4年というのはすぐに経つ
Side ダナの森の魔女
子供の成長というのが早いというのは分かっていた。だが、時間が来てしまうと寂しいものだ。そう思いながら、今日は鳥を仕留めたと嬉しそうに血抜きしているツェルを見た。
ツェルも12歳、約束の4年後が来た。
いい加減離さないと、私がツェルを離せなくなる。そんなことを思っていた。昔で言えば小学生から中学生になるぐらい。身長も伸びてきたが、顔はまだ可愛らしい。髪の毛は私が綺麗に切れないので結局伸ばしっぱなしで、ツェルはその髪を編んでいる。服は男物を着るようになったが。
そろそろツェルは一人で歩く準備をさせないと。そう思いながら、手紙をしたためた。
『約束の4年だ。』
その手紙、その文だけで友は理解できるだろう。魔女と人間は生きる時が違う。早く手を離して、そして元通りに戻ればいい。90年近くは独りだったのだから。
意外にも手紙の返信が来たのは3日後だった。いつもよりも遅いので驚いたが、手紙と同時にエイダは私の住まいに来た。そして、優雅に紅茶を飲みながらツェルと私と3人で話をすることとなった。
「……と、言うわけで商人に話は付けたわ。私の伝手ですので、働き先はこの森の反対側の街になりますわ。」
「ま、待ってよ!!なんで勝手に決めるの!僕まだ、ダナといたい!」
叫ぶような言葉と泣きそうな顔。母に捨てられた動物と同じ目をしている。だが、これはしっかりと手を離さないと、そう心で思い続けた。
「ツェル。君はもっと外の世界を見るべきだ。この森では狭い。」
「ダナは僕に出て行って欲しいの!?」
その言葉に私は答えることは出来なかった。黙り込んだ私の様子にツェルは何も言わずに家を飛び出した。その目には涙が浮かんでいた。
「ツェル!?」
追いかけようと立ち上がった私の腕をエイダが掴んだ。反対の手では優雅に紅茶を飲んでいる。カップをそっと置いてから彼女は立ち上がった。
「ふふふ、悪人は私のお仕事ですわ。ダナ、あの子にごちそうでも作ってなさい?連れて帰ってきますから。」
そう言い残したエイダはゆっくりとツェルが歩いて行った方に歩み出した。精霊たちはツェルの居場所を教えてくれているようだった。