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第8話 少しだけ変わった(?)日常③

 第8話です。短いかもしれません。


 

「ありがとうございました~」


カラン


 俺は、バイト先のカフェで主に接客業をしていた。

 今日も普段と変わらない………はずだったのだが、


「え~と、ラテのホットの方を一つお願いします」


春川がいる。俺はというと、


「かしこまりました、ラテのホットを一つ、ですね。少々お待ちください」


何も知らない振りをして、普段通り客の注文を聞き取り、優雅に礼をしてその場を去る。


「おい、彼女来たんだから、もう少し堅苦しい雰囲気は取っ払えよ」


「彼女も何も、今はシフト中だろ。俺はそれに徹するだけだ」


「お堅いこって」


「二人とも、俺シフト終わったから、他のヤツ来るまで頼んだぞ~」


俺たちの他にもう一人いた先輩の従業員も、シフトの時間が来たようだ。後三十分で正社員の人が来る。それまで、俺たち二人でしろ、ということらしい。


「わかりました」


「うぃ~す」


 因みに、遥輝はコーヒーを淹れることが出来ないので、俺が抽出を全てやっている。遥輝は基本、レジである。

 俺はペーパーフィルターを使った方法でしか出来ないが、かなりうまくなったと思う。


「お待たせしました、注文を頂いたラテのホットでございます」


「あ、ありがとうございます」


 春川はカップを取り、フゥフゥと少し熱を冷ましてから飲み始めていた。

と、


「あ、美味しい……」


口の端に指先を添え、そう言った。何度きいても、自分の努力が認められた瞬間は嬉しいものである。もう一度、春川の顔を見ると、


「エッ……」


泣いていた。それも、自分が泣いていることに気づいてないような、そんな、泣き方をしていた。


「あれ、何でだろ……?」


本人も、何故泣いたのかをよくわかっていない様子だ。


「拓人く~ん?」


「遥輝、少し黙ってくれ」


少しは空気を読め。遥輝の場合、わざとしている時もあるから、尚、たちが悪い。


「どうしたんだ、春川?」


「いや、本当に何でもないから、ね」


「そういうわけにもいかない」


「……何で?仕事中でしょ?」


 それはまぁ…な


「気にするな、ただの気まぐれだ。それより、どうかしたのか」


「……だから何でもないってば」


「泣いた理由に、心当たりも無いのか?」


「それは……」


「ありそうな口ぶりだな」


 そう促すと、春川は少しだが、話した。


「私の…お母さんの淹れてくれるコーヒーの味にそっくりだったから……かな…?」


「そうなのか?」


「うん……多分、そう。お母さん、昔カフェで働いてたらしくて。私もよくお母さんの美味しいコーヒーを飲んでたの。お母さんのも、貴方のも、どっちもなんか、心が温まるっていうか、そんな感じの味だった」


「それは素直にありがとうと言っておこう。だが、俺の──いや、何でもない」


 俺の淹れているコーヒーがそういうものであるはずがない、そう言おうとした。


「?」


 それを言えば、春川に申し訳ない気がしたからだ。


「父親とはど──」


「あの男の話はしないで」


「すまん」


「あっと……そろそろお母さんも帰ってくるし、帰るよ」


「泣き跡は消していった方がいいぞ。母親に心配かけるから。くれぐれも、心配を母親にかけるなよ」


「………うん」


「気を付けろよ」


 そう言って帰っていった。

 ………

 ……………

 いつの間にか、遥輝も帰ってるし。

 次のシフトの人、来ないし。

 道具とかレジとか全部、そのままだし。


 結局、遥輝は戻ってこず、次のシフトの人は来なかった。後で、ちょっと問いただすか。

 話をしている時、春川はとても落ち着いていたが、母親の話をしている時は嬉しそうだった。俺に母親のことを話ことが、というわけではなく、母親との思い出で嬉しくなったのだろう。

 父親という単語をきいた瞬間、表情が冷たくなったが。何かトラウマ的なものが父親との間であったのか。いつか彼女から話してくれるだろうか。

 それと、話は変わるが、俺は春川に信用されていない。本人は気づいていないが、男子と話しているとき、瞳に宿る感情が拒絶に似た感情を宿している。

 俺は、人一倍そう言う感情には敏感だ。






「………思ったより、いい人だったな」


 そう思った。口調は相変わらず、無愛想だったけれど。表情はそれとは裏腹に、とても穏やかだった。私の父親だった男とは違う、と思った。

 私も、世界中の男性の全員が全員、性欲にまみれているとは言わない。誠実な人もいることも信じている。しかし、それでも男性を許せない。

 彼は最後、別れるときに、


『気を付けろよ』


と、出入り口まできて、見送ってくれた。私の中で、彼に対する評価が少し上がった。


─彼は、少し違うのかもしれない─


少しだけ、今はまだ偽りともいえる関係だけの“彼氏”の彼に期待した。

 けど、まだ“それだけ”だ。信じ、接することが出来る理由には足りない。

 少し、自分の偏見を反省し、その上で彼がどういう人間かを見極める機会として、次の日曜のデートを利用する。


……

…………

 あれ…私って、女子の友達とは遊んだことはあるけど、男子とそれも“彼氏”とデートする用の服なんて分からない……





……

…………

 俺、女子とそれも“彼女”とデートなんてする事はないと思ってたから、当たり前だがろくな服を持っていない。

黒か白くらいしかない。美久と明日ショッピングに行くか。





…………

……………………


「「デートの時の服、どうしよう……」」


(まあ、俺は美久に選んでもらうから、杞憂というヤツだな)




 次はデート回ですが、もう少し長く書けば良かったなーと今更に思いますね〜。なので、そのうち付け足すかもしれません。

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