薄氷
掲載日:2026/06/06
気持ちが乱高下する日々
私は薄氷の上を歩く
つま先で氷をなぞる
少しずつ体重をかけ
そうして一歩前に
われれば沈む
氷の下には澄んだ水
底は見えない
周りは霧がかかってみえない
藪を無我夢中でかき分け歩き
気がつけばここにいた
靴はとうに脱ぎ捨てた
裸足で薄い氷の上を歩く
冷たさはもう感じない
踏みだす先を間違えれば
割れて沈む
藪には戻らない
そこには騒音と雑音と雑念
混乱と混沌
怒鳴り声と迷惑な善意
考えの違う夫
話さない子供
そして心を抉る正論
血が沸き立つ怒りに絶望
あぁ 氷が軋む
ひびが入る
水があふれてきた
裸足が水につかる
冷たさが足先から駆け上がる
あぁ 疲れた
楽になりたい
もう 沈んでもいいんじゃないか
このまま身を任せたい
あぁ でも
私が沈めば
あの子は藪から出られようか
藪に残したままで
誰かが出してくれようか
自分で出てこれようか
あぁ
仕方ない
立とうか
冷たい
けれど立てないわけではない
歩けないわけではない
ため息をつく
そして立ち上がる
それからも氷は時折ひび割れる
冷たい水はあふれでる
座り込んではふらふら立つ
膝を抱え込んではよろよろ立つ
繰り返し繰り返し
気がつけば霧が薄くなってきた
向こうになにかが見える
まだ、はっきりは見えないが
後少し、後少し歩けば
新しいなにかが
はっきり見えるかもしれない
お付き合いいただきありがとうございました。




