婚約破棄を宣言した王太子ですけどループするんです
「マリアンヌ・ダルトワ公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する!」
王立学園の卒業パーティー。
豪華な招待客も並ぶ中、俺は婚約者をビシイと指さしてカッコよく宣言した。
その途端、目の前の情景がぐにゃりと曲がった。
!?
視界が戻った、と思ったらそこは広間の入口だった。
(なんでここに? 俺はマリアンヌのそばまで行って、婚約破棄を宣言したはず……)
エスコートしている男爵令嬢が不安そうにこっちを見る。
「殿下、信じております」
さっきも聞いた言葉。おかしいな、まだ言ってなかったのかな。
何度も練習しすぎて、勘違いしちゃったのかな?
まあいいや、今日こそハッキリみんなの前で宣言するのだ。
マリアンヌの姿を探すと、離れたテーブルで友人と談笑している。
なんかこれ、さっきも確かめたような気がする。デジャブ?
まあ気のせいだろうと、マリアンヌのそばに近寄ると、俺に気づいたのかこっちを向いた。
そしてビシイと指をさし、高らかに言った。
「マリアンヌ・ダルトワ公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する!」
ぐにゃり。
え! また? と思う間もなく、広間の入口に戻っている。
男爵令嬢が不安そうにこっちを見て言う。
「殿下、信じております」
ええええなにこれ! 巻き戻り? 絶対さっき言ったよ俺! 婚約破棄したよ!
婚約破棄すると戻っちゃうの? まじで? そんなわけないよね?
そう思ってもう1度試してみる。
「マリアンヌ・ダルトワ公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する!」
ぐにゃり。
信じられるもんか! もう1度!
「マリアンヌ・ダルトワ公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する!」
誰か嘘だと言って!
「マリアンヌ・ダルトワ公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する!」
今度こそは!
「マリアンヌ・ダルトワ公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する!」
「殿下、信じております」
たぶん十回目の男爵令嬢の言葉を聞いて、俺は頭を抱えた。
まじかよ……。なんで婚約破棄できないんだよ……。
俺はあきらめてマリアンヌと結婚した。




