プロローグ
「杉浦 終夜」これは僕が前の世界にいたときの名前だ。
ある日交通事故に巻き込まれ杉浦終夜は死んだ。だが、それで僕は終わらなかった。
目が覚めると僕は「リオン」という名前の全く違う世界の人間になっていた。いわゆる異世界転生というものである。
杉浦終夜だった頃の僕は両親はすでにおらず、内向的な性格のため友達もおらず何か秀でていたものもなかった。そのためこの世に未練など何一つなかった。
だからこの状況はとてもうれしかった。異世界転生といえばチート能力をてにいれてモテモテになるというのがテンプレである。僕もこのような小説をよくよんでいた。きっと前の世界で無縁だった幸せな毎日が送れると信じていた。
だが、現実は違った。この世界には魔法があるのだが「リオン」にはその才能は全くなかった。最初は後になってチート能力に目覚めるだろうと思っていたが何カ月たってもその様子は無かった。
しかもこの世界の人間は今「竜人」と呼ばれている種族と戦争中だった。「リオン」が住んでいる場所は城下町からかなり離れた場所にある田舎だったので今はその影響を受けていないが、いつ竜人に村が襲われてもおかしくなかった。
こんな某異世界系小説とは無縁な毎日を僕は過ごしている。いや、一つだけ、一つだけしあわせなことがあった……