ストーカーがお友達になったよ
路上で話し続けていた私達であるが、最終的に「お友達からはじめましょう!」で茶を濁して落ち着いた。
そして、私は当初の目的のランチに向かうのだった。
しかし、ハルトは、当然のようについてきた。
「あの、ハルトさん、何処行くんですか?」
違う行き先を答えてくれという気持ちを込めて問う。
「透子は行き先を決めずに歩いてるんですか?」
私の思いとは裏腹に、不思議そうに首を傾げてハルトは質問に質問を返してきた。
「私はご飯食べに行きますけど」
「俺も行きます」
「……そうですか」
私は諦めた。
この押しの強い男に抵抗しても無駄なのだ。
何よりお腹が空いていた。お腹が空いていると特に何もなくてもブルーになるのが私だった。
近くのカフェの席に着くと、二人掛けの席に通される。
店員からは二人組のお客様に見えるのだから当然だ。
ハルト向かい合ってソファーに座る。
長い脚を持て余しながらソファー腰掛けるハルトは、絵になっていた。
そこだけエフェクトでもかかったように輝いて見える。
周りの客たちもチラチラと彼の方をみているのだから、私だけに作用している効果ではないようだった。
はて、なんでこの男は、私のことが好きなんだ?
全くもって人間の好みというのはわからないものだ。
不思議に思いつつも、ハルトから視線を外してメニューを眺める。
「私はハンバーグセットにします、ハルトさんどれにします?」
「じゃあ、ん、これとこれとこれとこれとこれ」
「多くないですか?」
「そうですか?いつもこれくらい食べますけど」
「まあ、食べれるんならいいんですけど」
店員を呼んで注文をする。
二人で頼む量とは思えない注文数に、店員に何度も聞き直された。
私でもそうすると思う。
「あの、ハルトさんはいつから私の事知ってるんですか?」
「五年前くらいに、夜のコンビニでチューハイ買ってるのを見て、それからですかね?こんなかわいい生き物が無警戒にウロウロしてるなんて危ないでしょう?だから守ってあげてたんですよ、優しいでしょう」
「えっ、なんでチューハイ買ってるのをみてそうなるんですか?」
「はあ、世に疲れた感じでふらふらしてて、これから酒におぼれるんだなって感じが襲ってくださいって感じじゃないですか、危ないですよ。見つけたのが、俺じゃなかったどうするんですか。そのまま持ち帰えられてますよ」
「そうはならんでしょ、その頃だと作業着で薄汚れてた感じでしょうし、多分それに萌えるのハルトさんだけですよ」
五年前くらいだと現場作業で、作業着を着て走り回っていた頃だ。
仕事終わりにおでんと酒買って帰って、1日を締めるのが習慣になっていた。
女捨ててると言われてもおかしくない生活をしてた気がするのだが、それに興奮を覚えるタイプの人間もいるらしい。
人間の癖は多種多様である。
「そんな事言ってると何時か本当に襲われますよ」
「誰にですか」
「俺に」
お前かよ。