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お題シリーズ4

背中を押す理由 言葉

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/07/20



 僕は臆病者だ。


 弱いスライムですら倒せない。


 この間、村の中に弱いスライムが入って来た事があったんだけど、びびって逃げてしまった。


 他の子供達は、果敢に棒きれ一本で倒してたのに。


 なんて意気地なしなんだろう。


 他の子供達に馬鹿にされて、笑われて悔しい。


 けれど、それでも勇気が出ないんだ。


 魔物が怖いんだ。


 どんなに弱くても。怖くてたまらないんだ。


 小さい時、魔物に襲われて以来、その恐怖が頭にこびりついて離れないんだよ。


 あの時は、自警団の人達に助けてもらって事なきを得たけど。

 

 忘れられない出来事だった。


 一体どうやったら、臆病者でなくなるんだろう。


 皆に馬鹿にされるのは嫌だ。


 毎日、木の棒で素振りをしていても、走り込みをしていても。


 どうしても勇気が芽生えてこない。







 そんな事で悩んでいたら、母は「変わらないでいいじゃない」と言ってきた。


「危ない目に合わなければ死ぬ危険性もぐっと減るんだから。親より先に死ぬ子供なんていない方がいいのよ」


 母は優しい。


 僕が臆病者でも受け入れてくれる。


 だからその優しさに甘えたくなるけど、それではだめだと思う。


 世界では日に日に魔物が狂暴化していっている。


 この小さい村だって、いつか襲われてしまうかもしれない。


 だから、勇気をだして戦えるようにならないと。


 昔、魔物と戦って、その時に母と出会った父みたいに。


 母から聞いた思い出の中の父は、どれもかっこよくて強いものばかり。


 父みたいになりたいな。


 その父は兵士になって、国の中央に行き、お城のえらいところで働いている。


 姿はもう何年も見ていないけれど、お金が届くから、生きていると思う。


 いま、顔をあわせたら、僕になんていうだろうか。


 幻滅されるに決まってる。


 どうしようもない息子だって、思われるに違いない。






 数か月後、まずい事が起きた。


 狂暴化したモンスター達が群れをつくって村をおそってきたのだ。


 村人たちは逃げ惑う。


 自警団の者達が戦うけれど、明らかに数が違い過ぎた。


「きゃあああ! 誰か助けて!」

「手当をしてくれ、腕が!」

「血が止まらないわ!」


 村の中は混乱して、モンスター達の咆哮や破壊音が絶えず響いていた。


 僕は母に手をひかれて、そんな村の中を走っていくところだった。


 けれど。


「きゃあああ!」


 横からとびだしてきた、ヒョウのような姿のモンスターが母におおいかぶさった。


 するどい爪をその体につきたてる。


「いたっ」

「母さん!」


 僕は震える足でその場から見ている事しかできない。


 このままでいいのか。


 なんのために、日ごろから体を鍛えてきているのか。


 自分にそう言うけれど、勇気が湧いてこない。


「母さんを置いて逃げなさい」

「でもっ」


 僕は、なんて意気地なしなんだろう。


 大切な家族を守る事ができないなんて。


 その時、ここで聞こえるはずのない父の声がした。


『男にうまれたのなら、大切な人の一人や二人、守れなくてどうする! ここで立ち上がらなければずっと後悔するぞ! おまえには強い男になってほしい!』


 僕は目をつむって、その魔物に殴りかかった。


「うわああああ、母さんから離れろっ!」


 魔物は強い。


 だから子供である僕が殴ったところで、離れるわけがなかった。


 何もできずに、そのまま母は殺されていただろう。


 しかし。


 この場には父がいた。


「よくやった、それでこそ俺の息子だ」


 父がその魔物をやっつけた。


 母を助け起こして、逃げるように言ってくる。


「どうして、父さんがここに?」

「この村の近くで、魔物の動きが活発になったと聞いて、調査隊が組まれることになったから、その隊に志願したんだ」


 父は、「ここは俺にまかせろ」と言って頼もしい背中を見せてくる。


 僕達は父に任せて、その場から離れた。


 




 逃げていくしかできないけれど。


 それは今だけだ。


 きっといつか父の様になってみせる。


 強くなってみせる。


 なれるはずだ。


 だって。


 臆病者を卒業できた。


 自身がわいてきていた。


 背中を押した父の言葉を思い出しながら、今は母にひかれているこの手で、次は母をひいてあげられるようになれればいいなと思った。



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