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舞台裏にいた筈なんどけど  作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
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裏にいたはずなんだけど

現実と虚構が溶け合う、最悪の生贄へようこそ。

耳を刺す蝉時雨と、夜空を揺らす花火の音。夏の風物詩に包まれたその場所は、華やかな舞台などではなく、逃げ場のない恐怖の実験場でした。

あなたが今手 pork にしているのは、ただの物語ではありません。演者と小道具、そして観客の境界線が狂わされていく、ある怪異の記録です。

どうぞ、暗闇の奥深くへお進みください。ただし——次に皮膚の下で鳴き始めるのは、あなたかもしれません。

暗転した舞台裏。耳を覆いたくなる蝉の合唱と、遠くでドーンと響く花火の音が、異様なほど大きく鼓膜を揺らしていた。

出番を待つはずの袖幕はどこにもなく、視界を埋め尽くしているのは鬱蒼とした真夏の生垣だ。

「あれ、僕、舞台裏にいたはずなんだけど……」

呟いた自分の声は、背後から聞こえたべチャリという湿った音に掻き消された。

振り返ると、夕闇の中に白地の浴衣を着た女が立っている。首が奇妙な角度に折れ曲がり、空洞の眼腔からボタボタと赤黒い液体を零しながら、壊れたスピーカーのような大音量で笑っていた。

その笑い声は、なぜか自分の喉の奥から響いていた。

自分の手を見る。皮膚の下を無数の蝉が蠢き、皮膚を突き破って一斉に鳴き始めた。

意識が遠のく中、遠くで司会者の明るい声が聞こえた。

「――それでは皆様、本日のメイン演目『呪いの怪談』をお楽しみください」

自分は最初から演者などではなく、舞台に仕掛けられた小道具に過ぎなかったのだ。

狂気の実験場へ、ようこそ戻られました。

鳴り響いていた蝉時雨も花火も遠のき、残されたのは静寂と、あなたの体温だけです。

ページを閉じたところで、境界線は元には戻りません。物語を読み終えたつもりのあなた自身が、次の「演者」としてその舞台に立っているのですから。

どうぞ、ご無事で。——もし、まだ「あなた」のままでいられるのなら

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