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ラプンツェルはむしっても、むしっても生えてくる。だから食べてもらって構わなかったのだが……。  作者: まるちーるだ


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お客様とクレーマーは別です

Side ツェル


ランベルトに毎朝、剣術の相手をしてもらう。ここに来てから学んだことは多岐にわたる。その中でも一番役に立つのは剣術や体術など、身を守る手段を得たことだ。こういったことはダナから一度も教えてもらったことがない。ダナは果たして相手から暴行を受けた時、身を守る手段があるのか?と寒気がしたのは言うまでもない。だから、彼女を守れるように強くなりたかった。


「ツェル、脇ががら空きだぞ!?」


ランベルトが叫んだ瞬間、木刀はわき腹に叩き込まれた。防具をしているとはいえ、なかなかに痛い。


「今日はここまでかな?」


「あ、ありがとございましった。」


息切れしながらもお礼を言う。元々、ランベルトは騎士団に居たらしく、なかなか身体は動く。疲れたーと思いながら、鍛錬場代わりにしている庭で寝転んだ。ランベルトは本当に父親のように褒め、慈しんでくれている。父親とはこんな感じなんだろうな、と漠然と思う。


逆に、ダナには何故か母親とは思えない。思いたくないのだと、最近気づいた。そんなことを思い出しながら、昔暮らしたダナの森を思い浮かべた。彼女に週に一回必ず手紙を送るが、彼女からの返信は突拍子もないことだったりするので、それを笑いながら読む。


ふと気づいた。何故か、今日見える精霊が多い。何かを伝えようと必死で身振り手振りをしているが、その意図が分からない。


「ランベルト様!!ツェル様!!大変でございますっ!!店舗に皇太子殿下がいらしておりまして、すぐに店を開けるように言っておられます!!」


「は?」


「皇太子殿下?」


ランベルトと僕はほぼ同時に間抜けな顔になっていた。それを見た従業員はあわあわとしながら「そんな親子で同じ顔してないですぐに用意してくださいっ!!」と叫んだ。二人で慌てるように着替えたが、ランベルトに店舗に出ないでくれと約束させられた。なんでも皇太子殿下に殴られて失明した子息が居るらしいので、念のためらしい。


「まあ、一応、2階で見てるな?」


「ああ、何事もないといいんだけどね。」


小さく呟いた言葉に不安を覚えながら、ジッと上からのぞいていた。乱雑に入って来たその皇太子は横暴に宝石を見せろ、だとか、いろいろと言っていた。そんな様子を見ていれば、皇太子と目が合った。咄嗟に顔を背けたが、興味を持ったのか、いきなり大声でこう言った。


「あの美しい()は誰だ?」


指さされた先は間違いなく僕。そして、その言葉に笑ったのはランベルトだった。


「ご冗談を皇太子殿下。あれは我が息子(・・)のツェルです。」


その言葉と手を招く様子にゆっくりと階段を降りて、そして皇太子殿下の前に立った。


「初めまして、ツェル・ロジェと申します。」


「何故、男の格好をしている。」


「は?」


思わず、商会の誰もが首を傾げた。男の格好と言っても、僕は男なわけだが、反対に皇太子殿下の付き人たちは不思議そうな顔をしていた。


「ち、父上、僕、女性と間違えられていますか、ね?」


恐る恐る聞けば、ランベルトは小さく頷いた。しかし、皇太子はあきらめずに、僕の側に来た。背は頭一つ分違うのではないかと思うほど。体格はいい方なのだろう。だが、その目つきは気に入らなかった。


「ツェルと言うのか、美しいな。気に入った。お前、少し相手をしろ。」


「相手、でしょうか?剣でしょうか?」


「そんなわけなかろう?商会のことと普通に考えれば……。」


その視線と言葉に含まれる妙な雰囲気に、思わず後退りしそうになった。


「お帰り下さい。」


ぴしゃりと言い切ったのはランベルトだった。


「何を勘違いされているのでしょうか?横暴な客は客ではありません。それが皇太子殿下であってもです。それとも、帝国からロジェ商会を撤退させましょうか?我々は一向に構いません。なにせ我が商会はオーウェン王国の王室御用達。国内ではまだ人が足りていない状況です。なので従業員すべて連れて国に帰ればいいのです。

この意味が、お分かりですか?」


ランベルトの言葉に誰よりも反応したのは付き人たちで、すぐにランベルトに謝罪の言葉を掛けてから、皇太子を引きずり出した。


「だ、大丈夫なのか?皇太子に喧嘩売って……。」


不安になりつつ聞いてみれば、ランベルトは笑った。


「そんな柔なロジェ商会じゃないからな。もしもの時は従業員(家族)ひっ連れて国外退去してやるよ!みんなが来てくれるならな!」


ランベルトの言葉に従業員たちから「お供しますよ!」だとか「連れてってくださいね!」とか「置いて行かれても追いかけますからね!」と様々な返事が返る。


この2年で家族が増えたな、なんて小さく笑うのだった。



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