいじめられ友達がいないことを嘆いていた。でもそれは違った、努力もせずにいじめが無くなるわけでも友達が出来るわけでもないんだって。だから、友達になってください。」
鷹広は皆に頭を下げた。そして見上げると。皆が手を差し出してくれた。それは灼熱の太陽よりも暖かく優しい温もりを感じた。
『俺たちもごめん、鷹広の気持ちに気づいてやれなくて。』
鷹広は差し出された手を握った。それから、鷹広は友達を増やしとても楽しい生活を送っている。
鷹広が変われたのは龍斗の一言。人間は何気ない一言で善にも悪にも変われる。途中で間違った道を歩むかもしれない。けど、諦めなければいつかき
っと人は強くなり変われる時がやってくる。いつかきっと。
『おーい鷹広ーこっち』
「ごめん、忘れもした。先行ってて」
そう言って鷹広は公園に入っていく。バックには絆のキーホルダー。鷹広の視線には1人泣いている男の子が。
「どうしたの怪我ない?いじめられたの?でも、もう大丈夫お兄ちゃんがいるから。はいこれあげる」
鷹広は子供に【絆】と書かれたキーホルダーを渡した。
こうしてこの思いは受け継がれて行く。
そして皆幸せになる時がくる
someday surely