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第6話 少しだけ変わった(?)日常①

 第6話です!すこし、拓人と美久の家族事情が明らかになります。まあ、まだそんなシリアスでは無いので、大丈夫です。


 


 目を覚ませば、朝の6時を過ぎた辺り。

 淡い青色のカーテンの間から差し込む光が同じ部屋で眠っている美久の顔を照らしている。

 美久と俺は、俺が中学を卒業し、高校を入学すると同時期に、元々隣同士だった二人の部屋の壁を無くし、お互いの様子を見守れるようにしている。

 片親になり、ようやく新しい母親とも打ち解け、普通の家族になれたはずだったところを、交通事故で二人共亡くしてしまった美久の精神面を慮っての行動である。

 朝食は俺が簡単に作る。主に、トーストと、半熟の目玉焼きとあり物で済ませている。


「美久、起きろ。朝だぞ」


「ん…?お兄…ちゃん…?」


まだ寝ぼけているらしい。黒髪の俺とは違う、綺麗な長い茶髪が美久のルームウェアの上にそこかしこでウェーブしている。


「そうだ、お兄ちゃんだ。起きろ」


「はぁ…い」


 寝ぼけ眼のまま、ルームウェアを脱ぎだす美久。

 いくら妹の美久が可愛いと言っても、流石に思春期の女子の着替えを見るわけにはいかない。

 ましてや、既にプロポーションがモデル顔負けの領域を誇る美久の成長が、最近は特に著しい。

 兄として信用してくれているのは嬉しいが、もう少し自分が可愛いという自覚を持って欲しい。

 

「先に下に降りて、朝食作ってるぞ」


「う…ん」


 美久の可愛らしいお腹が見えてきたので、急いで目を逸らし、部屋を出て、階段を降りる。





「じゃあ、また帰る時にな。それと、今日は俺、バイトだから、一人で夕食を食べててくれ。先に寝てて良いぞ」


「はぁ~い」


 美久の中学校まで昨日と同じ様に手を繋いで行き、俺は高校へ行く。

 いつもの分かれ道の場所まで歩いた時、

 

「……あのさ、何でいるの、春川?」


「え……私たち恋人じゃないっけ?それに話があったから」


「恋人になったら、最初から一緒に登校するものなのか?」


「え?」


「え?」


「私も恋人いたこと無いから分かんないんだよね……」


「意外だな」


「意外でも何でもないよ」



……罰ゲームでウソ告白を簡単に引き受きうけたのにか?


俺はその言葉をグッと飲み込んだ。


「それで、話って何?」


「あ、佳歩に聞くの忘れてた。さっきの取り消し、何でもない」

 

 そして、俺たちが学校に着くと、様々な言葉が飛んできた。


「ねぇ、あれ見てよ」


「う~わ、無いわ。ぼっちとかよ」


「ぼっちのくせに春川さんみたいな女子と一緒に登校かよ、ポーカーフェイスで調子に乗った後はカースト上位の女子を侍らせていいご身分だな」


「それな。……まさか、付き合ってたりして」


「無いだろ絶対に」


「もしそうなら、脅されたんだよ、ぼっちの方に」


「そうだな、それくらいしか考えられないわ」


 どうやら、俺が悪い方向に噂が広がり始めてしまったようだ。

 春川は気づいてないが。


「よう、早速彼女と一緒に登校してきたらしいな!」


 教室に入り、自分の席に座るとすぐにうるさい奴が話し掛けてきた。


「ああ、そうなってるらしいな」


「お前、完全に他人事だと思ってるよな」


「だって、何かされてる訳でもないし」


「でも自分のことだろ」


「被害がなければ何も無いのと同じだろ」


「お前は相変わらずだな。まあ良いか。それでさ、この前テレビでやってたさ、あのアメリカの霊媒師の─」


「その話はもう聞いた」





「ねえ、動画撮れた?しっかり撮れてなきゃ、私のした意味が無いから」


「う、うん」


 昨日の昼休みぶりに話した佳歩は何だかびくびくしてるというか、何かに怯えてるみたいだった。


「どうかした?」


「い、いや。─っ!」


ピロンッ


 佳歩のスマホに誰かからメールが来たようだ。

 佳歩はそれを見て、今朝からあまり良くなかった顔色をさらに青ざめさせた。

 

 誰からのメールだろ?


 私は昨日の放課後、クラスで疎まれてるぼっちの桜庭?拓人とかいう男子に王様ゲームの罰ゲームとして告白させられた。

 告白されたことは何度も何度も数え切れないほどあるが、自分から告白したことは無かった。

 結果はまさかのオーケーだった。しかも表情一つ帰変えること無く。それに少し驚いてしまって、話し方が少し変になってしまった。

 といっても、罰ゲームで始まったこの関係に何の思い入れもないため、ある程度付き合った後、普通に分かれようと思う。

 変に私に惚れられたりしても困る。私は、基本的に男子という生き物が嫌いだ。相手のことを好きだ、とか惚れた、とか愛してる、と言っていても、実際は身体ばかりの関係を求めてる奴も多くない。

 私の母親がそうだったからだ。私の父親は、学生時代に私の母親を口説き落としたそうだが、付き合ってる時に、私の母親が私を妊娠したことを知って、ひどく慌てたらしい。

 結局はそれが理由で結婚をしたらしいが、私が二歳の時に蒸発した。つまり、失踪したのだ。しかも、不倫してた相手とだ。聞けば、私の母の他にも、付き合ってた女性がいたらしく、

複数人と付き合ってたようだ。私の母を含め、その全員がその事を知らなかったようだ。

 浮気してたことはばれなかったようだが、そんな中、私の母が妊娠した。

 結婚して暫くは、上手くごまかせていたらしいが、私が二歳の時に、家族3人でいるところを見られ、もめたらしい。

 失踪した日、リビングのテーブルの上には、離婚届と一緒にサインがしてあったそうだ。

 母はその日の内に離婚届を役所に出してきたらしい。

 母も長い間私を一人で育てたが、流石に仕事の日は忙しく、私はよく託児所や保育園に預けられていた。

 休日には、とても楽しく遊んだ記憶がある。私は母が好きだが、失踪した男は絶対に許さない。

 そういうことがあって、私だって好きで付き合ってるんじゃない。今朝だって、別れ話を切り出そうとしたが、佳歩に動画がしっかり撮れたか確認して無かったことを思い出し、後回しにした。

 確認も取れたので、桜庭拓人の席に向かおうとすると、


「ちょ、ちょっと待って!陽菜っ!」


「どうしたの佳歩、そんなに慌てて」


「陽菜。今ぼっちの席に行って何しようとしたの?」


「え、動画も撮れたみたいだし、もう別れないっていう話をしようと思ってた──」 


「やめて!」


「え?何で?」


「それは……いいから今はやめてね!!」


「う、うん」


 すごい必死だ。何でそんなに引き留めるんだろう。


「なあ」


「ん?」


 振り返ると、そこには私の“恋人”の桜庭拓人が立っていた。昨日と今朝はきがつ無かったが、意外に背が高かった。

 私も女子の中では大きい方で、169センチある。が、目の前に立つ桜庭拓人とその友人の寺門遥輝くんが立っていた。遥輝くんの方が大きいが、少ししか変わらない。遥輝くんが以前、クラスで「俺は身長185センチだ!拓人に2センチ差で勝った!」とか騒いでいたから、“恋人”の方は183センチのようだ。


「何?」


「ちょっとね、拓人が春川さんに話があるんだって!」


遥輝くんがそう言うと、後ろで、「ヒッ!」みたいな声が聞こえてきた気がする。それも佳歩の。


「ああ、あのさ──」


 さっきまで別れることを考えていたから、そっちの方向の話かと思ってしまう。


「──今度の日曜、デートしない?」


「……えっ?」


 ……えっ?


心の声と口から発せられた言葉がハモってしまった。

 

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