この世界の創造神様
てってれ~♪
ルチアーノとカエデは、以下のアイテムを手に入れたー!
・マウンテンバイソンの牙×6
・マウンテンバイソンの大皮×3
・マウンテンバイソンの塊肉×3
・マウンテンバイソンの内臓×3
やったね!全部アイテムボックスにしまったよ!
・・・なぁんてね、はぁ。
ぼくは骨だけになったマウンテンバイソンを埋葬するカエデを見ながらため息を吐いた。
この世は弱肉強食というけれど、食べる側の苦労っていうのもあるんだなと思う。
だって解体があんなに・・・うぇえ。
思い出すのはよそう、あまりに血が・・・血で、クラクラするや。
カエデは手に着いた血をタオルで拭くと、倒れた巨木に顔を向けて沈んでいるぼくに向かって声をかけた。
「さて、片付いたところで行くか!あそこの街でこの素材買い取ってもらおうぜ!あ、肉は自分で食うけどな!」
「もう好きにして・・・」
返事する余裕すらないぼくは、機嫌よくずんどこ進んでいくカエデについていくので精一杯だ。
これでまたマウンテンバイソンが襲ってきたら、今度こそトラウマになりそうだよ。
晴れた空のもと、ぼくは下りの道をすいすい進むカエデについて飛ぶ。
登りよりも下りの坂道の方が足をかける危険性が高いと聞いたことがあるけど、カエデはとくに苦もなく余裕そうだ。
きっとぼくが元の身体だったら足をひっかけて転がり落ちていただろう。
うぅ、考えたくもないや。
ぼくは鼻歌交じりにグングン進んでいくカエデへなんとなく質問をした。
「カエデって雑食?」
「なんだいきなり。昨日今日と飯食ってるとこ見ただろ。人族と変わんねえよ」
「うーん、ドラゴンはゴブリンが主食って聞いてたからさ、カエデはどうなんだろうって」
「ああ、それか。レッサーやカラードは確かにゴブリンやオークが主食だな。あいつらは人族や他の魔物は遊び半分に殺すだけで食いはしないしな」
「カラード?」
「最下級ドラゴンをレッサー、下級ドラゴンをレッドドラゴンやブルードラゴンといった色付き、つまりカラードって呼んでるんだ。あいつらは知能も低いし会話もできねえ」
ちょうどいい、とばかりにカエデは片手に魔力を込めてまた映像を浮かび上がらせた。
そこにはドラゴンの等級が分かりやすく図になって表示されていた。
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最上位
最古竜 ティアマット
円帝七竜神
応竜 キリン
聖竜 アルトリウス
九頭竜 ヴァースキ
海竜 リヴァイアサン
悪竜 アジ・ダハーカ
地竜 ケツァルコアトル
天竜 カムイ
上位
覇竜 バハムート『カエデ』
属性竜 エクスマンディア『クラッカー』
狐竜 ナインテイルス『イズミ』
などなど
中位
ヤマタノオロチ
サラマンダー
八大竜王
四海龍王
などなど
下位
レッドドラゴン
ブルードラゴン
グリーンドラゴン
などを総称してカラードと呼ぶ
最下位
レッサードラゴン
ワイバーン
などなど
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「大体のドラゴンはこんなもんだ。上位以下のドラゴンなんかはそれこそ数えきれないくらい種類がいるが、覚えきれねえだろうし割愛だ」
「カエデも上位なんだね・・・あんなに強いんだから当然かぁ」
「位が全てじゃねえけどな。それに前も言ったがカムイはちょっと前に円帝七竜神になったばかり、つまり位は変動するんだ。進化することでな」
「じゃあ、中位が上位になったりするんだね。あ、カムイ様の前の円帝七竜神はどうなったの?」
「引退して悠々自適に暮らしてるよ。ティアマットは不老不死だからずっとその位置にいるが、他の円帝七竜神も二千年に一度くらいのペースで代替わりしてるぜ」
「最古竜ティアマット様・・・どんな方なんだろう?」
「この世界の創造神。おれの母親だ」
「え、ええええええっ!!?」
ぼくは足もないのにその場にすっ転んで奇声をあげてしまった。
そ、創造神様っ!
しかも、それがカエデのお母さんっ!?
「ちょっ、えっ、な、何から聞けばいいのっ!?」
「逆に聞き返してきたなこいつ。まあ母親っていっても義理のだけどな。おれと親友のクラッカー、それとイズミって奴は揃ってティアマットに師事を受けて育った。で、ある程度育つとそれぞれ円帝七竜神の元に預けられたってわけだ。とはいってもおれだけはしばらくティアマットと修行続けてたから、カムイの眷属になったのはそこそこ最近だけどな」
「え、じゃ、じゃあ創造神っていうのは?」
「そのまんまの意味だ。ティアマットが大地を作り、ドラゴンを作り、色んな種族の生き物を作り、魔物を作った。知らなかったのか?この世界の神は全部ドラゴンなんだぜ?」
「そ、それじゃあ、竜以外をあがめてる宗教は・・・」
「んー、全部邪教ってことになるな」
なんてことだ、こんな形で世界の真実を知るなんて。
トカチ村のみんなは火の神カグヅチ様をあがめて育ってきたのに。
カグヅチ様なんていなかったってこと?
「昔はそんな名前の円帝七竜神がいたのかもな。知らんけど」
衝撃だよ。
そして今までの常識全否定だよ。
ああ、ぼくはこれから何を信仰していけばいいんだ。
「カムイでいいだろ、眷属なんだし。あのポンコツドラゴンでも一応加護あるだろ」
「そ、そっか、そうだった。ぼく、もうカムイ様の眷属なんだった」
言われてみればそうだ。
それに、こんな変な形であれこの世に残留出来ているのもカムイ様のおかげだし。
今後は寝る前にカムイ様へお祈りしよう。
「まあおれは無宗教だけどな」
ちょっと眷属ぅーーーっ!!
※※※※※※
キャンプで一晩明かし、次の日の正午くらいになって、ようやく街へと辿り着いた。
トカチ村から出たこと無いぼくはそれこそ新鮮な気持ちだ。
あ、そうそう。
マウンテンバイソンの肉はカエデが一晩で食べつくしたよ。
内臓は今夜食べるんだって。
街の常駐さんに入街料を払ったカエデ(ぼくは無料扱い)は、深呼吸一つして道のど真ん中に立った。
「うっし、ここで少しゆっくりしていくぜ」
「えーっと、ここはクレイヴァール公国のタツミの街だって。大きいところだねぇ」
看板を目にしてぼくが言うと、カエデは頷いて、
「なんだ、まだ北のデュラン王国じゃねぇのか。まあいいや、とりあえず宿と買い取り屋、後は冒険者ギルドだな」
「え、宿と買い取り屋はわかるけど、どうして冒険者ギルド?」
「おれ様にふさわしいクエストがあるかもしれねえだろ?スターベヒーモスの群れ討伐とか、アルテマサイコホッパーの駆除とかな!」
知らない知らない。そんな悪夢のような名前のモンスター知らない。
それにFランクで受注できるクエストのランクはG~Eだからね。
そう言うとカエデはがっくりとして、
「なんだよ、こまいクエストこなしてランク上げるしかねえのか。面倒くせえなあ」
「カエデからしたらそうかもしれないけど我慢してよ。それに、いきなりそんな怖い魔物の討伐なんて受けたらぼくの身が持たないよ」
「もう死んでるくせに」
「死んでても怖いものは怖いのっ!」
そこははっきりと線引きをするように言う。
たとえぼくが幽霊状態で物理的に誰からも見えない・触れないとしてもだよ。
目の前にモンスターが現れたらもう・・・怖いでしょ!
足が震えて動かなくなっちゃうよ。
足、無いけど。
カエデは仕方なさそうに街の人へ道を聞きながら宿を探し、その一室を確保。
続いて買い取り屋でマウンテンバイソンの毛皮や牙を売る。
いくばくかの金貨、銀貨を得たぼくらは最後に冒険者ギルドへと向かった。
怖い魔物と戦うクエストは拒否したいけど、クエストを受注するのは賛成だ。
あまり冒険者として活動しないとギルドカードの有効期限が切れちゃうからね。
そんな風に思って冒険者ギルドへ赴いてギルドカードを提出して、クエストを受けようとしたところ、クエスト職員からまさかの回答が。
「・・・ルチアーノさん、死亡扱いになっていますね」
「「は??」」
えっと、死亡?
え、つまり、アイン達が、ぼくがレッサードラゴンに殺されたって言ったから。
ギルド的にはぼくは死んだものとして登録したってこと?
冒険者の情報は全世界のギルドで共通したデータベースを持ってるから情報が伝わってるのも早くて。
じゃあ、今目の前のギルド職員からしたら、どうして死んだ人間のギルドカードを持ってるのって疑ってる?
カエデはたらりと冷や汗を垂らすと、高速で頭を回転させて言い訳を作った。
「いやー、なんか道中でこのカード拾ったんで届けに来たんだよ。で、ついでにおれも冒険者ギルドに登録しようかなって思って。ははは」
く、苦しい!
苦しいけど、それしかない!
無理にぼくのギルドカードを押し通そうとしても、鑑定したらバレる!
だって、カムイ様が鑑定したとき、ぼくとカエデは別人として鑑定してたもん!
いま鑑定されたらギルドカードの持ち主とカエデの関係を話さなきゃいけない・・・!
そんなの、誰が信じてくれるんだ!
訝し気な目でギルドカードを回収した職員は、念のためと言って鑑定の魔法道具を使ってカエデを鑑定した。
すると―――。
「名前、カエデ。職業、武道探究者。ステータス・・・オール9999!?」
眉間に皺を寄せまくってあんぐりと口を開ける職員さん。
お、オール9999って、ギルドの鑑定道具じゃ測れない能力値ってこと!?
カエデは「あー地上の鑑定じゃそんなもんかー」なんて言ってるし。
そ、創造神様と修行したって言ってたのは本当だったのか。
「スキル、解体、錬気、無手極、ドラゴンブレス(極)。解体以外は知らないスキルですが、これは・・・?」
「錬気は全身のオーラを膨れ上がらせる奥義で、オーラの物質化も出来るぞ。無手極は武器を超える手腕を有するという称号だな。ドラゴンブレスはそのままの意味だぜ」
「は、はぁ」
待って待って、そういうのって固有スキルっていうんじゃないの?
魔王討伐する勇者が持つようなスキルじゃないの?
逆に魔法系のスキルとか一切無いんだね。
「魔法なぁ。あれ頭使うし早口必要だしで嫌いなんだよな。ブレス吐いた方が早いし強いだろ?魔法なんてのはクラッカーにやらせときゃいいんだよ」
また出たクラッカーさん!
え、ということはクラッカーさんは魔法を極めてるってこと?
いいなぁ、ぼくに教えてくれないかなぁ。
などとこそこそカエデとやり取りしている間も、鑑定道具の故障を疑って何度もカエデを鑑定する職員さん。
けれど何度やってもステータスは9999。
今度はギルド職員さんが冷や汗ダラダラ垂らす番だ。
そして複数人でコソコソとやり取りした結果、一人の職員がカエデを呼び、
「すみません、ギルドマスターと面談していただいてよろしいですか?」
そう言って、冒険者ギルドの2階を指差した。
あぁ、まぁ、そうなるよねぇ。
ぼくとカエデは職員の女性に案内されるままギルドマスターの部屋へと続く。
さて、何て説明すればいいんだろう?
カムイ様「ポンコツじゃありませんっ!」